名もなき者 A COMPLETE UNKNOWNのレビュー・感想・評価
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ティモシーだからこそのボブディラン像
あまり多くは語られない映画です。
突然現れるボブ、既に素晴らしい才能を持っていて、偶然出会ったピートとの繋がりでスターへと駆け上がっていく。
ティモシーシャラメ演じるボブディランは、なんだか愁を帯びていて…この映画で描かれるボブディラン像にピッタリでした。
自由に歌うことを許されない時代ですが、ボブは自分の思うままに歌います。分類されない。何にも縛られない。まさに「名もなき者」。
ただ、ボブ自身は何を考え歌っているのか?満足しているのか?それはきっと誰にも分かりません。
そして1番の目玉のティモシーの歌声!!弾き語りが素晴らしかった。
ウォンカとチョコレート工場の時も思いましたが、本当いい声してるんですよねえ…。
彼の出演作は必ずチェックするようにしていますが、今回も新たな姿を見せてくれました。
パラダイム転換の激動の5年間を描く音楽映画
近年、大物歌手の伝記的作品が次々と作られ続けており、本作もその系譜の一つに位置付けられるだろう。しかし、まだ存命中のディランの生涯を描くのではなく、冒頭に述べたわずか5年間に焦点が当てられている。
しかし、この60年代前半の「5年間」というのは、ケネディが大統領に就任し暗殺され、キューバ危機が起こり、公民権運動が盛り上がるような社会の変革期を背景に、ミュージック・シーンでもフォークからロックへの転換が起き、ボブ・ディランという無名の青年の名声が一気に高まる、パラダイム・シフトの時代だとも言える。
アメリカの吟遊詩人と呼ばれるウディ・ガスリー(Woody Guthrie)の "Dusty Old Dust" という曲が流れるのだが、その "So long... It's been good to know you." (それじゃ、また。知り合えて良かった)という歌詞が作品冒頭で流れるときと、終盤でもう一度かかるときでニュアンスが全く異なって聴こえる。まさにその聴こえ方の変化が本作で描いている「時代の変換点の5年」を端的に象徴している気がする。
また、ポスターにも「時代は、変わる」と書かれているが、ボブ・ディランが劇中で歌う "The Times They Are A-Changin'" も、これまで何度も聞いていた際には単なる「社会転換」とだけ思っていたのだが、本作の文脈の中で聴くと、向けられた視線の先がまた違って見えてきた。
世代的にはディランは自分の親世代に近く、ここで描かれる時代は自分が生まれてたばかりの幼少期。なので、ジョーン・バエズとの愛憎などはリアルタイムでは知る由もなく、ディランの楽曲に触れたのもかなり後になってから。
だが、まだ20代のティモシー・シャラメが実際にギターを弾き、歌も歌っていると知り、全く違和感なく見えていたことに驚きを隠せない。Duneを撮りながら砂漠で練習していたのだろうか?😂
モテない人間には「うらやまけしからん」場面だらけ
冒頭、ティモシー・シャラメ演じる若き日のボブ・ディランが、ニューヨークに降り立った時点ではホームレスチックな雰囲気だったのに、「美貌」と「音楽の才能」は既に兼ね備えていたため、ちょっと歌えばみんなその歌唱にうっとり、そのままスター街道まっしぐらだし、ちょっと女性に声をかければ後は相手の方から寄り添ってきて勝手にお金を出すようになり、気づけばヒモ生活の完成。
世の中が平等にできていないことをこれでもかと分からせてくる作り。
イケメンミュージシャンにとっては当然の権利と言わんばかりの二股生活がスタート。
二股になってからの方が彼女への接し方が丁寧になるのはちょっと面白い。
少し年月が経過するといつの間にか別れていて、別の彼女に差し代わっている。
イケメンは彼女が途切れないという、残酷な真実。
世の中は男女比が1対1のはずなのに、一人の男が多くの女性を独占するから、世の中、彼女のいない男が大量発生するのでは?なんてことは負け犬の遠吠えすぎるので思ってはならない。
寂しくなったら元カノの家を訪問。
深夜4時に行っても快く受け入れてもらえる。
ストーカー認定されないのも、イケメンの特権。
正直この映画でボブ・ディランに共感できるところは一切無かったが、ボブ・ディランの彼女が彼のコンサートを舞台袖で観ていたところ、舞台上でボブ・ディランが女性ミュージシャンとイチャイチャし始め、その様子を見ていた彼女が号泣してその場を立ち去る場面で、男だけど彼女の気持ちに強く共感してしまった。
ソ連と冷戦中にアメリカにミサイルが飛んでくるのではないかという報道で街がパニックになる場面は、日本で原発事故が起きた日のことを思い出した。
国民的スターになったことを示すように中盤からはサングラス姿になるが、ボブ・ディランがプライベートで店にいた時にファンに見つかり、「顔見せて〜」とせがまれながらサングラスを奪われ、奪い返そうとしたら近くにいた男から「彼女に何するんだ」と言われながら殴られるシーンは、さすがに可哀想だった。
