お坊さまと鉄砲のレビュー・感想・評価
全80件中、41~60件目を表示
民主主義の限界
「山の教室」をアマプラで見て感動して「お坊さまと鉄砲」は劇場で見た。「山の教室」のようなわかりやすさはなく考えながら見る映画となっていた。お坊さまがなぜ銃を必要とするのかという点は最後までわからないため眠くなることも・・・。私なりの解釈は「民主主義の未完」だと思った。民主主義がそんなにもいいモノであるならなぜ米国は銃社会であり、銃を捨てられないのか?という点と、すべての災厄の元は結局「銃」を使った民主主義とは真逆の力による統治ではないかと監督は観客に訴えかけているのだろう。しかし王様が退位してまで体制移行を決意したのだから民主主義自体は悪いモノではないとも言っているのだろう。また選挙による分断が描かれる点はトランプをこすっているのだと思った。「山の教室」のような見る薬のような映画ではなく私としては政治色が強すぎると感じた。しかし日本のようにトンデモ政治家や評論家が「民主主義の危機、民主主義を守れ!」と叫んでいる国よりよほど健全だとも思った。
幸福度ランキング一位の憂鬱
文明の発達は、必ずしも人間の幸福に結びつくわけではない『お坊様と鉄砲』、いや不幸にすることのほうが多いのでは、そう考えさせられる映画です。でも、もう後戻りはできないですよね、後は破滅に向かって急ぎ足でゆくか、足るを知るがごときノンビリ生きるか。
世界一幸福な国「ブータン」のはずなんですが
物語は、2006年のブータンが舞台。
それまでの国王による王政から、民主主義国家へ向けて初めての選挙が。
それまでの、ブータンはほぼ鎖国状態に近い国。
日本では、「世界一幸福な国」として、有名なんですが。
その根拠は、世界幸福度ランキングなるもの。
2013年に欧米の国に次ぐ、8位にランキング。
あの、後進国がなぜとなったわけで。
まあ、国際舞台にいきなり登場して、アジア最上位ですから。
みなは、驚いたんですが。
しかし、この話は後日談とでもいいますか。
その後のランキングは、2019年に59位にランキングされたのを最後に。
もはや、ランキングインすることは、ありませんでした。
そんな、アジアの仏教国ブータンの初の選挙。
鎖国は、悪いことばかりではない。
日本だって、徳川家が政権を担っていた江戸時代、300年間鎖国をしていたわけで。
その間に、科学技術や産業面、とりわけ庶民が困ったのは、医療の立ち遅れでしょうか。
平均寿命も短かったし。
子供の死亡率も高かった。
だけど、文化面では、庶民の芸能や浮世絵を中心に。
世界で類を見ない、独自な表現と発達。
いまでも、世界に誇れる文化が、開花した時代。
ブータンとて、どうだろう、文化面では、詳しいことはわからないけど。
人々の幸福度は、この映画をみれば、自ずと伝わってくる。
とりわけ日本もそうだけど、仏教国は、穏やかで、質素な国民性。
それは、この映画でも随所に感ぜられる。
産業革命とキリスト教を同列で捉えることはできないけど。
どうしても、文明開化、産業の発達、キリスト教の布教解禁。
そんな、キーワードでみてしまう。
幸福の度合いっていったい。
映画でも、素朴な生活しか知らない、村の民は、幸せそうだ。
そう、幸福と感じる器の大きさが、小さいのだ。
だから、僅かなことでも幸せと感じてしまう。
でも、日本でもそうだけど、産業の発達、恵まれたインフラ。
生活をより便利にする環境と道具。
文明の発達とともに、幸福と感じる器が、だんだん大きくなるのです。
ですから、ブータンも幸福度ランングから外れてゆくのも納得。
映画は、まさにその入口あたりで終わってます。
ただ、あの頃は良かったで終わらせたくないなと。
現代日本だって、そう悪くはないと。
まあ年齢にもよりますが。
若者が、より良く、より多くは当然のこととして。
かたや、生きていく最小限が満たされていれば、あとは儲けもの。
こんな考えになれればいいなと。
蛇足ですが、これをお薬で満たそうとすると。
ヘロインということになります。
代表的な、幸福と感じる器を小さくしてくれるお薬。
ただ、手を出せば、短い人生が。
あと、薬欲しさに犯罪にとか。
まあ、やめといたほうがいいですね。
とにかく、人間は、欲の生き物。
これを上手くコントロールしながら。
あるいは、適当にごまかしながらやっていくしか。
しょうがないですよね、それが、人間ですから。
ブータンに行ってみたい
ゆっくり流れる時間を画面いっぱいから感じられる
微笑みの国ブータンが、繁栄の象徴(と思われている)民主主義を
平和的に親愛なる国王から奉還され
「これで近代国家の仲間入りだ」
「これで幸せになれる」という言葉と裏腹に
村の中はいじめや争いが生まれ始める矛盾
独裁者から血みどろになって民主主義をつかみ取る構図が多い中
国民の誰もが望んでいない民主制が無理やり与えられ、選挙が生まれる
プロセスが面白い
田中芳樹さんの「銀河英雄伝説」を思い出した
善良な君主制と腐敗した民主制は果たして国民はどちらが幸せなのか?
