劇場公開日 2025年1月17日

敵のレビュー・感想・評価

全235件中、121~140件目を表示

5.0こういう映画が好きなら

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

1週間前にレビューを投稿したのになぜか反映されない...
前にも一度ありましたが、なにかNGワードでも書いたかな?
ということで短めに。

前半は老いていく孤独な老人の切ない日常を描いていて、パーフェクトデイズを思い出してしまった。

後半になるにつれ何が現実で何が妄想かわからなくなり、終盤はいったい何を見せられてるのか理解できなくなる。

と書いていくと、作り手の自己満足的な映画のように聞こえるがそんなことはない。
とても面白い。
いや傑作です。

ただし、こういう映画が好きな人にとっては。

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ジミー

2.0老いの恐怖を経験している人にとってはあるあるネタ的な感じでメタ的に...

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

老いの恐怖を経験している人にとってはあるあるネタ的な感じでメタ的に見ることが出来て面白いのだと思う。そうでは無いので個人的に全く興味を持てず始終眠かった。
 昔の文章をそのまま台詞にしている会話が多い。しかも、意図的ではなく、練習すらしていないのか滑舌が悪く言葉を発することが出来ていない俳優が何人かいる。言葉を発せられないなら、脚本を変えるか俳優を変えれば良いのに。主人公の老後の妄想を俳優なのかよく分からない人がただ演じているのを見せられ続けて退屈だった。
 ただし、日本語が分からない人が字幕で見れば評価は変わりそう。

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TARO

2.5crescendo(だんだん強く)

2025年1月24日
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難しい

主人公の平穏な日常が、じわじわと歪んでいき、
だんだんといやーな奇妙なことが…

最後に、あーなるほどね、ってなるところと
最後まで、…ん?どゆこと?と自分には難しかった。

カラーよりモノクロが合う映画。不気味さも深まる。

主人公のモーニングルーティンの映画予告は面白かった。
ものすごく目玉焼きが食べたくなる…

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summer

2.5なんじゃこりゃ

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

最初は年配男性の一人暮らしの丁寧な暮らしぶりが淡々と描かれていて、
モノクロというより極限まで彩度を落とした映像で、
登場人物もセリフも少なくとにかく眠かった!!!
一人また一人と登場して話は進むが、途中から夢?妄想?現実?ごちゃ混ぜで
なんのこっちゃの世界でした。これがSFというものなのか。
私はSF作品を読んだことがありません。筒井先生の作品も読んだことがありません。
知識がないからか理解できない。。。
最後なんてもう、とんだ安っぽい映画を見せられている気分。

筒井先生が以前、関西ローカルの番組にコメンテーターとして出演しており
いつも最後に確信をつく一言や粋な一言を仰るのがとても面白く好きでした。

だけどこれはよくわからなかった。原作を読んでみたくなりました。

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mameta

2.5「PERFECT DAYS」と表裏一体

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

「PERFECT DAYS」がしっくりこなかった人が見る映画なのかも。
だが、どちらも一面だけのズルい映画に思えてならない。
「PERFECT DAYS」の役所広司は最後にダイナマイトでも持って国会議事堂に突っ込んでいけばと思うし、今作の長塚幸三は最後はいつも通りに朝食を食べて終わって欲しかったと思う。
筒井康隆を映画にする難しさ、夢映画の難しさを痛感する!

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ケージ

5.0よしだメンタルクリニック

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

人は歳をとるにつれ、ひとつ、またひとつと、大切な何かを失くしていく生き物なんですね。最後に残るのが自分だけってのはリアルです。

全編モノクロの意味は深いですね、作品の構成から細部、小ネタに至るまで面白かった。

【個人的解釈】
全編モノクロなのは渡辺儀助さんの夢だから。
すでに彼は死んでいるため、故人のラスト4Seasonに見た夢を描写したものと解釈しました。死にゆく己を夢見し、死後の己なき我が家を夢見する。こう解釈すると合点がいくのだが・・・どうなんだろう

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ちゆう

4.0朝から米を研ぎ、鮭を網で焼く…というような老インテリの絵に描いたよ...

