「時代動向の考慮と家族の承諾」どうすればよかったか? てつさんの映画レビュー(感想・評価)
時代動向の考慮と家族の承諾
クリックして本文を読む
監督としては、両親による姉の軟禁を座敷牢と同様に、人権侵害とみなしているように感じられた。母親は父親の方針を擁護し、監督の勧めに耳を貸さなかった。母親の正義が、認知症によって揺らぎ、亡くなってから、ようやく父親が監督の話にも耳を貸すようになった。しかし、亡くなった母親に責任転嫁しているようにもみえた。ただ、監督が父親に配慮したように、1980年代の精神科病院は、適切な治療を行わない傾向にあり、そこから守ろうとした趣旨も感じられる。私自身も、1990年代に関わっていたボランティア仲間内で統合失調症発症者が出たとき、受診を主張した仲間に対して、反対した経験があるので、両親の対応を全面非難できないところがある。やはり、その時代の専門分野の動向にも敏感に対応して考え直す必要はあるだろう。
家族の恥部を暴露するような作品の制作公開に関して、父親の承諾を得られたことが救いである。『アヒルの子』を公開した小野さやか監督が、撮影対象であった家族と訣別せざるを得なかったという告白とは対照的である。私自身も、家族の内情公開に関して家族の承諾を受けることに困難を感じていて、深く敬意を表したい。
コメントする