銀英伝とブータンが重なった
「あぁ、ブータンに行ってみたいな」と
エンドロールが流れる間、満月が地平線からゆっくり昇るシーンを眺めながら
思ってもらいたいなぁと思う映画
王制国家から民主国家へと変化するブータン。その過程を描きながら観る者に「ブータンらしさ」と「幸せとは」を語りかけてくる作品です。
「ブータン 山の教室」の監督作品第二弾です。ふむ。
ペム・ザムちゃん元気かな…(←登場しません @-@;エッ)
まあ、何はともあれ観てみましょう、ということで
鑑賞した訳なのですが
作品として、何を描きたいのか何を伝えたいのか。
そういったメッセージが余り伝わってこなかったカモ…。
というのが正直な「鑑賞直後の感想」でした。 ・△・;
王国制度から民主国家への転換。
初めて行われる、国の代表を決める選挙。
その選挙に向けた、模擬選挙の実施。
選挙のことを理解していない村人への周知。
そのために、選挙推進の役人がやってくる。
投票先の政党を「色」で選ぶという投票スタイルなのだが
国王のイメージ色「黄色」が圧倒的に票を獲得。…・_・;
” 模擬選挙は失敗だ… ” と、思わず口にするお役人…。
◇
この、「国王の色に98%の票」が入るという結果は
選挙の趣旨からすれば「選挙が理解されていない」と
いうことになってしまうのでしょう。 …けれど
” 王様のイメージ色に98%の票が入る ” ということは
どれだけ国王が国民に慕われているか、のバロメーター
になっているとも言えるのではないかと。・-・
転換期の混乱はありながらも、近代化を図るブータン。
#国の在り方の変革は、誰が求めたのか?
#誰のための、そして何のための民主化なのか?
#民主化が争いや対立の元になるのなら本末転倒だし…・△・
…そんなことを考えながら1週間が経過。…@-@;;
原点に帰って考えてみました。・-・
◇
僧侶が銃を求めたのは何故なのだろう。
1丁だけではダメらしく、「2丁」必要だという。
模擬選挙の話と並行して、銃の入手に関わる話が進む。
それに伴い、次第に明かされてくる僧侶の胸の内。
” 古来、争いの元は大地に埋め上に仏塔を建ててきた ”
#いま、民主化の名の元に国民が割れている。
#この状況が続くことは、国のために良くない事。
#2丁の銃は、争いの象徴。埋めよう。
銃を調達してきた売人は、インドから密輸してきたらしく
バレたら当然、やばい。実際、仏塔建立の式典会場で
「なぜ外国人がここに?」
と咎められかけ
「この銃は仏塔の礎に埋めるため持参した」
と理由を説明して、地元警察を納得させていた気がする。
そしてその銃2丁は、平和を願う仏塔の礎となった。
” 武器よさらば ”
ブータンに争いはふさわしくないよ と。
これが、監督の発信したい一番のメッセージなのかも。
そう理解しました。・-・
※銃が2丁必要な理由は、「敵も味方も」争いの元を手放さ
なければならない という想いからなのでしょうか。
◇
話全体の構図が分かりにくい気がしましたが(…かなり・_・;)
ブータンの行く末を案じる気持ちは、じわっと伝わってくる
そんな作品なのだと思います。
※ただ、前作(ブータン 山の教室)のように、映像的に心に残る
場面はあまり無かったような気がして、それは残念でした。
※ブータンの2000年代にはいってからの国の状態や変遷を抑えて
から鑑賞しないと、本当の理解が難しい作品なのかもしれません。
◇あれこれ
■タイトル
英題「The Monk and the Gun」
翻訳「お坊様と銃」
お坊さま=モンク 。
初期の「ファイナルファンタジー」のジョブに「モンク」というの
があったなぁ と、遠い目になりました。
FFはⅣくらいまでしかプレイしていないので、モンクという職業が
いつ頃まで存在したのかは分かりません。
個人的にはドラクエシリーズの「武闘家」という職業が好きでした。
