「「諦めないこと」と「無謀」は別のはず」劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「諦めないこと」と「無謀」は別のはず
気象庁が火山の噴火を予測できなかったり、南海MERの廃止が決まる日に火山が噴火したり、火山が噴火した時に南海MERが島のすぐ近くにいたり、全省庁を統括する災害対策本部が厚生労働省に設置されたり、タイミングと場所を計ったように噴石が降ってきたり、振動や揺れが激しい移動中の車内や船内で難しい手術を成功させたりと、次から次へと映し出されるご都合主義的な設定や展開に戸惑いを覚える。
それでも、軽トラが噴煙の中で立ち往生しているところにMERのメンバーが駆け付けたり、住民が避難している港が溶岩に飲み込まれそうになるところにフェリーが乗り付けたり、フェリーがガス欠になったところに漁船が予備の燃料を届けたり、フェリーの積載重量を減らすために避難民たちが海に飛び込んだところに近くの島の漁船群が現れたり、極めつけは、車内での手術中に電源が失われたところに輸送機で運ばれてきた東京のMERが到着したりと、数々の窮地を紙一重のところで乗り越えていく展開には、手に汗握るような面白さがある。
ただし、こうした、絶体絶命のピンチの場面で「救いの神」が必ず現れるパターンは、既に「TOKYO MER」のテンプレートになっており、どんなに深刻な危機に陥っても、どうせ誰かが助けに来るのだろうと予想できてしまって、前作ほどには、胸が熱くならなかった。このあたりのワンパターン化は、今後、シリーズを続けていく上での大きな課題となるのではないだろうか?
それから、噴石が降り注いだり、溶岩が押し寄せたりする中で、フェリーで島に乗り付けるという判断は、「二次災害の防止」という観点から、やはり「無謀」であったと考えざるを得ず、「結果オーライ」で済ませて良い問題ではないと思えてならない。
江口洋介演じるチーフドクター候補が、過去に火山噴火で妻子を亡くしているということが、こうした判断に影響しているのかもしれないが、そうであれば、むしろ、火山災害の恐ろしさを身に沁みて知っているはずだし、その直前に、MERで手術をせずに、患者をヘリで病院に搬送するという合理的な判断を下していただけに、こうした無謀さが、尚さら疑問に感じられるのである。
確かに、「目の前の命を救うこと」は大切であるが、「諦めないこと」と「後先のことを考えずに一時の感情で行動すること」とは別物のはずで、こうした災害救助を描く映画で、軽はずみに「無謀な行動」を称賛するようなことは、厳に慎むべきであろう。
エンドクレジットで流される写真を見ると、「離島における医療」も、この作品のテーマになっているようだが、島民の一人ひとりに寄り添ったきめ細やかな医療の大切さはよく分かるものの、それなら、医者が定期的に島を巡回すればいいだけのことで、ドクターヘリに比べて遥かに機動力の劣るMERを、高い費用をかけて維持する意義については、最後まで理解することができなかった。
ところで、いきなり下世話な話になってしまうが、玉山鉄二演じる漁師の、宮澤エマ演じる麻酔科医に対する恋心は、一体どうなったのだろうか?
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