「すごかった」どうすればよかったか? 吉泉知彦さんの映画レビュー(感想・評価)
すごかった
お姉さんが統合失調症を長期に渡って患う。お姉さん本人もお父さんもお母さんもめちゃくちゃ頭がよくて、それが悪い方に働く。せっかくお医者さんが見つかったのに、その人の論文をお父さんが読んで気に入らないと言って受診させない。うちなら誰であろうと医者ならとりあえず頼るのだけど、そこでそんなことする? ご夫婦ともに研究者であり、我々一般人とは次元の違う考えで生きているようだ。
お母さんが認知症で統合失調症みたいになっている時がもう地獄だ。家に二人もいる。その後やっと精神病院に入院したら3か月で良くなるので、本当につらい。ほぼ人生を棒に振ってしまった。薬が効いて状態がよくなると、ひょうきんな性格が表れて、表情もかわいらしくて、そもそも素敵な人だったことが判明する。ご本人もさぞつらかったことだろう。ガンになってからもそれほど悲しい様子は見せない。カメラの前ではそうしなかっただけかもしれないが、ガンよりも統合失調症が回復したことによる安息が強いのだろうか。
家の中に物が多すぎる。ピアノは誰も弾いてなさそうだし、ピアノの上に石膏像が何体もある。断捨離はあまりしない方がいいと常々思っているのだけど、この家は不用品を半分に減らした方がいい。
お姉さんが、太ったり痩せたり体重が大暴れだ。
ラストでお父さんが、長男にけっこう詰められていて、反論したり言い合いになるかと思ったら、受け入れていた。間違いでなかったら素直に肯定する、そういうところは研究者らしくてかっこいい。ちょっと『哀れなるものたち』のウィレム・デフォーを感じた。
途中で長男が、お姉さんに「親にされて許せないことがあるよね」みたいに話す場面がある。それが一体何なのかは不明なままだ。