「潮風に吹かれる中、子供たちの姿が際立つ」海辺へ行く道 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
潮風に吹かれる中、子供たちの姿が際立つ
陽光が差し込む。潮風が香る。海辺を舞台にした大らかな本作は、芸術に触れながら成長する子供たちと、何かと迷走しがちな大人が織りなす物語。アーティストの移住支援を行う街だけあって、至るところに感性を刺激する物体や出来事が点在し、住んでいる人々も変わった人ばかり。多くの地元エキストラを映画の原動力として絶妙に取り入れながら、空気のごとくナチュラルに沁みこむ物語や、目の覚めるほど美しい景色に心地よく寄り添える作品だ。ストーリーを垂直に掘り進めていく構成ではないゆえ、やや好みは分かれるかもしれないが、何よりも出色なのは、芸術をめぐる率直な想いや言葉だろう。何をして芸術家と言えるのか。そんな定義などどこにも存在しない。誰もが自称でいい。境界線を引きたがる大人たちに比べ、まっさらな砂浜に裸足の一歩を刻むように表現する子供たちの、なんと自由なことか。その真剣であり、かつ生き生きとした表情が胸に残る一作だ。
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