2025年1月24日
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鑑賞方法:映画館

朝から米を研ぎ、鮭を網で焼く…というような老インテリの絵に描いたような丁寧な隠居生活が壊れていく。老後の資金、老いらくの恋、希死念慮、健康不安それらがすべて「敵」として包囲してくるような息苦しさ。あれほど端正な老後を過ごしていた人が、それでも老醜をさらしてしまう無惨。悲惨なだけではなく笑いもふんだんにあるのだが、歳が近いわけでもないのに、何故か酷く共感性羞恥のようなものまで感じてしまう。それでもなんとか最後まであがき続け、決して誰も勝てない戦いを耐えきった…結末にはそんな尊ささえ感じてしまった。

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sugsyu

4.0結末は???だが、確実に面白かった!

2025年1月23日
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鑑賞方法:映画館

興味を惹かれるストーリーで「この後どうなるんだ?」という展開が終始続きました。
ラストは視聴者に委ねれた形だと思いますが、映画としては面白かった。

元大学教授で慕ってくれる元教え子もいて、雑誌の連載があったり、手の込んだ料理を作ったりで毎日がそれなりに充実している。
いわゆる勝ち組の知的階級の年金生活者ですが、やはり高齢者の一人暮らしは孤独なんですね。

目を引く場面ではカラーになったり、人物の何気ない登場シーンがハッと驚くような撮り方をされていたり、モノクロ映画の良さを活かした演出が斬新でした。

ホラーかと言われればそうでもない気がしました。
確かに「敵」が日常の中でだんだんと近づいてくる描写があって、怖さを感じる場面もありますが、過去の思い出や妄想の中の人物のぶっちゃけた発言がコミカルで、見ててクスリと笑える場面も多かったです。

だんだんと近づいてくる「死」が敵そのものだったようにも思えますね。

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ジュンヤ

5.0老い

2025年1月23日
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鑑賞方法:映画館

 おっとりした時間が徐々にすり減っていく。
 元フランス文学の教授の渡辺儀助は自分の貯金残高に残りの時間を合わせながら悠々とした時間を過ごしていた。同時に彼の崩壊もゆっくりと忍びこんでいく。
 細部まで気を配られた日常が、儀助が孤立していくごとに噛み合わなくなっていく。連載の打ち切り、友人の死、女、老化、敵。
 アケルマン的な淡々とした時間がだんだんとリヴェットの世界のように壊れていくサスペンスはたまらない。
 白と黒だけの色彩設計はよく練られている。敵は黒だ。それに注目して見ても面白い。単純に映像だけを味わおうとしても、コントラストがはっきりしつつ、グラデーションもきめ細かいモノクロ映像は興奮させられる。
 食事と排泄、睡眠、セックス。人間の罰が作品全体にきちんと並べられていて、生のあり様が老いを際立たせている。儀助の欺瞞と虚飾に満ちた死生観がハリボテであることが暴露される。
 コルドリエ博士にも似た儀助の妖しい妄想の旅は映画としてこの上ない。
 満点。

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悠

3.5ホラー映画かな

2025年1月23日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

原作は筒井康隆だったのですね、どおりで
前半は妻に先立たれた男の私生活を覗き見
自炊のご飯はどれも美味しいそうで…
題名である「敵」の気配すら無く淡々と過ぎていく
ところがある時変なメールが届き
次第に展開がおかしくなっていく
教え子やら、Barの女の子やら、妻やら
男の妄想も交えつつ
誰もが老いと戦って生きているだろうし
この先老いていく自分のことも考えさせられる
ちょっととゾッとするストーリー
最後まで観れば敵の正体はわかります

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かちかち

4.0静か過ぎる恐ろしき日常

2025年1月23日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

主人公の淡々と過ぎ去る老後の毎日の生活。

雑誌の連載とギャラ10万円の講演活動が生きる糧となってるかのような。

しかし、高値のギャラ故に講演会からはお声が掛からなくなっており、唯一の雑誌の連載が終わりを迎える頃、主人公の生活スタイルがグラグラと揺らぎ始める。そう、ずっと夢と現実をさまよい続け、がんじがらめで抜け出せなくなっているかのような…。あのエピソードもあのエピソードも、あの登場人物も全て妄想だったら…。

