「幼稚な復讐」どうすればよかったか? かりたさんの映画レビュー(感想・評価)
幼稚な復讐
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「どうすればよかったか?」
これは内省の問いかと思いきや、違う。
両親への非難の言葉だった。
初めはドキュメンタリーならではの姉の鮮明な病状、思考停止した両親に、まざまざと恐怖を感じさせられた。
しかし、母親が亡くなってから、穏やかな父娘の日常に、父親への見方が徐々に変わっていく。
90歳近い父親が、痩せた手で娘に茶を渡し、話しかけ世話をする。娘の葬儀では、二人で論文を書いたと、無意味な人生でなかったと慰める。
30年以上、病気を持った娘を世話し続けたことに、なぜ愛がないと言えよう。
それは致命的に間違った判断であるが、愛は確かにあったのだ。
一方で、監督である弟は何をしたのか?
健常でありながら、女ひとり抱えて病院に行くこともせず、なぜか両親の説得に固執する。
娘の死後、自身も死を間際にした父に、「どうすればよかったと思う?」と、“おまえは間違えた、おまえの人生は失敗だ”と執拗に問いかけ、映画として世に出す。
インタビューにて、「姉について後悔はない。自分は25年前初めて発作が出た時に、救急車を呼ぶ正しい判断ができたから」と語る。
彼は姉を愛しているのか?
ただ自己投影の対象、同じ両親の被害者として姉を見ているようだ。両親をひたすら死ぬまで非難し、自己を正当化している。
そこには、「子は親の所有物」と考える両親と全く同じ、「親が子を導くべき」という幼稚な価値観が横たわる。
家庭という小社会を描写した点で傑出しているが、監督の立場を利用した個人的な復讐を、作品と呼ぶべきではないため⭐︎1。
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