I Like Movies アイ・ライク・ムービーズのレビュー・感想・評価
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他人事じゃなさすぎる青春映画
本当に共感性羞恥で死ぬかと思った。少なくとも脳内では全毛穴から鮮血が吹き出していた。現実に向き合わずに映画ばっかり見て、それで世界や人生をひとより知った気になって他人を見下している鼻持ちならない若造。自分は才能があるという根拠のない自負心と、そんなものは幻想であるという事実から全力で顔を背ける弱さ。でもなあ、ついカップル客にトッド・ソロンズの『ハピネス』を勧めてしまう映画好きの気持ち、絶対にヤメロって思うけどわかる。結局、この情けなくて自分勝手な主人公が嫌いになり切れないのは、みごとにこの映画が類型としての映画オタクを捉えているからだろう。
そして主人公のイタさを相対化してくれる周囲のキャラたちもいちいち真実味があって、不満があるとすれば、終盤の成長が急すぎて、オイ、こっちを置いていくなよというか、そんなスピードでわかった気になってもまだまだ自分の足をすくわれるぞと助言したくなるというか、とにもかくにも他人事じゃなさが尋常じゃない青春映画に心から戦慄しました!
彼は今ごろどんな大人になっているのだろうか
まるで10代の頃の自分だと本作を見ながら溜息と苦笑で顔が歪んだ。映画ファンに限らず、きっと全ての人の中に多かれ少なかれ彼は存在する。この一見、オーソドックスでありながら、00年代初頭の映画をめぐる風景(特にビデオショップ内の)をノスタルジーたっぷりに活写したカナダ産の佳作は、まるでジャック・ブラックの少年版のような身勝手極まりない主人公がやがて一歩踏み出していく姿が静かな共感を呼ぶ。彼が抱く生きにくさ。自分は才能に満ちているという根拠なき自信。家族も友人もみんな下に見てしまうサイテーな孤独。そこで唐突に立ち現れる歳も性別も異なる店長が、掛け替えのない関係性をもたらしてくれるのも物語として、構成として気が利いている(少年と同様、私の中にこの店長も確かに存在するのだ)。傑作とは言わないが、人生を振り返る時に開くアルバムの、いちばん人には見せられない部分のような、甘酸っぱく胸に沁みる一作である。
過去と現在の自分に冷や水をぶっかけられた
インディーズ出身監督の映画を観まくりメジャー作品をバカにして、クラスメイトはレベルが低いと見下している映画好き童貞男子の青春映画。
こんなもん刺さらない訳がない。鑑賞中「俺はここまで酷くはなかった!」と言い訳しながらも共感性羞恥で顔から火が出そうでした。
本人はセンスある毒舌や辛口批評のつもりのただ単に嫌な奴でしかない言動。自己主張の強いファッション。甘過ぎる将来設計。ウザい自分語り。
映像系の専門学校に通っていた自分には身に覚えがありすぎてなんともかんとも。
現在はローレンスを見て「過去の自分もああだった」と省みる事が出来るとして、さて今ローレンスみたいな若者が目の前に現れたとしたら、自分はアラナのようにちゃんと大人として導いてあげる事が出来るか?
自信ないなぁ…、ビンタしちゃうかも笑
アラナの最後のアドバイスは本当にその通りと共感しながらも「俺、出来てるかな?」と不安にもなりました。こうゆう映画は定期的に見返して過去と現在の自分を内省しなきゃな。よし、DVDが出たら買おう!
VHSフォーエバー
って会社名は洒落てるね。
しっかしくそガキ・・ほんの最終盤迄ムカムカした。情緒不安は百歩譲るとしても、来もしない未来のデビューを夢見てディスりまくる、鼻持ちならない、もっと重い罰を与えても良かった。
店長魅力的〜!くそガキの位置迄降りてくれる、美人でそんな奇特な人居ないよ、仏さんでっか?
