「離島や僻地の医療従事者たちに捧ぐ」劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
離島や僻地の医療従事者たちに捧ぐ
最新医療機器とオペ室搭載の緊急車両=ERカーで事故や災害の現場にいち早く出動し、負傷者の救命に尽力する医療チーム。都知事直轄の“TOKYO MER”。
その活躍を描いたTVドラマの劇場版2作目。
TVドラマは見てないが、レンタルで見た劇場版前作がなかなか面白く、今回は劇場で観てみようかなという気に。
前作の実績か、作品そのものの人気か。『鬼滅』フィーバーの中、我が地元の映画館でも朝一から満員。久々に一番前の座席で観たよ。
だから、迫力がスゲェーかった!
横浜のタワー火災での救命活動が評価されたTOKYO MER。
各主要都市にもMERが次々設立。それは奇しくも前作で徳重聡演じるクソムカつく厚生労働大臣が推奨していた事なのが皮肉。
そんな中、鹿児島~沖縄間にもMERの設立が誘致。その名も“南海MER”。
TOKYO MERから喜多見チーフと看護士の夏梅が指導スタッフとして派遣され、離島が多いこの地域の医療の不便さを補う試験運用が国直轄で期待されていたが…。
半年間で出動は未だゼロ。そもそもMER出動レベルの事故もほとんど無く、チームメンバーも町医者やTOKYO MERの活躍に憧れて入ったなど救命の経験に乏しかった。
そんな時遂に、出動を告げるアラームが。いよいよ出番…!?
ところが、釣りをしていたチーフ候補の牧志が網を頼もうとしただけ。
釣った魚を美味しく。鈴木・菜々緒・江口、ここでも“せっかく”なので沖縄グルメしてるし!
「平和が一番」と言う牧志に対し、若いメンバーは張り合いが無く不満気。
鹿児島県諏訪之瀬島で事故が起き、遂に遂にの初出動。実力をアピールする場の筈が、牧志は負傷者の状態を見てドクターヘリに託す。
この牧志の判断は間違っていなかったと思うが…、チームの士気はさらに下がり、東京厚生労働省のお偉方の間でも南海MERの存続が疑問視され、第三者委員会で解体が内定していた。
このまま自然消滅か…? 離島や僻地に救命組織は必要か否か…?
問われる時こそ、試される…。
諏訪之瀬島で火山活動が活発化。突如、大噴火を起こす…!
前作が人災パニックなら、今回はディザスター・パニック。去年は『ツイスターズ』だったが、夏はこういうハラハラドキドキ・スペクタクルが見たくなる。
実は予告編の時は火山噴火のCGがちとショボいかなぁ…と思ったが、実際見るとかなりのクオリティー。
立ち上る噴煙、迫り来る火山灰、降り注ぐ噴石、焼き付くすマグマ…。ディザスター・パニックの醍醐味充分。
全79人の諏訪之瀬島は実在の島。そんな島で大噴火…となるとイメージダウンにも繋がり兼ねないが、昔から噴火は度々。リアリティー充分。
トカラ列島も最近地震相次ぎ、島民避難も。
これは単なる絵空事ではない。現実にだって起こり得る出来事(リアル)だ。
それは大噴火だけでなく、直面した人々の行動も。
大噴火で島への接近は禁止。
マグマは各区へ流れ、港の船も焼き付くす。
噴火でヘリも不可。
海保や自衛隊の到着にも1時間以上はかかる。
こちからからのアプローチは絶たれた。
音羽ら対策本部も救出方法に苦悩する。
島からの脱出も不可。島民79人の安否は…?
確認された。
今すぐ救出に行かないと!
連絡が辛うじてつき、重傷者も。
一刻の猶予もない。
音羽も葛藤。救出は最優先だが、二次被害の恐れがある。
新たに厚生労働大臣になった久我山からも厳しいお達し。自衛隊が来るまで待て!勝手な行動はするな!
一介の機関や少人数チームでは到底対処出来ない。国や自衛隊事案。
が、今何か出来るのは俺たちだけ。待っているだけじゃ救えない命もある。
危険の中、南海MERはまだマグマに侵されていない島の反対側から上陸と救出を試みる…。
南海MERの出動と活躍!
