劇場公開日 2024年12月13日

「民主主義が分断を生むのか」お坊さまと鉄砲 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0民主主義が分断を生むのか

2025年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

国王がいて、いい治世で国を治めていたので、国民の不満も特別大きくなかったブータンが民主制に移行することになり、国民に選挙とは何かを教える過程で起きた騒動をコミカルに見つめた作品。
民主主義は無条件に素晴らしいものなのかと、疑問を突き付ける鋭い内容である。意識の高い選挙管理委員は、諸外国を例に出して、投票する権利を得るために、多くの国が血を流したのだと説明するが、市民の1人は、この国ではそれを求めて血は流れなかった、もしかしてこの国にとっては重要じゃないのでは、と返し選挙管理委員を困らせる。
実際、選挙をせずともブータンはある程度平和だった。しかし、選挙を通じて、市民には分断が始まる。なぜ、こっちの候補者を支持しないんだと村八分にされる人もいるし、両親の応援する候補者のせいで学校でいじめられる小学生もいる。なんだか、選挙が民衆を分断しているみたいだ。
物語は選挙管理委員の投票模擬練習と並行して、あるお坊さんが鉄砲を用意しろと弟子に告げたことから始まる、コミカルな顛末が描かれる。武器と民主主義の発展には何らかの関わりが確かにありそうな気がする。今、世界は確かに武力と民主制の奇妙なカップリングのもたらす帰結を実際に目撃しているし。

杉本穂高
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