劇場公開日 2025年8月29日

「夏の海辺できらめく創作の輝き」海辺へ行く道 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 夏の海辺できらめく創作の輝き

2025年8月30日
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鑑賞方法:映画館

難しい

癒される

■ 作品情報
監督・脚本 横浜聡子。原作 三好銀。主要キャスト 原田琥之佑、麻生久美子、高良健吾、唐田えりか、剛力彩芽。

■ ストーリー
アーティスト移住支援を謳う海辺の町でのんびりと暮らしている14歳の美術部員・奏介は、仲間たちとともに、演劇部に依頼された絵を描いたり、新聞部の取材を手伝ったりと、楽しく多忙な夏休みを過ごしていた。そんな奏介や仲間たちが、創作活動を通して経験したさまざまな出来事を描いていく。

■ 感想
予告編で感じたほのぼのとした雰囲気はそのままに、観る者を心地よい世界へと誘ってくれます。抜けるような青空と、どこまでも広がる雄大な海を背景に、創作活動に勤しむ少年たちの自由な発想と、その楽しげな様子がスクリーンいっぱいに広がり、夏の開放的な気分に満たされます。彼らが作り出す世界は、まるで彼らの心そのもののようにいきいきとしていて、観ているだけで心が洗われるような感覚に陥ります。

物語は、包丁の実演販売、独居老人の相手、人魚像の制作、少年の淡い恋、不穏な祖父の影、介護虐待の疑惑、芸術家への融資、鳥の笛など、本当に多くのエピソードで彩られています。それはまるで、夏の日に海岸に打ち上げられた貝殻や流木のように、それぞれが個性的で、固有の物語をもっているかのようです。最初は、それらがどこに向かっているのか、どう繋がっていくのか掴みかねて戸惑いを覚えました。一般的な映画のような起承転結を求める方には、もしかしたら物足りなく感じられるかもしれません。

しかし、本作は最初から「まとめる」ことを意図していないのかもしれない、と気づいた時、その見え方が一変します。金のためでも、評価のためでもなく、ただ「描きたいものを描きたいように描く」という純粋な衝動が、作品全体を貫いているように感じます。それはまさに、劇中の少年たち、奏介たちが純粋に創作を楽しむ姿と重なり、芸術の根源的な喜びを教えてくれているかのようです。

夏の海辺で青春を謳歌する少年たちの眩しさ、そして自由奔放な物語の展開を、五感で楽しむ。そう考えると、この映画が提示する「投げっぱなしの美学」は、案外心地よいものに感じられます。

おじゃる
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