嬉々な生活

劇場公開日:2025年8月29日

解説・あらすじ

母親が亡くなり、父親が動けなくなったことから、家族の面倒を見ることになった女子中学生の日常を描いた作品。若手映像クリエイターの登竜門として知られるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024の国際コンペティション長編部門で、審査員特別賞およびSKIPシティアワードを受賞した。

大阪の団地に暮らす中学生・嬉々は、最愛の妻を失ったショックで万年床から出られなくなった父・賢介と、弟妹のケアを一身に背負っている。朝、家を出て親友の美優と待ち合わせをし、学校へ向かうかと思いきや、嬉々は商店街でバイト求人の張り紙を探し回っている。経済的に困窮して焦る嬉々は、元担任教師・高妻のある行動を目撃し、他言しないことを条件にお金を貸してもらえるよう交渉する。高妻の協力で一家の生活が変わる兆しも見え始めるが、父親の状態はさらに悪化していく。

磯部鉄平監督の「凪の憂鬱」や「夜のまにまに」でプロデューサーを務めた谷口慈彦監督による、これが劇場デビュー作となるオリジナルストーリー。一家を背負う主人公・嬉々のたくましさと、彼女を取り巻く不器用な大人たちが織りなす人間模様を描く。

2024年製作/91分/G/日本
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
劇場公開日:2025年8月29日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9

(C)belly roll film

映画レビュー

4.0 逞しさと瑞々しさと躍動と

2025年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

冒頭、この映画は家族の「過去と現在」を柔らかなまなざしで提示する。母が存命で、父が不調に見舞われる前の、笑顔の花が咲きほこっていたあの頃。今ではあらゆる状況が変わり、青春真っ只中の主人公・嬉々(きき)は幼い兄弟のために自らを抑制し、必死に日々を走り続けることを余儀なくされている。この点、ケン・ローチや是枝裕和の作品が脳裏に浮かぶほどの切実さが滲む。しかしだからと言って心が苦しくなる状況にとどまることはなく、本作は独特のユーモアを片時も忘れず、人々が繋がり、支え合う姿を豊かに描き出そうとする。と同時に、本作は子供から大人への階段を昇る嬉々の人間観察でもあるのだろう。心に何らかの傷や痛みを深く抱え込んだ大人たち。彼らへの嬉々の目線が批判でも同情でもなく、真摯で真っ直ぐなものへと変わっていく過程に感動を覚える。そして不意に舞い降りるラストシーン。あの宝物と呼ぶべき一瞬が今なお心に響き続けている。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
牛津厚信

4.0 必見のラスト、監督の力量に感服。

2025年9月10日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

癒される

映画にとってラストシーンは1番と言えるぐらい重要だ。
数々の素晴らしいラストシーンの映画に出会ってきたが、本作のラストも胸が高揚し目頭が自然と熱くなる必見の秀抜さだ。
インディペンデントな作品に有りがちな致し方ない薄さを感じさせない重厚な作り。
壊れたり、壊れかけたり、壊れないよう踏み止まったりの様々な登場人物たちと、わきを固めるキャラまでも人間が丁寧に描かれており物語がリアルに息づく。
細かい映画テクニックもさり気なく散りばめられていて、監督の力量の確かさに感服し、今後に期待が膨らんでしまう。
それ故に一人でも多くの人に見てもらいたいし、埋もらせてはいけない傑作だ。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
ケージ

5.0 晴れやか感動映画ではない。

2025年9月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

2020年代ベスト級の傑作。ルックスに油断するなかれ。ヤングケアラーを題材にした社会派感動映画ではない。
これは陽光降り注ぐ晴れやかな団地(家賃は滞納!)に棲む少女・嬉々と、その家族の生存をかけたサバイバルでありスリラーでありホラーでもある。
ペラい綺麗事や安い善意が易々と否定される様は、まるで我々の現実。
物語としてのご都合主義を丁寧に排除して、寓話的な着地点を失ったあとに訪れるラストはまさに、映画だからこそ成し得た風景。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
ほっそん

3.5 嬉々ちゃんの淡々とした演技に胸キュンキュン💕

2025年9月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

幸せ

癒される

母を亡くした父と3人の子供たち。生きる気力すら無くした父に代わって中学生の長女、嬉々ちゃんがなんとか一家の暮らしを支えようとする…

設定だけ書くと物凄く悲惨で陰々滅々な話だと感じますね。
ところが主役、嬉々ちゃんが柔らかな現代大阪弁で淡々と受流す日常は妙にカラッとして「悲惨」という言葉を寄せつけません。
一家が暮らす団地の隣人、教師が差出す小さな(というよりは与える側が犠牲にならない)親切は悪びれることも自己卑下することもなく「ありがと」の一言で受取る。
けれど友人の行き過ぎた援助はきっぱり断る。
絶妙な人物造形です。

そして嬉々ちゃんを取巻く人々も夫々の距離感を保ちながら差し出せる範囲で親切を分け与える。
中には自らの情けなさ、鬱憤を弱い者いじめで晴らそうとする、どついたろかという人物も登場しますが、それでも「親切」という言葉が本作のキーワードだと感じました。
そしてラストの爽快感といったら!!

不思議と心が暖かくなる映画でした。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
さとうきび