「バトル漫画みたいな面白さの香港アクション映画」トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦 おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)
バトル漫画みたいな面白さの香港アクション映画
「九龍城」は「クーロン城」という呼ばれ方で聞いたことはあったが、実際どういうものかは全く知らなかったので、今回の映画を観て良い勉強になった(もう無いけど…)。
個人的な印象としては「巨大なショッピングモールの中がスラム街」といった感じ。
ガラスの破片が撒き散らされた床の上で総合格闘技をやって体に破片が刺さりまくっていたり、走行中のバスから放り出されて地面に叩きつけられたりする場面が、本当にそうしているようにしか見えず、香港アクション恐るべし。
偽造身分証が明らかに手書きで、その雑さに笑ってしまった。
これが後半の伏線になっててびっくり。
敵からの追手を撒くために九龍城砦に迷い込んだ主人公のチャン・ロッグワンが、次から次へと迫ってくる敵襲をその場その場で機転を効かせて瞬時に次々と回避していく様子がまるでジェットコースタームービーで、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を彷彿。
九龍城砦のリーダー的存在であるロン・ギュンフォンの振る舞いが素晴らしかった。
超強いのに権力に溺れず、床屋を営むという地に足がついた生活をしていて、九龍城砦の住人たちに慕われているのも納得。
彼の言う「上の世代のことは水に流せ」は、今の世界情勢を考えると「その通り!」と思ってしまった。
チャンが絶望の淵に陥った時、名もなき住民たちが「困っている人がいたらつべこべ言わずまず助ける」という感じで救いの手を差し伸べる場面に感動したが、リーダーの振る舞いを見れば住民がそういう行動を取るのも納得だし、だからこそチャンがその後「ここに居たい」と思うようになるのも理解できる。
路上で男に酷い目に遭わされた女性をたまたま目撃したチャンが、怒りの感情から男に復讐を決意。
マスクで顔を隠し、男の家の前で待機して奇襲をかけようとしたところ、全く同じことを考えていた3人の男と遭遇。
ここで意気投合した4人はその後一緒につるむようになり友情を育んでいくわけだが、利他的行動をきっかけに他人同士だった男4人がチーム化していくこの展開、とても良かった。
個人的には九龍城砦の医者・セイジャイのキャラクター性にやられた。
プロレスラーみたいに鍛え抜かれた体で、普段は顔の傷を隠すためにマスクを身につけて生活しているわけだが、そのマスクが最初見た時は女物の下着に見えてしまい、「変態仮面」かと思った。
チャンがセイジャイの勤務する医務室に訪れたところ、部屋の棚には日本製アダルトビデオがびっしり。
ツッコミどころ満載だが、一番思ったことは「日本といえばこれか…」と苦笑い。
「ビデオを観て日本語をマスターした」という設定も面白い。
ビデオを集めている理由が本気なのか言い訳なのか、どちらにも解釈できる塩梅が絶妙。
マスクはどうやら女物の下着ではなかったようだが、「変態仮面」という認識は間違いではなかったように思う。
ラスボス1人に4人で挑むラスボス戦。
MCU映画のバトルシーンにも見えたが、昔は週刊少年ジャンプ読者だった人間としては、『ドラゴンボール』や『幽☆遊☆白書』の強敵と戦う場面を連想。
「硬直」と言いながらどんな攻撃も受け付けないラスボスを観ていて、戸愚呂弟のことを思い出した。
ただ殴り合うだけだと飽きてしまうが、強すがる相手に対し、チームで「どうすれば勝てるか」の戦略を考えながら戦うのが観てて楽しい。
変態仮面ことセイジャイがここで初めてマスクを脱いで戦うのも熱いが、戦う直前に呟く士気を上げるための一言を日本語で言ってくれて、日本人としては胸熱にならざるを得なかった。
映画を観終わってからは毎日ダンシング・ヒーローを聴く日々。