TOKYO MERの活躍のようにプロフェッショナルに!…と思いきや、
未曾有の大災害を前にしてメンバーは怖くなってしまう。
まあ、無理もない。これまで事故らしい事故どころかほとんど事に当たった事など無かったのに、こんな大災害…。TOKYO MERだって経験した事ないほどの。
が、平和主義と思われた牧志だけは違った。助けに行く。
牧志にとって島の人々はただの医師や患者って関係だけじゃなく、直に触れ合い、一人一人をよく知っている。
対策本部で島や島民の情報を募る時、牧志の情報が役立った。島民一人一人の性格、年齢、具合、誰が何処に住んでいるか。
だから見過ごす事など出来ない。それはメンバーも同じ。
牧志、医師兼ドライバーの常盤、看護士の武が車両に乗って救出に向かう。喜多見は言うまでもなく。
若い看護士の知花だけは動く事出来ず。夏梅とフェリーで待機。
喜多見たちの出発後、噴石降り注ぐ港から離脱しようとする知花。自分だけ逃げ…ではなかった。この判断は正しかった。
地面に落ちた噴石や倒れた木ですぐに車両は立ち往生。
その時、再び大噴火。噴石が容赦なく車両を叩き付け、無理して走ったら故障にもなる。
さらに二手に分かれる。常盤と武は車両で待機。喜多見と牧志は島民が避難しているであろう場へ急ぐ。
その間も大噴火、噴石や火山灰やマグマは続く。
本当にもう時間が無い…。
車で避難した8人の島民。が、タイヤがハマり、動けない。
そこへ辿り着いた喜多見と牧志。
彼らを連れ、車両へ。フェリーが待つ港へ。
その時さらにさらに大々噴火。急げ!
一方その頃、別の港に辿り着いた71人の島民。
全員が乗れる船は無い。マグマ迫る。そこへ…
南海MERの船が…! 知花の機転が彼らを救った。
元の港へ。噴煙はもう港にまで…。
その噴煙の中に、車両が…! 間一髪間に合った!
島民とMERメンバー全員を乗せ、島からの脱出に成功。
邦画でも迫力とスリル充分のパニック・スペクタクルだが、これだけで死者ゼロ!…は何か物足りない。オペや救命らしいシーンも無い。
まだまだ。見る者を飽きさせない作り。
島から脱出したが、噴石が飛んできて、知花を庇った牧志に直撃。重傷を負う…。
島民患者も危険な状態に。
一刻も早く屋久島港へ。大手術が必要な牧志はそこからドクターヘリで設備の大きな鹿児島の病院へ。
が、船の定員オーバーでスピードは出ず、燃料切れも間近。
そして遂に、大海原でストップしてしまう…。
そこへ、島の漁師でYouTuberの麦生が文字通り助け船。
さらに動ける島民は船を少しでも軽くする為に海へ飛び込む。
駆け付けた周辺の船が救出。ガソリンも調達。
屋久島港へ急ぐ。
牧志や患者は深刻な状態。喜多見は緊急オペを行う。
が、設備も何もかも不充分。特に牧志は出血が止まらず、このままでは…。
そこへ、輸送機で到着したのはTOKYO MER! 赤塚都知事が動いてくれた。
設備もさることながら、TOKYO MERのさすがのプロフェッショナルぶり。
南海MERもここまで本当に尽力した。引き継ぐ。
牧志の命は…?
今回のミッション、死者は…?
TOKYO MERのプロフェッショナルぶり。本当のプロのドクターに見える鈴木亮平の熱演。
喜多見が現場に駆け付けて、「もう大丈夫ですよ。診せて下さい」と言う時の魔法のような安心感。これも鈴木亮平の魅力と演技力。
TOKYO MERメンバーは菜々緒以外今回は序盤とクライマックスだけだが、今回は南海MERのドラマだ。
時々熱血な役柄がステレオタイプに感じる江口洋介だが、今回の人間味溢れる役柄はとてもいい。あんちゃん! いや、江口洋介が救命の世界に帰ってきた。
若い面々も奮闘。にしても、菜々緒、中条あやみ、めるる…ビジュ最強!
ところで、武さんと麦生はこの後どうなったのかな…?
頭の固い憎まれ役は必須。信念ある若き官僚も必須。福田バカコメディの時とは違う賀来賢人のシリアス熱演もしびれる。
アクションとスケール、スリルと感動…。『海猿』からそのジャンルを継いだと言っていい。
その『海猿』もだが、前作も今回もベタやご都合主義はやはり目立つ。
あんな大噴火の島にそもそも上陸出来るの…?
老人も多いのに、どうやって避難した…?
1時間で到着すると言っていた海保や自衛隊、海で迷子…?
ピンチ!→そこへ!→ピンチ!→そこへ!…の繰り返し。
やってる事や難点は『海猿』みたいだが、それでも『海猿』より好きなのは、この作品が例えフィクションで過剰であっても真に人の命を救うという事を描いているからだ。
それはMERだけの活躍だけに留まらない。
南海MERと島民たちの繋がり。
自分より他の人を。
他の人や船の為に海にすら飛び込む。
救命チームはそんな絆と命を繋ぐ。
人の最も尊い行動。様々な世界での活躍や他者を愛するもだが、誰かを助ける。命を救う。これに勝るものはない。
だから彼らMERの活躍に胸熱くさせられる。
厚生労働大臣や第三者委員会の愚かな審議。南海MERは必要か…?
必要に決まっているだろう! 南海MERにしか出来ない救命がある。
喜多見も我々もそれを教えられた。
離島や僻地で医療に従事する医師や看護士たちへ捧ぐ。
彼らの救命活動があって、この言葉がさらに喜ばしい。
死者ゼロ!
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