「身分証より大切なもの」トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦 Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
身分証より大切なもの
周りが盛り上がっているので事前知識一切無しで見に行ったが、予想の5倍面白かった。
わかりやすく没入しやすい世界観、漫画のようにキャラが立ってて魅力的な登場人物(後に原作小説とコミカライズがあるのを知った)、音楽はゲ謎や攻殻機動隊でもお馴染みの川井憲次、アクション監督はるろうに剣心でもお馴染みの谷垣健治、と日本人にもとっつきやすい要素がそろっている。
なんといっても画面いっぱいの九龍城!!これを見るだけでも映画館に行く価値がある。
パンフレットでも語られているように本国では政治的事情であまり映像的資料が残されていない九龍城の映像写真資料を日本人が多く残していたことからもわかるように、日本人はああいう治外法権スラム街要塞が大好きなのだ。ポスターも邦題ももっと九龍城を前面に出した広報にすればもっと初動からお客が入ったのではないかと思う。
ファントムと変態仮面を足して2で割ったような四仔のキャラなど、日本人が楽しめる小ネタも満載である。
3部作の構想があり、続編と前日譚の制作が予定されているようで、是非ともこのままヒットが続いて3部とも日本で上映して欲しいものだ。
<以下ネタバレ>
主人公の洛軍は金を稼いで身分証を手に入れることを目的としている。金も身よりもつてもない(不法)難民の身では、自分を何より守るのが「その国にいてもいい」という身分証なのだ。実際、居住権やビザなしでは海外で出来ることは殆ど無い。仕事も家も見つからないし病院にも行けず国の福祉も受けられない。逮捕されようものなら、現在でも、入国管理局の人道を無視した行いによって下手すればどこにも逃げられず死ぬこともある。
九龍城を束ねている龍兄貴でも偽造身分証は手に入れられない。だが九龍城に居る限りは自由に働けるし、だれも出自を気にしない。九龍城に来る者は誰しも事情を抱えていることを住民達は理解しているからだ。
運命の皮肉で洛軍が九龍城を自分の居場所にしたいと思うようになった途端に九龍城を出なければならなくなる。さらに皮肉なことに九龍城を出ることで求めていた身分証と居住権があっさりと手に入る。しかしもはや洛軍にとって身分証は意味をなさないのだ。彼にとって本当に大切なものは仲間達との居場所だったからだ。
――という流れが何とも美しかった。
海外に数年住んでいたので身分証や居住権の重要さを痛感していることもあり、この流れが何とも心に沁みた。困難があってもどんな場所でも支え合う友人や仲間が居ればそこが故郷になるのかもしれない。