「自分の中の”好き”こそが特別」映画 先輩はおとこのこ あめのち晴れ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自分の中の”好き”こそが特別

2025年2月15日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

原作未読ですが、テレビアニメを楽しく視聴していたので、続きが気になって公開2日目に鑑賞してきました。自分の中で勝手にマイナー作品と思っていたのですが、劇場はかなりの客入りでびっくりしました。年齢層も幅広く、多くの人から愛されている作品なのだと実感しました。

ストーリーは、かわいいものが大好きで、自分の好きを貫いて女子の姿で学校に通う高校生・花岡まこと、そんなまことに恋をした後輩・蒼井咲、まことの幼なじみで一番の理解者でもある竜二の3人が、楽しく学校生活を送って一年が過ぎた春休み、咲は離れて暮らす父と母のそれぞれから一緒に暮らすことを提案され、まことは咲に惹かれる気持ちに戸惑い、卒業後の進路が定まらず、それぞれが悩みと向き合う中で大切な決断をしていく姿を描くというもの。

テレビシリーズを締めくくる素敵な作品で、鑑賞後の満足度は高く、後味も爽やかです。誰かから”特別”な存在として認めてもらいたくて葛藤する咲と、自分の気持ちに素直に行動するまこと。この二人の気持ちに寄り添いながら優しく進むストーリーが切なく尊いです。

特に本作では咲にスポットを当て、祖母のもとで暮らすことになった生い立ちを背景に、父母のそれぞれの思いとそれに対する自身の思いの狭間で揺れ動く彼女の心情が、丁寧に描かれます。咲の父も母も祖母も友達もみんないい人で、誰一人として悪意を感じさせません。咲もそれがわかっているからこそ、どこかで遠慮して心に蓋をして生きてきたのかもしれません。

そんな咲にもまことにも、いちばん近くで寄り添い、二人の思いに真剣に向き合い、温かく見守り続けた竜二の存在が極めて大きいです。本作での出番はやや少なめですが、彼は本当にいいやつで間違いなくキーマンです。こんな感じで、基本的にいい人しか登場しないので、それぞれの気持ちに共感しながら、物語にどっぷりと浸れるのは心地よいです。

目の前の人や物や出来事、そこにある思い、その何が本物で特別なのかは誰にもわかりません。でも、自分の思いだけは本物の特別で、それに従えばいいのだと教えてくれている気がします。まことと咲と竜二が、自分の”好き”に素直に行動し、互いをかけがえのない存在だと捉える思いこそが、特別で尊いものだと思えてきます。

本当に素敵な作品で誰にでもおすすめしたいところではありますが、本作単体ではそのよさは半分も伝わらない気がします。できるだけテレビアニメ視聴後に鑑賞することをおすすめします。

キャストは、梅田修一朗さん、関根明良さん、内田雄馬さん、加隈亜衣さん、葵あずささん、梶原岳人さんら。関根明良さんの明るく屈託のない声に癒されます。

おじゃる