素早いし改心の一撃出やすいし。 モンクなしです。 …あ。
■銃
タイホから逃れるためとはいえ、高価な銃を穴に埋めた売人。
その嘆きと損失は如何ばかりか。これはこれでお察しします。
平和の礎となってめでたしめでたし。
※ブータンの軍隊にも無い最新式の銃、と言っていた気が。
後でこっそり掘り返しに戻っていたりして…。
■作品の順番
今気付いたのですが、この作品のほうが
「ブータン 山の教室」より前の時代を描いた作品なのでしょうか?
民主化は2008年で、この作品はそのころを描いたお話。で
「ブータン 山の教室」は、2019年の制作。
うーん。ま、いいか。 ・_・/☆
ベグ・ナムちゃん達が元気で静かに暮らしているのなら。
■メイド・イン・ブータン
作品鑑賞特典に「ブータン産レモングラス入り煎茶」のティー
バッグが付いてきました。
ヒマラヤ山中に自生している葉を地元の農家の方が積んでいる
のだそうです。ブータンからの輸入品です。・_・~
どんな味なのかな。
もったいなくてまだ飲んでません。 ← ケチ
◇最後に
ブータンを更に知ろうとするきっかけになる作品かと思います。
前の作品「ブータン 山の教室」が、そこに暮らす人びとの
「個人の生き方」を描いた作品とするなら、 今回の作品は
「国の在り方」「人の心の在り方」を描いた作品なのかと。
そんな風にも思いました。 ・-・ハイ
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
ブータンからの問いかけ:成長志向の意味と幸せとは?
楽しく、考えさせられ、予想外の展開で驚きと余韻を残す作品でした。銀座の映画館は空いていましたが、こんなにも心に響く映画は滅多にないと感じます。
この映画は、2004年のブータンにおける王政から民主化への歴史を背景にした現代の寓話です。ストーリーや一つ一つのエピソードには、実際の歴史を象徴する説得力がありました。
村人たちの戸惑いが特に印象に残ります。民主化することや投票権を得ることに対して、彼らは混乱し、受け入れられない様子を見せます。
歴史的に見れば、独裁政権や軍事政権からの民主化や、女性参政権のための闘争など、民主主義は人々が血を流して勝ち取ってきたものです。
しかし、この映画では、敬愛される王が統治するもとで国民が幸福を感じ、現状に満足しているブータンという特異な状況が描かれます。そのため、王権を手放してまで民主化を進める王の決断や、村人たちが投票権を与えられて戸惑う姿には、大きな意味が込められていました。
映画の主軸である「鉄砲」を巡るエピソードは、ネタバレを避けるため詳細は伏せますが、尊敬される高僧が瞑想を中断し、選挙の模擬演習に関与するという展開は、サスペンスを生みつつも不安感を煽るものではありません。
その結末は意外でありながら、ユーモアと幸福感に満ちており、見終わった後に温かい気持ちになりました。
映画が提示する「幸せな国のあり方」には明確な答えは示されません。それは、ブータンという国自体がいまなお壮大な社会実験に挑戦しているからです。
しかし、個人が幸せに生きる方法については、仏教国らしい一つの解答を示してくれます。この解答が、現代資本主義の中で生きる「普通の人」として登場するある人物に、幸せをもたらすであろうと予感させてくれるのです。
この映画は、成長や進化を志向する現代社会に対し、幸せの本質とは何か、変化を受け入れることの意味とは何かを改めて問いかけてきます。そして、その問いを観客一人ひとりに委ねるのです。
AK-47がぁぁぁ・・・‼️
