劇場公開日 2025年8月29日

「とっ散らかし方も横浜聡子」海辺へ行く道 ひぐまさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 とっ散らかし方も横浜聡子

2025年9月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

癒される

 「ジャーマン+雨」や「ウルトラミラクルラブストーリー」といった初期の横浜聡子作品を思い起こさせるような一品。彼女は自らの売りのポイントをきちんとわきまえていて、大きく外れるような作品は撮らない。

 本作はとある島(小豆島でロケ)の町おこしの「芸術」と「芸術家の短期移住」を軸としている。しかし揃いも揃って本当に売れている芸術家であるのかはわからない。みんな一癖ある紛い物っぽい者ばかりだ。そんな「芸術家」たちと、もしかしたら本当に大物になるかもしれない高校生との交流の中で成長していく中学生(主人公・奏介)の姿を描いている。そこに島のさまざまな人たちの交流も挟まって群像劇的な要素も見える。もしかしたら原作漫画は群像劇なのかもしれない(読んでいない)。ただそれだけの映画で、いつもの横浜作品らしく特に大きな事件は起こらない。何か重要と思われるファクトも描かれるが、それを最後までとっ散らかったまま意図的に放置してしまう。ぶっちゃけ言うと大人の登場人物の大半はいらないんじゃね?ともなってしまう。
 左様に初めて横浜監督の映画を見る人にとっては何のことかさっぱりわからない内容と思われる。おまけに男性でいえば深田晃司監督の初期作に近い会話劇をBGMとするような手法が取られていて「何をどう言ったか」に重きを置いていない。ここは会話を通じての人物間の関係性を見るべきだと思う。代表的なのはテルオの妹・加奈(新津ちせ=あの新海誠の実の娘)である。
 そうやって最初の高良・唐田のチャプターの中盤には「ああ、この映画は頭で見ちゃだめだ」とこちらも心得る。以後、ただ心地よく感じるまま最後まで。雨のシーンは皆無。青空ばかりで退屈な4:3の画面。海と空。でも上映時間140分を長く感じることはなかった。

 結論を言えば床に空けた大穴(の絵)のように、本作はあちこちに回収されることのない伏線が満載である。それを「ダメ」と断じるか「まぇええやないか」と感受性のみで語ってしまうかで評価は決定的に割れると思う。悲しいかなダメ大人の僕は後者だ。横浜ワールドをとことん楽しみたい向きには初期作品以来の絶好のお勧め作品。それ以外はむしろ見なくてもいいと言ってしまうくらいの客を選ぶ映画と言えると思う。
 あと、オトナに「極悪女王」のメインキャストが多いw。特にクラッシュ(自粛www

ひぐまさん