終盤のコンサートの場面。
ボブ・ディランからすると師匠みたいな存在のピート・シーガーが語る「シーソー」の話に個人的に感動していたら、その話を聴いていたボブ・ディランが急にご機嫌斜めになるのが謎だった。
あと、コンサートでボブ・ディランが歌い始めたら観客と主催者がキレだして、会場がカオスになっていくのも謎だった。
映画を観終わった後に調べてたら、当時はフォークソングをアコースティックギターではなくエレキギターで演奏することが「フォークに対する裏切り」と言われていて、ボブ・ディランがそれを強行しようとして強い反発にあったとのこと。
無知で頭悪い自分にも理解できるような説明が、劇中にあってほしかった。
映画を観ていると、ボブ・ディランはルールを守らない人という印象。
他人のコンサート中に私語を注意されても無視。
病院で、医者がダメだって言っているのに患者に勝手に煙草吸わせたり、病室で楽器を演奏し、それを病院職員から注意されても無視。
ちなみに、病院での出来事を聴いたピート・シーガーが、ボブ・ディランに対して「トランプのジョーカーみたいだな」と言うのが個人的に意味不明だったが、これは「トランプ大統領みたい」という意味だけど、1960年代にトランプ大統領はいなかったからそういう表現にしたのかなと勝手に妄想。
また、ボブディランが教育的なテレビに遅刻して出演した時も、酒や煙草をしながら、性的な比喩表現を含んだ話をし、子供向けではない音楽を演奏。
日本国憲法の第13条には「すべて国民は個人として尊重され、生命や自由、幸福追求に対する権利は公共の福祉に反しない限り、最大限に尊重されるべき」と書かれているが、ボブ・ディランからすると「公共の福祉なんてクソ喰らえ、これが本当の自由」ということなのかと思った。
シャラメの演技を見るだけでも価値があります。
出だしからラストまで見ごたえあるシーンの連続で全く上映時間の長さが気になりませんでした。
ボブ・ディランを演じたティモシー・シャラメの歌唱力と楽器演奏も素晴らしく、ベテラン歌手役のエドワード・ノートン、モニカ・バルバロも皆吹き替え無しで演じているそうでアカデミー賞にノミネートも頷けます。
若い時から才能溢れたボブ・ディランを丁寧に描いたヒューマンドラマになっています。
天才ミュージシャンの苦悩や女癖の悪さもそれなりに描いているのもリアルでした。
ティモシー・シャラメは「君の名前で僕を呼んで」から注目していましたが今や存在感のある大物役者になりました。
おススメ度は高いです。60年代洋楽が好きな方には特におすすめします。
進むべき道
音楽への逃避行
華も名もあるボブ・ディラン(ティモシー・シャラメ)の半生記でした。当たり前の話ですが、ほぼ全編に渡って音楽で埋め尽くされていて、そこを聞くだけで非常に素晴らしい作品でした。ただ、劇中の観客がボブ・ディランに唄って欲しいと思う曲は、映画を観ている観客も聞きたいと思う曲と重なっている感じがして、にも関わらず客に迎合したくない彼はそうではない曲を唄うという流れになっていたため、劇中の観客も映画を観ている観客(少なくとも私)とも、カタルシスを得られないお話でもありました。そのため、ややストレスを感じなくもない結果になったというのが正直なところでした。まあボブ・ディランの心持ちは充分に理解できるのですが。
また、人間関係においても、恋人のシルヴィ(エル・ファニング)や、ミュージシャンとしてのライバルにして同士でもあるジョーン・バエズ(モニカ・バルバロ)の気持ちを一切無視して、自分の感情の赴くままに行動する姿には、ちょっと痛々しさすら感じました。ただ音楽に接している時だけは生き生きとした表情で、まるで音楽に逃避行しているようで、いわゆる”孤高の芸術家”というタイプとも違う描き方をされていると感じたところでした。
いずれにしても、「マッドマックス」に出て来る車の先頭に乗って”行進曲”を演奏するバンドの存在を見るまでもなく、音楽というのは人を”前進”させる力があるようですが、本作においては”逃避行”とセットになっていることから、音楽の素晴らしさに反比例して感情が高ぶらないお話ではありました。
ただ第97回米国アカデミー賞で、主演男優賞にノミネートされ、また作品賞などにノミネートされた「デューン 砂の惑星 PART2」でも主演したティモシー・シャラメの熱演と熱唱は感動もので、お話の内容は個人的に好みではなかったものの、間違いなく一見の価値はありました。
そんな訳で、本作の評価は★4.4とします。
これぞ音楽映画!
ティモシー・シャラメの演技が圧巻!年間ベスト級の洋画作品出現。
文句なし❗️
ティモシー・シャラメの演技が素晴らしかった。
彼の作品は3作品目だが、一番の最高作品では。
ボブ・ディランを本物かと思わせる程似ていたし、歌唱力も抜群。相当力を入れていたはず。名前を聞いた程度だが、だぶって見えた。
ストーリーも観ごたえがあったし、ライブシーンも抜群。
2025年年間ベスト洋画級作品候補に挙げたい。
主人公の性格があまり好きじゃない
知らない人
過去あったヒーロー伝記映画のような過度な脚色をせず、生身のディラン...
