劇場公開日 2025年3月14日

「罪深き人間に希望を与える現在の神話」Flow 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0罪深き人間に希望を与える現在の神話

2025年3月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

バルト三国はラトビアのギンツ・ジルバロディス監督のアニメ作品でした。最初実写とアニメを組み合わせてるのかと思うほどの絵の質感に驚きました。特に光の加減がリアルで、ファンタジックな物語なのに、そんなファンタジック世界にもリアリティを与えていたように思いました。
またもう一つの特徴として、主人公が黒猫で、鳴き声はあったものの言葉は一切ありませんでした。セリフがないアニメ作品というと、昨年話題になった「ロボット・ドリームズ」が直ぐに思い出されますが、人間が出て来ないだけで都市化された街が舞台だった同作とは異なり、基本大自然が舞台であったので、セリフがなくても自然な感じであり、また登場動物たちの鳴き方や表情で彼らの感情は十二分に伝わるように創られていたので、非常に理解が進むお話でした。

ストーリーとしては、地球の水位が全体的に上がり、殆どの地面が水没してしまう中、漂流する帆船に乗った黒猫をはじめとする多種の動物たちが必死に生き残ろうとするもので、まさに「ノアの方舟」の様相でした。帆船には、先客のカピパラがいて、これは黒猫に友好的というか無関心。その後洪水の直前に黒猫を集団で襲った犬の仲間の白犬、物に異常に執着するキツネザル、黒猫を助けようとして仲間に翼を折られたヘビクイワシが加わる。まさにノアの方舟状態。

旧約聖書の方では、大烏とか鳩を放つと戻って来なかったという記載があり、どちらかと言うと鳥がネガティブに描かれた印象がある一方、本作のヘビクイワシは、主要登場動物中唯一途中で飛び立って居なくなってしまいましたものの、天に召されたという感じだったので、この辺の相違が何を意味するのかなと、知恵のない頭で考えているところです。

最終的に、ニシル山なのかアララト山なのかに模されたと思われる尖塔のような場所に辿り着いた動物たちは、団結して生きて行こうと決意した感があり、その神々しい姿に勇気を貰った気分でした。

そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。

鶏