「漢たちの熱い友情は、城砦が取り壊された今も、語り継がれていそうに思う」トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
漢たちの熱い友情は、城砦が取り壊された今も、語り継がれていそうに思う
2025.2.12 字幕 T・JOY京都
2024年の香港映画(125分、PG12)
実在した九龍城砦を舞台に、密入国者によって巻き起こる騒動を描いたアクション映画
監督はソイ・チェン
脚本はアウ・キンイー&チャン・タイリー&サム・クァンシン&ジャック・ライチュン
原題は『九龍城寨之圍城』で「九龍城砦の包囲戦」、英題は『Twilight of the Warriors: Walled In』で「戦士たちの黄昏:包囲」という意味
物語の舞台は、1980年代初頭の香港
かつて繁栄を極めた九龍城砦は、今では訳ありの住民たちが集うスラムと化していた
その土地を巡る戦いは、殺戮王の陳占(アーロン・クオック)を龍兄貴(ルイス・クー)が倒し終幕を迎えたが、虎兄貴(ケニー・ウォン)は右目を失い、秋兄貴(リッチー・レン)は妻子を殺されてしまっていた
建物は龍兄貴が管理、土地は秋兄貴が所得し、外界の敵から住人たちを守ってきた
隣接する油麻地では、大ボス(サモ・ハン)一派が仕切っていて、手下の王九(フィリップ・ン)を筆頭に賭場や薬などを売って荒稼ぎをしていた
そんな町に、一人の若者が密入国してきた
名は陳洛軍(レイモンド・ラム)と言い、生き延びるために香港の地に足を踏み入れた
地下格闘技で稼いだと思ったら、大ボスに騙されてしまい、洛軍はそこにあった布袋を奪って逃走する
王九たちが追うものの、洛軍は知らずに九龍城砦へと迷い込んでしまう
城砦での揉め事は龍兄貴の部下たちが始末していて、洛軍は信一(テレンス・ラウ)に捕獲され、龍兄貴のところに連れられてしまう
龍兄貴は洛軍が奪った布袋を大ボスに返し、洛軍は城砦に居たいと懇願することになったのである
映画は、洛軍の正体がバレるところから動き出す
洛軍が秋兄貴の妻子を殺した陳占の息子であることが判明し、彼を巡る戦いが勃発する
龍兄貴は洛軍を匿い、外へと逃がそうと考える
だが、秋兄貴は大ボスと手を組んででも、洛軍を殺そうと考えるのである
物語は、過去の諍いを発端とした任侠ものとなっていて、龍兄貴と陳占が戦うことになった経緯などは端折られている
このあたりは前日譚で語られることになるので、それを待つしかないだろう
本作では、洛軍を巡る命の張り合いが描かれていて、ラスボスとして君臨するのが大ボスの気功の弟子でもある王九だった
彼の気功術は群を抜いており、信一、十二少(トニー・ウー)、四仔(ジャーマン・チョン)らが束になっても敵わない
そこで、洛軍は折れた刀片を王九の口の中に捩じ込み、それが気管などを傷つけたことによって、一矢報いることができた
また、城砦の下に転落しかけた洛軍を救い、起死回生の突風を起こしたのも、夢半ばで力尽きた龍兄貴の力のように描かれていた
前半は、洛軍が城砦に溶け込んでいく様子が描かれ、中盤になって、城砦を取り壊して更地にするという計画が浮上する
秋兄貴を取り込んだ大ボスが地主を集めて買い取ることになるものの、秋兄貴は檻に閉じ込められても売ることはなかった
そんな新体制を壊すために戻った洛軍と信一、十二少、四仔との友情物語が激アツな展開を迎えていく
また、日本由来のAVとか、四仔が田原俊彦に似ていたという小ネタも登場する
映画は、撮影のために城壁をセットで再現したとのことだが、そのクオリティは強烈で、本当に今も存在しているように思えてくる
この後、香港は中国に返還され、1993年に取り壊されてしまうのだが、そこに至るまでにいくつもの物語が生まれそうに思えた
いずれにせよ、アクションと任侠が好きな人にはたまらない映画で、こいつがラスボス?と思わせてからのチート級の強さは笑いが込み上げてきてしまう
どうやって撮ったんだろうかと思うようなシーンも多く、かなり痛々しく思えるカットも多い
登場人物はかなり多いものの、主要キャラはそこまで多くないし、外見が特徴的なので混乱することもないと思う
パンフレットも豪華でクリアファイルも付いていたので、映画が面白かったという人は少し高めだけど購入しても良いのではないだろうか