この作品、名作「ブータン 山の教室」の監督の作品とのことで、期待してたのですが、期待通りの名作でした‼️2006年、民主化を進めるブータンで模擬選挙が行われることに。初めての選挙にブータンの人たちは緊張と困惑気味。そんな時、周囲を山に囲まれたウラの村で、高名なラマ僧が若い僧に次の満月までに二丁の銃を準備するよう言い渡す。そしてアメリカから来たロンは、アンティークの銃をウラの村で探していたが・・・‼️突如訪れた民主化、近代化に戸惑う人々の姿を描いた、まるで昔の日本の市井映画のような味わいの作品ですね‼️同じかどうか分かりませんが、初めてのストリップショーに村中が大騒ぎになる、木下恵介監督「カルメン故郷に帰る」を思い出しました‼️民主化に戸惑う様々な人間ドラマが描かれるわけですが、支持の違いから母と口も聞かない夫や、学校でイジメに遭う娘を持つ女性の「民主化じゃなくても、今までだって幸せでした」のセリフが胸に沁みる‼️そしてアンティークの銃を手に入れようとするロンと、ラマ僧のために二丁の銃を手に入れようとする若い僧のシークエンスが絶妙に交錯し、ドタバタを繰り広げるわけですが、なぜラマ僧が銃を手に入れようとしていたのかが判明するクライマックスは、民主化、近代化への移行を理想的な形で人々に納得させる、善意に満ちた名場面ですね‼️ホントに素晴らしい‼️若い僧が美しい花畑を横切るラストカットも郷愁に満ちていて印象的でした‼️前作「ブータン山の教室」といい、今作といい、今後ブータン映画には要注目ですね‼️
微笑みと幸せ
変化の時に本当の幸せと平和な世界を問う
ピュアが過ぎる
ブータン映画は『ブータン 山の教室』に次いで2作目。同じ監督の作品なのですね。
とてもロケーションが美しい国だけど、今作では車が通れる所だから、だいぶ低い村なのかな?
タイトル通りお坊さんが銃を手に入れる話と、ブータン初の選挙という2つが並行するお話。
ちょっとずつニアミスしながら繋がっていくなかで、出てくる人が揃いも揃ってピュアなのがかえって可笑しい。
便利を知ってしまうと不便を感じるのだろうけど、そもそも村の人々は幸せに暮らしているから、何も不満はなさそう。
とはいえ選挙の仕方を役人が教えに行くとか、この話からまだ20年経ってないのがなんとも。
終盤、うまく2つが繋がるものの、銃が必要だった理由は予想外。お坊さんも村の人々も警察までも、ふざけてるのかと思うほどにド天然で面白かった。
そしてあんなんお礼に貰っても困る。
物騒なタイトルとは裏腹に楽しくハッピーな映画。
ブータン愛溢れる作品
掘ってたのそれかよ・・・
・・・って思ったのは私だけじゃ無いはず(詳しくは本編を見てくれ)
ブータンは最後にテレビと携帯(通信)が整備された国である。とはいえまだ一家に一台とはいかないのでテレビのある家や茶屋にみんなが集まってテレビを見ている。「ALWAYS 三丁目の夕日」で描かれていたような昔の日本と変わらない。顔立ちがモンゴロイドなのもあって行ったことない国なのにどこか懐かしさを感じる風景だ。蕎麦の花ってあんなに美しいのか。
映画の舞台は2006年だが田舎の山間部でも携帯がちゃんと通じることにむしろびっくりする。ちゃんと基地局あるんだなぁ・・・。
国民に慕われていた国王が平和的に退位しブータンが民主化したことで、初の選挙に振り回されるブータンの人々。
今まで国王のもとで幸せにやってきたのに何故わざわざ選挙なんて必要なのか?と疑問に思う村人を必死に「啓蒙」する選挙委員のツェリンも中々上手くいかない。「多くの人が命をかけて必死に勝ち取ってきたもの(選挙権)が与えられたのだ」と言われても村人にはピンとこない。フランスやロシアのように民衆が血みどろの戦いで王制を倒して民主制を勝ち取ったわけではないからだ。日本人としても身につまされる部分ではある。日本も普通選挙のために闘った人々はいたが勝ち取るには至らず、結局GHQから占領後におまけで選挙権が与えられた。現在も選挙率は2割程度。「投票しても何も変わらない」「誰に投票したら良いかわからない」なんて言う人たちが嘆かわしい。
