劇場公開日 2025年1月17日

「小市民ではないソ・シミン!」勇敢な市民 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0小市民ではないソ・シミン!

2025年1月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

単純

予告は目にしなかったように思いますが、他作品を観た後に時間があり、最終上映回に間に合ったので、公開2日目に鑑賞してきました。この日の6本目の鑑賞ではありましたが、睡魔に襲われることなく、最後まで楽しめました。

ストーリーは、いじめ・校内暴力なしを掲げる高校に赴任してきた非正規雇用の教師ソ・シミンが、いじめと暴力によって学校を陰で支配する生徒ハン・スガンの存在と、スガンの標的となっている生徒の苦しみを知り、正規教員となるために波風を立てないようにと思いつつも、持ち前の正義感から見過ごすことができず、猫の仮面で正体を隠し、スガンの悪行を阻止するために戦いを挑むというもの。

冒頭からテンポがよく、コメディ要素をしっかり取り入れ、ストーリーも非常にわかりやすくておもしろかったです。そこに、シミンの背景、父との絆、ジニョンと祖母の関係、正規教員への道などの要素を盛り込んで、物語に奥行きを与えているのもいいです。

単純なコメディに終始することなく、熱くこみあげるものを感じるシーンも多く、思わず目が潤みます。中でも、シミンが自分に言い聞かせる、「何もしなければ何も起こらない」という言葉のダブルミーニングが秀逸です。前半は、正規教員になるために「揉め事には首を突っ込まずに見て見ぬふりをしよう」とするのに対して、後半は「行動を起こさなければ現状は変えられない」と、真逆の意味で用いられます。この対比が実に鮮やかです。

そして、なんといってもシミンのキャラが抜群にいいです。おもしろさ、強さ、粘り強さ、優しさ、正義感を兼ね備え、そこに加えて美しすぎない顔立ちが絶妙なバランスでいい味を出しています。さらには、小市民(ソシミン)という名前も最高です。

そんなシミンがスガンに挑むクライマックスも見応えがあります。スガンに抑圧され続けてきた生徒たちが声を上げる姿やシミンの渾身のファイトに思わず目頭が熱くなります。ラストは本当にスッキリしましたが、欲を言えば、スガンの取り巻きやバカ親たちもまとめて吊し上げてほしかったです。

主演はシン・ヘソンで、振り幅の大きい演技でシミンを好演しています。脇を固めるのは、イ・ジュニョン、パク・ジョンウ、パク・ヒョックォン、チャ・チョンファら。中でも、イ・ジュニヨンの憎々しい演技が作品を盛り立てます。

おじゃる