まぁ彼女の仰る事は聴くわな。
やばかった
自分や一緒に映画の感想ラジオをやっている友達の性格や人格がほぼ一緒で怖い。幸い自分は結婚して子どももいるため、責任を負い大人になれていると思うのだけど、根っこは同じだ。そもそも大人になりたいと思ってなったわけではなく、妻や子どもがいるので必然的にならざるを得なかった。しかしそのおかげで心が救われている。
ずっと仲良くしてくれている友達を雑に扱うのも身に覚えがある。記憶を掘り起こされてつらい。叫びたくなる。
最後、店長が主人公にするアドバイスが身に沁みる。とんでもない映画を見させてくれたものだ。彼は映画人になれるだろうか。映画に対する情熱や気位の高さは散々見せつけていたが、才能の片りんも描かれていなかった。アドバイスに従って楽しい学生生活が遅れていることを心から祈らずにいられない。
若さのコントロール出来なさが愛おしい
卒業に向けて思い出をつづる映画撮影を学校から任され、のちに奨学金を地元の大学から得ているローレンスは優秀な学生なのだろう。
しかし、教師の指示を無視し、親の経済力を無視し、ずっと動画撮影に付き合ってくれる友人(マット)を「仮」の関係と呼び、およそ理不尽の限りを尽くす。
ローレンスは妙なハイテンションで、自分には映画作成しかない、NYUへの進学以外に道はないと思い込む。
アルバイトの遅刻も、セキュリティの未施錠の末、泥棒に入られたことへの謝罪もろくに行わない。
数年前に父親が自殺しているという衝撃的な事実が明かされるが、映画はそのことを強調しない。
アラナはローレンスを解雇する際、彼の父親の自殺の語りは、同情を引くための手口と毒づく。
マットは最初ローレンスに依存していたようだが、自分自身を取り戻す過程でローレンスから離れてしまう。
ローレンスはマットが自分と疎遠になった原因をおそらく理解しながら、マットに何故と問いかけずにいられない。
あの高校生のころの、自分も世界もどうにもコントロールできないもどかしさをこれ以上に正確に写し取った青春映画を私は知らない。
そして特筆すべきは周りの大人たちの優しいまなざしだ。
大人たちはローレンスを解雇し、きっちり筋を通しながら、彼への温かいまなざしを途切れさせない。
アロナも職場の同僚たちも母もローレンスの不安定さを受け入れ突き放さない。
ローレンスは結局NYUへの進学を断念し、映画を扱うアルバイトを解雇され、卒業思い出ビデオ作製から外され、ことごとく夢の実現から疎外されているように見える。
そしてそれが、ただ現実に飲み込まれ、世間に妥協せざるを得ない若者の悲惨さに繋がらないところがこの映画の肝だ。
ローレンスの開かれた未来へのまなざしが温かい。
中二病ジイサンの胸
認めたくないものだな、自分自身の…
こーゆー人をシネフィルって言うとシネフィルの人に怒られそうではあるが、ものすごくウザくてありえないほどイタいシネフィル主人公ローレンス。映画鑑賞に限らずいろんな趣味分野でもこういった若さゆえの根拠なき自信をもっていたりするものだが、身内の不幸やお病気を差し引いたとしても人格破綻レベル。友人のマット君はよく付き合ってきたなと思うが、この手の人を孤立させると何を起こすかわからない気もするので、アラナ店長の真っ当な指導は大切である。
本作は00年代前半の時代設定だが、アラナの過去バナと同じような業界の闇が四半世紀経った現代日本の芸能界・テレビ局界隈等で明るみに出ていることが今さら感を伴いつつも感慨深い…。
自分ではなく環境が変われば、、みたいな!?
主人のその後の成長が伺える映画です。
「お坊さまと鉄砲」鑑賞して、15分後に同じSCREEN3で「アイ・ライク・ムービーズ」を観ました。
カナダの⽥舎町で暮らす主人公は映画が⽣きがいのニューヨーク大学で映画を学ぶことを夢見ている⾼校⽣。社交性がなく、自己中心的で周囲の⼈々とうまく付き合えず、友人たちをそんなつもりもなく傷つけてしまう。しかし、アルバイト先の店長さんがとてもイイ人で、彼女の「人の話を聞けるようになる」の教えを受けて、高校とは違い大学生活が、青春が、花開くであろうと思わせる内容でした。
何十年ぶりで1日で2本の映画(合計224分)をハシゴしたのは••• 。まだまだ映画を観る体力と気力は残っていました。
【”映画は僕の全てだった。けれどそれ以外にも大事な事が沢山ある事を知ったんだ。”今作は、性格にやや難ある愛すべき映画少年が、バイトや学校生活の中で徐々に成長するコミカル物語である。】
ー 序盤のローレンス(アイザイア・レティネン)は、同じく映画好きのマットとつるんで、映画を観たり映画を撮ったりしている。
彼は4年前に父親を首吊り自殺で亡くした事が原因なのか、どこか情緒不安定で我儘で、傲慢だ。だが、今作での彼は観ていて何故か愛らしい青年に見えるのである。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・ローレンスはマットに何気なく、”君とは映画愛のレベルが違うよね。”みたいなことを平気で言ってしまうし、高額な学費のNYU(ニューヨーク大学)に進学するためにレンタルビデオ屋でバイトを始めるが、夜中の二時でも母親に迎えに来て貰う事が当然と考えている、ちょっと世間知らずで傲慢な高校生である。
・又、レンタルビデオ店の店主アラナ(ロミーナ・ドゥーゴ)から指示された仕事は何となくこなすが、遅刻は多いしナカナカ問題児でもある。
・映画の知識は凄く、キューブリックが好きみたいである。TVで「フルメタルジャケット」を見ながら、微笑みデブが鬼軍曹から叩きのめされているシーンを観て笑っているが、彼はその後、自分も同じような目に遭って行くのである。
