「【”模擬選挙実施を聞き、ラマは”物事を正す、銃を2丁用意せよ”と弟子に言った。”国民総幸福量という開発哲学を掲げるブータンを舞台に民主主義の選挙の意味、害を成すものには何をすべきかを描いた作品。】」お坊さまと鉄砲 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”模擬選挙実施を聞き、ラマは”物事を正す、銃を2丁用意せよ”と弟子に言った。”国民総幸福量という開発哲学を掲げるブータンを舞台に民主主義の選挙の意味、害を成すものには何をすべきかを描いた作品。】
■2006年。ブータン国王は王政から民主主義への移行を図ろうとし、選挙の実施を決めた。そして、選挙が何かを知らない国民のために事前に模擬選挙をする事になる。選挙委員のツェリンの選挙公報を聞いたラマは弟子のタシに模擬選挙が実施される満月の日までに”銃を2丁用意せよ”と命じるのであった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・模擬選挙をする事になり、夫が選挙にのめり込み過ぎて、そのために夫が娘の消しゴムを買うのを忘れたり、対立候補を応援する母と関係が悪くなったり、果ては娘が苛められるようになった妻が、選挙委員のツェリンから”他の国では、選挙権を得るために命を掛けて来たのよ。”と言われた時に、涙ながらに”でも、私達は命を懸けなくても幸せだった。けれども選挙をやる事で幸せではなくなった。”というシーンは、考えさせられたなあ。
候補は
1.赤色の、産業を発展させることを主張する人
2.青色の、民主主義と平和を推し進める人
3.黄色の、民族の伝統を守る人
がいるのだが、まるで1と2の対立は米国の共和党のトランプと民主党のハリス氏の激しい罵り合い選挙を思い出すが、結果は得票率95%で黄色の人。理由は王様の色が黄色だから・・。クスクス。
選挙委員のツェリンが、対外的な事も考えて一生懸命有権者登録を推し進めたのになあ。
・タシがラマの指示により、銃を探す様も、米国人の銃コレクター、コールマンと通訳ベンジが絡んで来るので、面白い。コールマンと通訳ベンジーが漸く農家のお爺さんから南北戦争時の鉄砲を譲って貰う時の遣り取り。”7万5千ドルでどうですか?””そんな大金、いらないよ””、じゃあ、こんな値段でどうですか””良いよ”で、その値段が3万2千ドル。クスクス。けれども、お爺さんの所にタシが来るとアッサリ譲ってしまうのである。で、お爺さんが驚くコールマンと通訳ベンジーに言った言葉。”ラマには世話になったしなあ。”
・タシも村のお店で観た007の影響で、コールマンと通訳ベンジーから”その銃を譲ってくれ!2丁用意するから!”と言われてパンフレットを見て”じゃあ、これ!”と指さしたのがナントAKー47。旧ソ連の自動小銃の名機である。で、コールマンは密輸業者に頼んで、インドからAKー47を密輸するのである。序でにカメラも取られちゃうのである。可哀想だなあ、クスクス。
■で、村人たちが集まる中、ラマと弟子のタシは村の中のパゴダの前に大きく掘られた穴の前に座り、”害を成すものは、こうするのだ!”という感じで、お爺さんの南北戦争時の鉄砲を放り込み、更に村人たちもナイフを、コールマンと通訳ベンジーを追って来た警官は腰に付けた銃を、序でに事情を警官に説明していたコールマンと通訳ベンジーが持っていたAKー47も放り込まれてしまうのである。イヤー、可笑しいシーンだったなあ。けれども、今の世界の状況を考えると、含蓄に溢れるシーンだと、私は思ったのであるよ。
・そして、選挙によりギクシャクしていた夫婦と娘と義理の母は仲良くなっているのである。良かった良かった。
<そして、村人たちが夜に火を焚いて踊りを踊る中、茫然とした表情のコールマンは”アンタ、良いことしたねえ、ご利益があるよ。これも上げちゃおう!”と村人に言われて、子孫繁栄を象徴するでっかい赤い男根の供え物を貰うのである。クスクス。
今作は、国民総幸福量という開発哲学を掲げるブータンを舞台に民主主義における選挙の意味、害を成すものには何をすべきかを描いた作品なのである。>
<2025年2月2日 刈谷日劇にて鑑賞>