「肝心な説明はほとんどないが、火薬と勢いで100分を突っ切るのは悪くないと思った」FPU 若き勇者たち Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
肝心な説明はほとんどないが、火薬と勢いで100分を突っ切るのは悪くないと思った
2025.1.14 字幕 TOHOシネマズ二条
2024年の中国映画(101分、PG12)
中国警察隊の紛争地域派遣を描いたアクション映画
監督はリー・タッチウ
脚本はウー・モンチャン&ジャー・リアン
原題は『維和防暴隊』で「平和維持機動部隊』、英題は『Formed Police Unit』で「武装した警察部隊」という意味
物語の舞台は、2018年2月のアフリカにあるサンタリオン共和国(架空)
そこでは、反政府組織のボス・アミール(Dolca Kobondo Nyerrbo)主導によって内乱が起きていて、彼はその罪によって収監されていた
だが、確たる証拠がないまま、ただ勾留するだけになっていて、平和を望む国民の声は届いていなかった
その後、塩を作っている海岸地域のファーブル村の大量虐殺を機に、サンタリオンは中国にFPUの派遣を依頼する
責任者としてユー・ウェイトン(ホアン・ジンユー)が選ばれ、彼らの部隊に国境警備捜査官のヤン・ジェン(ワン・イーボー)が加わることになった
隊は、ジョウ・ジアシュエン小隊長(オウ・ハオ)を筆頭に、狙撃手のジャン・シャオヤン(グー・ジアチェン)、機動部隊のツエン・ハオ(ナリス・バイ)、シャンドウ(ツァオ・ファーウェイ)、通訳のディン・フィ(チョン・チューシー)たちで構成されていた
彼らの指揮を執るのは国連作戦部長のファビオ・トーマス(トーマス・ファケ)で、政治委員のイェン・ジェンミン(イン・シャオテン)が行く末を見守っていた
物語は、マナフ広場の警備に訪れたユーたちが、反政府組織のメンバーに追われている一家と遭遇するところから動き出す
彼らはなぜか反政府組織に追われていて、その中の1人である少年ルカス(Favour Chukwudi Anyaegbu)が凶弾に倒れてしまう
懸命の処置を施すものの助けられず、ヤンとジャンはスナイパー(Evy Johannes Akoundou Epiet)を追いかける
だが、群衆に紛れたスナイパーを捉えることができず、2人は命令違反として、叱責されることになったのである
映画は、実際に行われている活動に色を足したもので、紛争地域も架空のものとなっている
警察隊と呼ばれるものの、ほぼ軍隊のような装備をしているので、語句に違和感を感じるかもしれない
アミールと通じている謎の白人ブレイク(ケヴィン・リー)の正体は最後までわからないのだが、彼らが持ち込んだ麻薬と銃器によって治安が乱れ、アミールを担ぎ上げて新政府の樹立を目論んだように思える
アミールは反政府活動をしているのだが、なぜかファーブル村だけは一族惨殺を目論んでいて、その理由はほとんど描かれない
族長(Jude Chukwudi Anyaegbu)は「目撃者」ということになるが、彼が何を目撃して証拠を提示するのかは不明だった
アミールと敵対する族ということになるのだと思うが、そこには積年の衝突の歴史があると思われるものの、映画では一切描かれていない
物語の中盤で、冒頭でアミールを取材していたジャーナリスト3名と、ルロワ議員(クレジットはLeroy)が人質になってしまうのだが、現行政府の関係者が1人も出てこないのは意味不明だった
アミールを捉えている勢力があって、それが反政府組織に押されているので中国から派遣されてきたようだったが、このあたりの「紛争に至る歴史を完全スルー」というのは斬新なのか手抜きなのかはわからない
中国映画なので情報がほとんどなく、見たまんまで判断する映画になると思うが、まあ「世界の警察」的な感じに描かれているので、そう言った方向性のプロパガンダなのだと思う
基本的に火薬でドッカン!が好きな人向けの映画なので、あまり細かいところを突っ込んだら負けなのかな、と感じた
いずれにせよ、展開が早くて寝ている時間がないぐらい激しいので、最後まで突っ走れるとは思う
だが、劇中で起こっていることの説明がほとんどないので、撮りたい映像を組み合わせて、中国最高!のための画作りをしていると考えるのが妥当なのだろう
FPUを送り込んでいる意図というのは色々とあると思うが、おそらくブレイクのような人物を送り込んでいるのも当局の上の方の人のような気がしてならない
その辺りを考える映画ではないのだが、昨今の状況を考えると余計なことを考えてしまうのは仕方がないのかな、と思った