「命に貴賤なし!正義に国境なし!」FPU 若き勇者たち おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
命に貴賤なし!正義に国境なし!
予備情報なしで、今週公開の新作というだけの理由で鑑賞してきました。劇場内のポスターから韓国映画かと思っていたのですが、中国映画でした。そうと知っていたら観なかったかもしれませんが、予想外におもしろかったので結果オーライです。
ストーリーは、国連からの要請でアフリカに派遣された、中国の組織警察隊FPUが、平和維持のために命懸けで任務を全うするも、政府軍と反政府組織の武力紛争が激化する現地ではなかなか受け入れられずにいる中、拘束した反政府組織のリーダーの行なった虐殺を法廷で証言しようとする村長と女性の護送の命を受け、それを妨害しようとする反政府組織との激闘が繰り広げられるというもの。
主役は中国警察ですが、どこの国の組織であっても国連の平和維持活動として参加している部隊は、こんな危険な任務をこなしているのかと思うと本当に頭が下がります。厳しい訓練を乗り越えて鍛え抜かれた精鋭たちが、平和という大義のために、家族を国に残して、何の関わりもない国のために、顔も名前も知らない人々のために、己の命を賭して任務を遂行する姿が胸を打ちます。
それなのに、現地では歓迎されず、守るべき相手から拒絶され、敵意を向けられ、あまつさえ攻撃までされます。それでも武力で反撃することなく、与えられた任務を粛々とこなすことを求められ、それを忠実に実行していきます。そんな姿だけでも熱いのに、ここに父の無念を晴らすという信念のもと無鉄砲な行動に走る警察官・楊震の成長、さらには隊長との確執と和解を織り交ぜ、ドラマ性も高めている点は見逃せません。
アクションも激しく、市街地での銃撃戦やカーチェイスなどの見どころが多く、その中で厳しい規律を徹底していく過程やそれによって培われたチームワークを感じさせる演出も好感がもて、見応えがあります。ニュースでよく見かける装甲車も、単なる頑丈な車というだけでなく、ハイテク装備を満載していることが知れたのも興味深いです。
エンドロールは、スタッフ名が流れる横で、撮影風景や未使用シーンと思われる映像を取り入れており、ここでも楽しませてもらいました。しかし、それは途中でなくなり、あとはかなりゆっくりめなスタッフロールだけで、しかもかなり長かったのはちょっと残念です。
いやはや、鑑賞後は中国へのマイナスイメージが払拭されそうで、これはプロパガンダとしては本当によくできています。自分のような単純な人間は、すぐに感化されてしまいそうです。とはいえ、中国が周辺国への進出や軍事的圧力を強め、国際摩擦を引き起こしている現状を踏まえると、本作を素直に受け入れられなくなります。劇中、隊員が「命に貴賤なし。正義に国境なし。」と発するのですが、現実の中国も、本作で描かれるFPUのような存在であってほしいと切に願います。
キャストは、ホアン・ジンユー、ワン・イーボー、チョン・チューシー、オウ・ハオら。中国俳優に疎く、誰一人知らず、しかも顔の区別がつかなかったので、序盤は没入しづらかったです。