もちろん王政とてうまく機能するのはあくまで「民に尊敬される良き王」が上に立つの場合だけなのは言うまでも無い。タイも国民に慕われていたプミポン国王が泣くなって国民は皆むせび泣いたが、後を継いだ長男はあのざまである。(せめて国民に慕われる長女が継げれば良かったのに・・・)
選挙に関する真面目な話は映画「サフラジェット」(誰だよ「未来を花束にして」なんて残念な邦題つけた奴は・・・)あたりを見てもらうとして、これはブータンの民主制の善し悪しを問う映画ではない。むしろ幸せとは何かを問う映画だ。
選挙に執心している夫は支持者が違うことで義母とも仲違いし、娘も学校でがいじめられることを嘆く母親。
月イチで干し豚を食べるだけが楽しみの田舎暮らしなんて嫌だ、娘をもっと良い学校に通わせたい、という夫の気持ちも、いままでの田舎暮らしで十分幸せだという妻の気持ちもわかる。選挙にかまけて娘のための消しゴム一つ買うことも失念してる父親のせいで娘は先生に怒られる。大人に振り回されるのはいつも子供だ。
ブータンの田舎では仏教が生活に根付いていて、みんなお坊さんのためなら対価も求めず何でも差し出すし快く手伝う。そこに資本主義の介在する余地はほとんどない。お坊さんも「選挙は仏陀の教えにかなうものか?」と民主化も近代化もさして興味なさそう。
アンティーク銃コレクターのアメリカ人ロンと、仲介する都会民のベンジが資本主義の象徴として物欲に振り回されている様は村人たちと対照的だ。
坊さん相手には米ドルも価値がないのでロンとベンジは銃を求めて奔走するも中々上手くいかない。それを追う警察。のどかな田舎で物語は淡々と進むものの、中々展開が予測できないなか、僧侶がなぜ鉄砲を求めたかが明らかになり、綺麗にたたまれるラスト、そうきたか。
ラマ役の役者さんは本物の僧侶だったらしく本作が俳優デビューだとか。どうりでガンダルフのような威厳溢れる佇まいに引きつけられる。ラマの言葉が選挙よりテレビより誰よりも村人には響く。
お金があっても都会で物に囲まれていても幸せとは限らないのは当たり前だが、物欲に関する話は映画「365日のシンプルライフ」あたりを見るとして、どちらにしても一度民主化や近代化に舵を切ったら後戻りは出来ない。どんなに日本人が「ALWAYS 三丁目の夕日」の時代を懐かしんでも、スマホ無しの生活はもう考えられないように、村人たちもテレビのない生活にはもう戻れないだろう。
ブータンは発展途上国の中でも珍しく近代化を目指さない国として、長らく世界幸福度ランキング上位にランクインし「世界一幸せな国」として知られていたが、やはりラジオやテレビ、ネットから海外の情報が入るにつれて自分たちの生活と他国との差異が可視化されたためか、2019年度以降のランキングで幸福度は大幅に下がってしまっているらしい。残酷ながら幸福度は他社との比較という物差しで決まってしまうことがある。
いつか坊さまがブッダの教えより米ドルを選ぶ日が来るのだろうか。それはわからない。けれどラストの村人達を見るとこの国の未来は明るいんじゃないかと思えてしまう。
袈裟と鉄砲(セーラー服と機関銃、みたいに)
足るを知る
お坊さまが鉄砲をご所望、なんともう世も末か!と思う自体になるかと思いきや、ものすごーく平和で穏やかで協調性のある人たちの見本みたいな優しさの塊のブータンの人たち。
これはいつの時代の話?と思うほどに、全く昔から変わらないままの暮らしが現代に続いていることにまず驚く。
信心深い仏教徒だから信仰が染み付いているのか、人々は欲が無く、環境と人にとても感謝しながら生きている。王様も王様としてとても慕われていて、こんな幸せな国だもの、そりゃ色んなものを変えずに続けられたはずだわね。
「足るを知る」を学んだ。
今の現状をより良いものに変えたくて、もうぶっ壊してでもなんとかしたいと訴えて革命を起こして変化を望まなくても、十分に今の暮らしで幸せを感じられるので、選挙をして国の政治のリーダーを変えて改革を!と望む人がほとんどいない。
ねぇ、なんて幸せな国なの!!
