劇場公開日 2024年12月14日

「街に映画館がやって来る!というワクワク感が伝わってくる一作」キノ・ライカ 小さな町の映画館 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5街に映画館がやって来る!というワクワク感が伝わってくる一作

2025年1月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

フィンランドに留まらず世界を代表する映画作家、アキ・カウリスマキ監督が故郷フィンランドで行っている映画館建設プロジェクトの一端を記録したドキュメンタリー作品。というとちょっと堅い内容を想像してしまいそうになるし、実際なかなか見ることのできない映画館建築の経過を丹念にとらえてはいます。一方で、その工事自体もどこか映画、そしてカウリスマキ監督への思慕が感じられるし、折々に差し挟まれるインタビューでは、カウリスマキ監督がフィンランドの映画ファン、映画関係者にとってどのような存在なのかが理解できるなど、終始和やかな雰囲気の作品でした。本作だけでも楽しむことができるのですが、もしカウリスマキ監督の作品を事前にいくつか見ておくと、登場する人々の話す内容がより深く理解できるかも。

インタビューに応じる人々がいちいち映像的に決まっていて、いやこれ、台本付きのドラマじゃないの?と思うほど。多分面々が映像映えしすぎているゆえの印象なんだろうけど。

話題の中心であるカウリスマキ監督自身はなかなか登場しないので、もしかして『桐島、部活やめるってよ』(2012)みたいに本人だけが登場しない作りなのかなー、と思っていたら、途中で普通に作業している様子が写って思わず笑ってしまいました。この、自分の存在をことさら大きく見せずにさらっと現れるところが、いかにもカウリスマキ監督らしいというか。

冒頭にいきなり日本語の楽曲が流れて驚いていたらそこにきちんと意味があることがわかるような作りになっていたり、ジム・ジャームッシュ監督は相変わらずかっこいいけど自分の作品じゃなくカウリスマキ監督のことを話すときはちょっと映画ファンとしての顔をしていたりとか、見どころが多い作品である上に、一度は「キノ・ライカ」に行きたくなる映画でした!

なお「キノ・ライカ」は現在も普通に映画上映や演奏会などを行っているとのこと!

yui