過去あったヒーロー伝記映画のような過度な脚色をせず、生身のディラン初期の時代、フォークからエレクトリックへ進化する様を、あくまでも曲を中心に淡々と描いているが好感度高い。圧巻は5年の歳月を準備にあてたというシャラメが40曲におよぶ楽曲を自ら演奏し歌唱している点。通常、演技は本職なのでともかく、歌唱などはプロ歌手の吹替に依存するものだが、これは立派。しかもディラン節はただでさえ難易度大。チョコレート工場や砂の惑星とはまったく異なるシリアスな役柄でオスカーノミネートも頷ける。脇を固める役者もセリフ数少なく、表情豊かな素晴らしい演技で映画を締めた。改めてディランの名作「追憶のハイウエイ61」までを聞いてみたくなった。
ティモシー·シャラメがすごい
複雑系の彼の物語
1961年から1965年頃までのボブ・ディランの姿を追った伝記映画ということになるのだろう。
ティモシー・シャラメ中心に俳優陣が素晴らしいパフォーマンスをみせ音楽映画としてももちろん一級品。ただボブ・ディランという人の複雑さというか人間的な謎の部分にはやはり切り込めなかった。
ボブ・ディランという人は毀誉褒貶が激しい。ほとんど宗教の教祖であるかのごとく崇める人もいれば、例えばジョニ・ミッチェルのように「まがいもの」だと嫌う人もいる。思うに、彼の精神のコア部分は何重にも守られていて何人も立ち入ることができない。この映画にもでてくるが有名(何人もの人の証言がある)な「若い頃サーカスにいた」というウソも、おそらくは何かを守るために無意識に張り巡らせた鎧の一つなのだろう。じゃあコア部分に何があるかなんだけと、私は個人的には、そこには何もなく「風が吹いているだけ」だと思っている。そして、多分、ジェームズ・マンゴールド監督も同様な仮説でもってこの映画をつくったのだと思う。「複雑系の彼」の物語として。
作品の軸になっているのはまずは時代である。1962年のキューバ危機、63年のワシントン大行進、そしてケネディ暗殺。音楽界でもプレスリーやジョニー・キャッシュの時代からベビーブーマー世代のボブ・ディランらに主流がかわるタイミング。
そして、もう一つの軸は、ボブと恋人シルヴィアとの関係である。ちなみにシルヴィアは架空の人物でありモデルになったのはスーズ・ロトロ。ほら「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」のジャケット写真でボブにしがみついている女性です。スーズは音楽関係者ではなく、すでに亡くなってもいるので許諾がとれなかったんでしょうね。
この二つの軸から映画は「複雑系の彼」の姿を描き、そしてニューポート・フォーク・フェスでカタストロフを迎える。ここは映画としての虚構であって実際に彼がエレキギターを持ち出し観客とのやりとりがあったのはイギリスのステージだったし、スーズ・ロトロとはもう少し早い時期に別れていたようです。
だからこの映画は史実そのものではない。そして、タイトルの「A complete unknown」は多くの人が誤解しているように有名になるまでまだ誰にも知られていない彼ということではなく(それでは立身出世の映画になってしまう)、誰も本心を知ることができない孤高の人としての彼を意味しているのでしょうね。
でもなお、ボブ・ディランという人はよくわからない。生まれながらの詩人にして、どうしようもない俗物である、と私は思っているんだけど映画はやっはりそこまでは踏み込めないよね。
鑑賞動機:シャラメとノートン7割、ノミネート3割
ディランにそれほど興味があるわけではないので、ピンとこない部分も多かったが、シャラメもノートンもバルバロも全部自分で演ってるのかな? そこは私でもわかるすごさだった。
あとIMAX鑑賞で劇場中央付近の座席をチョイスしたので、ライブシーンの音響は流石に迫力があった。
ハツネエリコさんてあの初音映莉子さんなんだ、ほえー。
曲を知ってれば
ボブ・ディランの自由への苦悩と爆発
個人的には、ボブ・ディランと言えば、ローリングストーンや、ノーベル文学賞を取った人というくらいイメージしかなかった。こういう伝記モノの映画が好きなので、久しぶりに映画館で鑑賞したが、心を動かされる、素晴らしい作品だった。
フォークソングを通じて、平和への希求、パートナーへの愛情を表現し続けてきたが、世の中が変わらないことへの無力感。短絡的に熱狂を続ける大衆への失望。そこでロックをと出会い、激しく自己と自由を爆発させるクライマックスに胸がジワッと来た。
ボブ・ディランの曲を知らなくても楽しめるし、鑑賞後は色んな曲を聴いてみたいと思った。恋愛部分は多少削って、後世も描かれていたらもっと面白かっただろうな〜
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