でもそこを変えていこう、変わろうとする動きと、この暮らしに満足しているので変化に戸惑う人たちの中に他所から来た欲の塊の人間二人が物語を展開していくのだけど。
ラストに近づくにつれ、なんか色々ハラハラもドキドキもしたけど、変わりゆく世界で変わらない人々の信仰、信念、国民性?をみて、みんなが大事に守り続けてきたものの偉大さを感じたよ。
なんか久々に心を洗われるような映画を観たわ。よかった。
心が疲れている方におすすめしたい。
幸せに夢見るブータンに
心洗われた。
巧みな脚本の虜
以前に劇場でトレーラーを観て興味を持った本作。IMDb、RottenTomatoesでも評価が高いようなので劇場鑑賞を決めました。公開1週目のサービスデイの本日、新宿武蔵野館10時15分からの回はまぁまぁな客入りです。
ブータンの映画は本作が初見の私。興味深さもありましたが、耳慣れない言語は作品に乗れないと眠気との闘いになることもあります。と言うことで、出来るだけ集中力を保ちながら観始めましたが要らぬ心配でした。
物語が動き出すと間もなく、パオ・チョニン・ドルジ監督の巧みな脚本の虜になります。2006年を振り返って作られたコメディは、当時のブータンにおける時代背景(急激な変化)と大衆の意識のズレについて、イデオロギーや文化、或いは価値観の違いなどを利用し、少しずつミスリードさせながら展開していくコントのようで面白い。そして、出演者それぞれに判りやすくキャラクターがついており、真顔で小ボケな感じがオフビートでクスクスが止まりません。更に、次第に状況が変わりながらも、どうしても捨てきれない「悪い予感」が常に付き纏って何気にサスペンスで目が離せない。そんなハラハラな展開がありつつも、観終わって印象に強いのは結局「ブータンの人たちの眼差しや人となり」に尽き、癒されて心が洗われます。
2011年にジグミ・シンゲ・ワンチュク国王が来日され、「世界一幸せな国」のキャッチフレーズで日本でも話題になったブータン王国ですが、その後の「幸福度の大暴落」の予兆も感じる本作。ただただ癒されているだけではいけません。少しでも理解の足しにして、今後もブータンに興味を持ちたいと思います。UNEXTのマイリストに追加したままの『ブータン 山の教室』も早く観ないといかんな!
蒐集家と男根
銃を求めるタシとロンの2組と、それと並行して選挙委員会の活動や国民の反応を見せていく。
ニアミスやら逆値切り交渉などは面白かった。
ただ、物語としての起伏には乏しく、よく言えば穏やかだが眠くもなる。
ハッキリ言って銃の活用法に意外性はないし、二丁であった理由も不明だ。
「満月までに」という台詞も意味深にするためだけで、普通に「模擬選挙までに」って言えよ、と思う。
そして、俗に塗れた人間としてはロンがひたすら不憫。
ブータンの法には触れてたのかもしれないが、彼はただのコレクターで悪人とまでは言えない。
その彼が、ひたすらに裏切られ、振り回され、散財させられ、男根を得る話とも言える。
口約束とはいえ即刻反故にする銃の持ち主に、必要な理由も知らずに007にかぶれてAK-47を選ぶタシ…
勿論コメディなのだろうが、気持ちよくは笑えなかった。
支援する候補による軋轢を大人と子供の両方で見せてくるけど、主張も人柄も知らないのでよく分からず。
(どっちも物で釣ってる感じでロクでもない?)
模擬選挙の練習では「憎め、見下せ」なんてとんでもない指導が行われてもいる。
民主主義に移行する土台はまったく出来ていなさそう。
最も大事なことを目に見える形で示すという行為自体は素晴らしいと思う。
しかし、田舎の村でやってどれだけ効果があるかは疑問。
個人的には、51歳の若さで主権を手放す決断をした王の方に興味を惹かれてしまった。
全80件中、41~60件目を表示