・彼は自分の言動が元で、マットに愛想を尽かされ映画作りはストップする。更にはバイト先で勝手に夜中に寝てしまい、セキュリティシステムを掛けろと言われていたのに、正面玄関から朝、帰ってしまい泥棒に入られ、レンタルビデオ店に損害を与え、アラナを傷つけてしまうのである。
流石にローレンスもしょげ返る。そして、NYU(ニューヨーク大学)の不合格通知が来て、彼は更にどん底に落ちるのである。ちょっと可哀想。
・けれども、彼はダイナーで独り昼食を摂っていると、アラナがやって来る。彼女は店で話してくれた女優時代の悲惨な経験を乗り越えて、もう一度演技を勉強するために安定したレンタルビデオ店を辞めると、彼に微笑んで告げるのである。
それを聞いたローレンスは、マットが映画プロデューサー志望の女の子と作った映画を観て”良かったよ。”と言い、仲違いを解消し、頭をサッパリと母親に刈って貰い、カナダの大学に進学するのである。
そして、大学の寮で、初めて会った同級生達の会話に自分から入って行くのである。
<今作は、性格にやや難ある愛すべき映画少年が、バイトや学校生活の中で徐々に成長する物語なのである。
<2025年2月9日 刈谷日劇にて観賞>
この設定には弱い
もっとマニアックな話かと思ったら(主人公のルックからの勝手な想像)、割と普通の映画好きな地方の男の子の青春もの。というか、男の子版『レディバード』風。決して『ニューシネマパラダイス』みたいなことでもない。それと後半、学校記念の映画(卒アルみたいなの)のエピソードが出てくるのでスピルバーグの『フェイブルマンズ』風でもある。だから、というか、それらの先行する作品に比べてしまうと厚みがまったくないし、笑いや、さすが!みたいな切れもまったくないのだけど、田舎町を出るぞ、とイキがってる男の子が映画エリートの向かう憧れのニューヨークに行けなくなって、別の場所に向かうあたりがとてもよく、涙が出てくる。ことにラストの学生寮あたりはとても美しく、もうこのシチュエーションは自分的に鉄板なんだな、と思った。
もっとあの当時のレンタルビデオ店や自主映画界隈っぽいマニア度や、店長の過去エピソードももう少しハマればな、とは思った。
ただのオタク話ではない…
忘れられない一本
I hate movies!
2003年のカナダを舞台に、人間関係がうまくいかず、行く先々でトラブルを引き起こす映画好きな高校生を描いた青春コメディ『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』
トロント国際映画祭を皮切りに熱狂的な評判を呼び、バンクーバー映画批評家協会賞で最優秀カナダ映画賞など4部門を受賞した。(公式HPより)
フライヤーに惹かれ、近くの気になっていた単館系シネマで上映されているとのことで鑑賞。
ラスト数分前まで、ただの映画好きなどうしようもない男子高校生(ローレンス)にモヤモヤ通り越して怒りを覚え、なんなんこいつ、高校生と言えどまじ最悪、胸糞悪い、などとイライラし続ける。
確かにいるいるこういう高校生。自分の好きなものを語りすぎて周りに疎まれちゃったり、こだわりが強かったりで、「好き」のエネルギーを昇華できずにふてくされてる子。高校卒業して、大学とかである程度自由ができて、「好き」の発散方法を見つけられたら花開くタイプ。でも周りはたまったもんじゃない。
ローレンスの周囲の人たちは心優しく、穏やかなぶん、主人公の子供っぽくてどうしようもない言動が目立つ。
その言動に振り回される家族、アラナ(バイト先であるビデオ屋の店長)、クラスメイト。
特にローレンスの母やアラナ、クラスメイトの才能ある女の子など、女性の傷つく姿にシンパシーを感じ、またイライラ。
彼女らはローレンスにきつく言い返したり悲しみながらも、なぜかローレンスを見る眼差しは少し穏やかだ。それはそれぞれ過去の痛みがあるから?もしくは"I like movies!"と訴える彼のまっすぐな瞳があるから?
確かに、人が好きなものを語る顔は非常に眩しい。なんかキラキラ、というかテカテカしている。お金もない、知識もない、技術もない、でも好きなんだ!!!という強い情熱は、なんというか、たくましい生命力を感じて、すごく、いい。
わたしにはそういうのあるっけなあ。
そんなふうに考えだした時からローレンスの魅力になんとなく惹きつけられている。
そして最後、爽やかなラストに繋がる。
わたしは、アラナの語る、「友達を作る方法」がグッと来た。
アラナはめっちゃかっこいい。ビデオ屋の仕事中に叫ぶ"I hate movies!"も、レジに方杖ついて放つ"××××"もめちゃくちゃ爽やかでかっこいい。
いいもん見た気がする。それはローレンスに対して溜まったヘイトから一気に解放されたからだろうか。夢も希望も詰まった若人のエネルギーがまぶしいからだろうか。
年齢は関係ない。だってアラナも辛くても立ち上がって、自分のやりたいことと向き合ってるから。
ちなみに、単館シネマを出た瞬間、同じ映画を見ていた見ず知らずの年配の女性に「いまの映画どう思った?」「あなた、映画お好きですか?」と聞かれ、なぜか彼女のおすすめの映画をいくつか教えてもらった。またこの映画館で会いましょうという約束をして。
なぜ私に?ありがとうだけどさ。
やっぱ映画の力ってすごい。
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