劇場公開日 2025年1月10日

「劇場で王一博のポストカードを頂戴しました。鐘楚曦のが欲しかったのに…(コラ!!)。」FPU 若き勇者たち TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0劇場で王一博のポストカードを頂戴しました。鐘楚曦のが欲しかったのに…(コラ!!)。

2025年1月25日
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鑑賞方法:映画館

単純

 中国からアフリカの紛争解決に派遣された国連所属の警察部隊の活動を描くアクション・ムービー。

 架空の紛争国サンタリオン共和国の場面はオール国内ロケ(広西省チワン族自治区)。アフリカ系のキャスト、エキストラも国内で調達って『北京の55日』(1963)みたいだな。
平和維持活動(PKO)の一環で組織される国連の警察は通常UNPOLと表記されるので、FPUはひょっとして造語?人命救助や正当防衛以上の過激なこともやってるし…。

 隊長の余衛東と楊震との過去の因縁を描くタイミングがよくないので、伏線というより付け足しぐらいの印象にしかならないが、もっとひどいのがヒロイン丁慧の扱い方。
 紅一点にも関わらず、男性隊員との摩擦やお約束のロマンスもなければ、彼女のバックボーンも語られず、まったくの無個性。そもそも男性隊員の中になぜ女性一人だけ加わっているのか説明もないまま殉職されても感情移入しにくい。付け足し以前の、存在がほぼ使い捨て。それにしても一人ぐらい彼女の死を悼んでやれよ。

 正直言ってシナリオが全体的に粗雑。
 本作に限らずカネを使ったアクションシーンに頼り過ぎてストーリー性が脆弱な映画は欧米のヒット作や人気シリーズでも多く見受けられる最近の趨勢。とはいえ、ゲーム世代の若い人たちならともかく、自分のような旧いタイプの映画ファンには物足りない。先日劇場で観たばかりの『太陽の少年』(1994)や『紅いコーリャン』(1987)のように、映像美で語りかける中国(香港)映画伝統のDNAがこれからも継承されるか、ちょっぴり不安。この映画、『インファナル・アフェア』(2002)のアンドリュー・ラウが製作に関わってる筈なんだけど。

 同じく王一博出演の『無名』(2023)を観た時、往年のカンフー映画みたいに最後にメイキングシーンがあるのには面食らったが、本作のエンディングにも。挿入歌に歌詞の字幕が出るのも中国の映画やドラマの鉄板。

TVの『陳情令』で一気にブレイクした王一博は残念ながら、『無名』も本作も似たような性格設定。彼同様TVで活躍したあと、『西湖畔に生きる』(2023)でまったく違う役柄を演じて演技の幅を魅せつけた呉磊のように、今後あらたな王一博の魅力をみせてくれるか、彼の脱皮に期待したい。へび年だけに。

 作品のラスト、FPUの活躍で平穏を取り戻した紛争地に千羽鶴が掲げられる。
 千羽鶴は本来は日本発祥の文化。製作サイドが認識していたかは分からないが、結果的にアジアで共通する平和の象徴として扱われている。
 この作品を観て中国政府のPRとかプロパガンダと感じる人も当然いると思うが、人間同士、相違点だけでなく何かで繋がっていることを実感することも、こんな時代だからこそ大切だと自分は思う。

TRINITY:The Righthanded Devil