敵のレビュー・感想・評価
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現実と妄想のバトル
こういう映画が好きなら
老いの恐怖を経験している人にとってはあるあるネタ的な感じでメタ的に...
crescendo(だんだん強く)
なんじゃこりゃ
最初は年配男性の一人暮らしの丁寧な暮らしぶりが淡々と描かれていて、
モノクロというより極限まで彩度を落とした映像で、
登場人物もセリフも少なくとにかく眠かった!!!
一人また一人と登場して話は進むが、途中から夢?妄想?現実?ごちゃ混ぜで
なんのこっちゃの世界でした。これがSFというものなのか。
私はSF作品を読んだことがありません。筒井先生の作品も読んだことがありません。
知識がないからか理解できない。。。
最後なんてもう、とんだ安っぽい映画を見せられている気分。
筒井先生が以前、関西ローカルの番組にコメンテーターとして出演しており
いつも最後に確信をつく一言や粋な一言を仰るのがとても面白く好きでした。
だけどこれはよくわからなかった。原作を読んでみたくなりました。
「PERFECT DAYS」と表裏一体
よしだメンタルクリニック
朝から米を研ぎ、鮭を網で焼く…というような老インテリの絵に描いたよ...
結末は???だが、確実に面白かった!
興味を惹かれるストーリーで「この後どうなるんだ?」という展開が終始続きました。
ラストは視聴者に委ねれた形だと思いますが、映画としては面白かった。
元大学教授で慕ってくれる元教え子もいて、雑誌の連載があったり、手の込んだ料理を作ったりで毎日がそれなりに充実している。
いわゆる勝ち組の知的階級の年金生活者ですが、やはり高齢者の一人暮らしは孤独なんですね。
目を引く場面ではカラーになったり、人物の何気ない登場シーンがハッと驚くような撮り方をされていたり、モノクロ映画の良さを活かした演出が斬新でした。
ホラーかと言われればそうでもない気がしました。
確かに「敵」が日常の中でだんだんと近づいてくる描写があって、怖さを感じる場面もありますが、過去の思い出や妄想の中の人物のぶっちゃけた発言がコミカルで、見ててクスリと笑える場面も多かったです。
だんだんと近づいてくる「死」が敵そのものだったようにも思えますね。
老い
おっとりした時間が徐々にすり減っていく。
元フランス文学の教授の渡辺儀助は自分の貯金残高に残りの時間を合わせながら悠々とした時間を過ごしていた。同時に彼の崩壊もゆっくりと忍びこんでいく。
細部まで気を配られた日常が、儀助が孤立していくごとに噛み合わなくなっていく。連載の打ち切り、友人の死、女、老化、敵。
アケルマン的な淡々とした時間がだんだんとリヴェットの世界のように壊れていくサスペンスはたまらない。
白と黒だけの色彩設計はよく練られている。敵は黒だ。それに注目して見ても面白い。単純に映像だけを味わおうとしても、コントラストがはっきりしつつ、グラデーションもきめ細かいモノクロ映像は興奮させられる。
食事と排泄、睡眠、セックス。人間の罰が作品全体にきちんと並べられていて、生のあり様が老いを際立たせている。儀助の欺瞞と虚飾に満ちた死生観がハリボテであることが暴露される。
コルドリエ博士にも似た儀助の妖しい妄想の旅は映画としてこの上ない。
満点。
ホラー映画かな
静か過ぎる恐ろしき日常
不安と晩年
ジイサンの心臓には毒
一人の人間を覗き見るような
前半と後半の空気の対比が面白かったです。
前半は、「PERFECT DAYS」を思わせるように淡々と空気が流れていきました。それは私にとっての将来の過ごし方の理想でした。最低限の消費、関わりとしながら、食にはこだわり、会いたい人には会える、そんな毎日。
一点して後半は、突然あらわれた、夢と現実を交錯させる「敵」に静かに怯える毎日に変容しました。何となくそんな敵が来訪することも許容しながら(どちらかというと待ち望んでいたか)生活していたはずなのに、実際に訪れると慄いてしまう、そんな現実、そんな「恥ずかしくて面白い」人間というものを、冷静に見せつけられた気がします。
作品の世界観自体がフランス文学のようでしたし、映像も日本でないどこかを思わせてくれました。
マズローの欲求五段階説
丁寧にと言えば聞こえは良いが、他者の意見を受け入れない自分のルールでガチガチの独居老人の崩壊の要素をマズローの欲求五段階説から観察したい。
生理的欲求:生存のための基本的な欲求で、食欲や睡眠、呼吸、性、苦痛回避など
→前半では飯テロの如く旨そうな調理シーン、朝は目覚ましもなくベッドで6時ちょうどに起き、健康診断に行かないという苦痛回避。かつての教え子に感じる色香に陽気になる程度の理性をたもつ。
これが、カップ麺あんパン、酒と血便で壊される睡眠と健康。通院による苦痛。生徒への内的理性の崩壊。
安全の欲求:心身の安全性を確保したいという欲求で、健康や経済的安定性、社会福祉など
→月間の収支から貯金がそこつく日を計算することで、経済的な安定、入院等の健康寿命問題からの解放、死する恐怖のコントロールを図る。しかし女学生への援助により切り上がるXデー。
社会的欲求:集団に所属したい、仲間を得たいという欲求。家族や友人関係、企業などの組織などが含まれる。
→配偶者の死も乗り越え、行きつけのバーで会う友人との会話もある。そこから、友人は死に
妻への後悔が噴出。
承認欲求:仲間に自分の実力を認められたいという欲求
→教授として尊敬され、講演をし、連載をもち対価をもらう。バーであった女の子には権威を認められた上で尊敬される。そもそも家を守っている。という状態から、講演依頼はなくなり、連載は打ちきり、渾身のフレンチを振る舞う人もいなくなる
自己実現の欲求:最終的に自己実現に至るという欲求
→自分のルール中で尊厳をたもったまま死んでいく予定であった主人公が、あらゆる崩壊により認知する世界が歪んでいく。
これらの欲求とその裏返しの恐怖がこの作品の根底に流れる。時には虚構に欲望が見えることもあれば、恐怖(敵)が現れる。はたまた時には、現実に欲求を過剰に刺激するものがあれば現実に絶望する。
この虚実の入り乱れを、吉田大八監督によって見事に描く。
そんな崩壊した主人公が納屋という子宮で空襲を聞きながら飛び出し敵と向き合うラストも秀逸であった。
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