劇場公開日 2025年2月28日

「60年以上前の擬似リアルを少しは追体験できたような気分になれました」名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN 守井 象さんの映画レビュー(感想・評価)

4.060年以上前の擬似リアルを少しは追体験できたような気分になれました

2025年3月6日
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 学生時代によく聴いた曲ばかりで、思わず声を合わせていました(半径10mに他客がいなかったことは確認済) ‘78年の武道館=初来日で梯子を外されて以来45年!も封印してきたのに意外に覚えているものだ まるで劇中のNewportFesの客席にいるかのような140分で、十分に鑑賞料金のモトは取れましたね

 でもこの作品では当時のDylanの心情をなぞることまではできない それどころかDylanの心理・心根をしみじみ映し出すシーンも皆無(滑り出しのデビュー前ではfolkという音楽形態には拘らないとは言っているけど、ホンマでっか?) 果たして当時のDylanがここまでノンポリだったのだろうか プロテストムーブメントには百%ビジネス的関わりであったかのような描かれ方(今ではユダヤ教に帰依、イスラエル支援者だと聞くけど)
 デビュー当時の恋人Suze RotoloがSylvie Russoの別名で出てます 他には実名ばかりなので何かありそう 演じたは『I am Sam』のDakotaの妹だったんですね、似てる 劇中一緒に観た映画のBette D.の台詞で決別するのだが、本来なら“Ballad in Plain D”が劇伴挿入されるべきなのにな←歌中でParasite sister(寄生する姉)とされたSylvie/Suzeの姉も数度顔を出したが、それっきり この別名キャラ導入事由と共通事情なのかも 恐らくJoan Baezに関しても完全な事実との齟齬がありそう
 Fes前からPete Seegerら運営陣はDylanがアコギとエレキGどっちを使うか気を揉んでいたが、エレキの持ち込みを許し、ステージでもアンプからプラグは伸びており、客席からも”Mr.Tambourine Man”をねだる声も多かったわけだし.....結果、Peteはうちのめされ、袖のPete奥さんToshiが微妙な表情を見せるカットもあって.....演出ありきなのか、正しく全貌を描き出してはいないようだ そもそもDragの存在を黙殺していては真実に辿り着けまい

 でも古きを懐かしむ音楽イベントとしては大いに楽しめたので、個人的には無問題とします
 興行的には大丈夫かな?

守井 象