「王制国家から民主国家へと変化するブータン。その過程を描きながら観る者に「ブータンらしさ」と「幸せとは」を語りかけてくる作品です。」お坊さまと鉄砲 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
王制国家から民主国家へと変化するブータン。その過程を描きながら観る者に「ブータンらしさ」と「幸せとは」を語りかけてくる作品です。
「ブータン 山の教室」の監督作品第二弾です。ふむ。
ペム・ザムちゃん元気かな…(←登場しません @-@;エッ)
まあ、何はともあれ観てみましょう、ということで
鑑賞した訳なのですが
作品として、何を描きたいのか何を伝えたいのか。
そういったメッセージが余り伝わってこなかったカモ…。
というのが正直な「鑑賞直後の感想」でした。 ・△・;
王国制度から民主国家への転換。
初めて行われる、国の代表を決める選挙。
その選挙に向けた、模擬選挙の実施。
選挙のことを理解していない村人への周知。
そのために、選挙推進の役人がやってくる。
投票先の政党を「色」で選ぶという投票スタイルなのだが
国王のイメージ色「黄色」が圧倒的に票を獲得。…・_・;
” 模擬選挙は失敗だ… ” と、思わず口にするお役人…。
◇
この、「国王の色に98%の票」が入るという結果は
選挙の趣旨からすれば「選挙が理解されていない」と
いうことになってしまうのでしょう。 …けれど
” 王様のイメージ色に98%の票が入る ” ということは
どれだけ国王が国民に慕われているか、のバロメーター
になっているとも言えるのではないかと。・-・
転換期の混乱はありながらも、近代化を図るブータン。
#国の在り方の変革は、誰が求めたのか?
#誰のための、そして何のための民主化なのか?
#民主化が争いや対立の元になるのなら本末転倒だし…・△・
…そんなことを考えながら1週間が経過。…@-@;;
原点に帰って考えてみました。・-・
◇
僧侶が銃を求めたのは何故なのだろう。
1丁だけではダメらしく、「2丁」必要だという。
模擬選挙の話と並行して、銃の入手に関わる話が進む。
それに伴い、次第に明かされてくる僧侶の胸の内。
” 古来、争いの元は大地に埋め上に仏塔を建ててきた ”
#いま、民主化の名の元に国民が割れている。
#この状況が続くことは、国のために良くない事。
#2丁の銃は、争いの象徴。埋めよう。
銃を調達してきた売人は、インドから密輸してきたらしく
バレたら当然、やばい。実際、仏塔建立の式典会場で
「なぜ外国人がここに?」
と咎められかけ
「この銃は仏塔の礎に埋めるため持参した」
と理由を説明して、地元警察を納得させていた気がする。
そしてその銃2丁は、平和を願う仏塔の礎となった。
” 武器よさらば ”
ブータンに争いはふさわしくないよ と。
これが、監督の発信したい一番のメッセージなのかも。
そう理解しました。・-・
※銃が2丁必要な理由は、「敵も味方も」争いの元を手放さ
なければならない という想いからなのでしょうか。
◇
話全体の構図が分かりにくい気がしましたが(…かなり・_・;)
ブータンの行く末を案じる気持ちは、じわっと伝わってくる
そんな作品なのだと思います。
※ただ、前作(ブータン 山の教室)のように、映像的に心に残る
場面はあまり無かったような気がして、それは残念でした。
※ブータンの2000年代にはいってからの国の状態や変遷を抑えて
から鑑賞しないと、本当の理解が難しい作品なのかもしれません。
◇あれこれ
■タイトル
英題「The Monk and the Gun」
翻訳「お坊様と銃」
お坊さま=モンク 。
初期の「ファイナルファンタジー」のジョブに「モンク」というの
があったなぁ と、遠い目になりました。
FFはⅣくらいまでしかプレイしていないので、モンクという職業が
いつ頃まで存在したのかは分かりません。
個人的にはドラクエシリーズの「武闘家」という職業が好きでした。
素早いし改心の一撃出やすいし。 モンクなしです。 …あ。
■銃
タイホから逃れるためとはいえ、高価な銃を穴に埋めた売人。
その嘆きと損失は如何ばかりか。これはこれでお察しします。
平和の礎となってめでたしめでたし。
※ブータンの軍隊にも無い最新式の銃、と言っていた気が。
後でこっそり掘り返しに戻っていたりして…。
■作品の順番
今気付いたのですが、この作品のほうが
「ブータン 山の教室」より前の時代を描いた作品なのでしょうか?
民主化は2008年で、この作品はそのころを描いたお話。で
「ブータン 山の教室」は、2019年の制作。
うーん。ま、いいか。 ・_・/☆
ベグ・ナムちゃん達が元気で静かに暮らしているのなら。
■メイド・イン・ブータン
作品鑑賞特典に「ブータン産レモングラス入り煎茶」のティー
バッグが付いてきました。
ヒマラヤ山中に自生している葉を地元の農家の方が積んでいる
のだそうです。ブータンからの輸入品です。・_・~
どんな味なのかな。
もったいなくてまだ飲んでません。 ← ケチ
◇最後に
ブータンを更に知ろうとするきっかけになる作品かと思います。
前の作品「ブータン 山の教室」が、そこに暮らす人びとの
「個人の生き方」を描いた作品とするなら、 今回の作品は
「国の在り方」「人の心の在り方」を描いた作品なのかと。
そんな風にも思いました。 ・-・ハイ
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。