モノクロの映像も相まって、最後には背筋がゾッとしました。

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リオウリオウ

3.5不安と晩年

2025年1月23日
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鑑賞方法:映画館

『ファーザー』や『VORTEX』をみたときにも思ったけど、晩年を描く映画は、つねにぼんやりと靄のような「不安」にくるまれている。
人生の終わりかけにもひとは不安から解放されないのか、と思うとすこしうんざりしてしまう。

この映画でも、きちんとした清潔な生活に少しずつ不安は入りこんでくる。あまり感情的にならず、おろおろと夢と現にふりまわされる老紳士をものすごくていねいにみせる。
老いそのものが敵だとは思いたくないけれど。

最後に読み上げられる文章がとんでもなく押しつけがましくて、彼の人間性がそこにみごとに集約されているなあと思った。

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kikisava

5.0老人映画の傑作

2025年1月23日
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鑑賞方法:映画館

この映画の素晴らしさは他の方が語ってらっしゃるとおりだと思います。
夢精して白いじじ臭いパンツを洗うとこが…悲しい

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Ferma

ジイサンの心臓には毒

2025年1月23日
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鑑賞方法:映画館

 仏文教授の職を辞し、妻に先立たれて一人で暮らす男に忍び寄る「老い」を少し可笑しなホラーの様に描く筒井康隆さん原作の物語です。清濁も、高尚さもスケベな下心も、下らぬ妄想も現実も、冴えたモノクロ映像で目が離せない不思議な静謐さと共に描かれます。それだけに、正体不明の「敵」と思われる存在の映像が終盤に現れたのは残念でした。何なのか分からぬままで静かに終わってよかったのではないかな。それにしても、瀧内公美さんの艶っぽい眼差しは還暦過ぎたジイサンの心臓には毒だわぁ。

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La Strada

2.0教授は何回も寝る、私も何回も寝た。話が難解で寝る

2025年1月23日
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教授が寝すぎで幻想が多すぎて意味が分からなかった。
オチが夢、幻想だったという短絡的な映画が私は嫌いです。
お客さん多数寝ているじゃないか。

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チャーリー

4.0一人の人間を覗き見るような

2025年1月23日
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鑑賞方法:映画館

前半と後半の空気の対比が面白かったです。

前半は、「PERFECT DAYS」を思わせるように淡々と空気が流れていきました。それは私にとっての将来の過ごし方の理想でした。最低限の消費、関わりとしながら、食にはこだわり、会いたい人には会える、そんな毎日。

一点して後半は、突然あらわれた、夢と現実を交錯させる「敵」に静かに怯える毎日に変容しました。何となくそんな敵が来訪することも許容しながら(どちらかというと待ち望んでいたか)生活していたはずなのに、実際に訪れると慄いてしまう、そんな現実、そんな「恥ずかしくて面白い」人間というものを、冷静に見せつけられた気がします。

作品の世界観自体がフランス文学のようでしたし、映像も日本でないどこかを思わせてくれました。

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Eiji

4.0マズローの欲求五段階説

2025年1月22日
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丁寧にと言えば聞こえは良いが、他者の意見を受け入れない自分のルールでガチガチの独居老人の崩壊の要素をマズローの欲求五段階説から観察したい。

生理的欲求:生存のための基本的な欲求で、食欲や睡眠、呼吸、性、苦痛回避など
→前半では飯テロの如く旨そうな調理シーン、朝は目覚ましもなくベッドで6時ちょうどに起き、健康診断に行かないという苦痛回避。かつての教え子に感じる色香に陽気になる程度の理性をたもつ。
これが、カップ麺あんパン、酒と血便で壊される睡眠と健康。通院による苦痛。生徒への内的理性の崩壊。

安全の欲求:心身の安全性を確保したいという欲求で、健康や経済的安定性、社会福祉など
→月間の収支から貯金がそこつく日を計算することで、経済的な安定、入院等の健康寿命問題からの解放、死する恐怖のコントロールを図る。しかし女学生への援助により切り上がるXデー。

社会的欲求:集団に所属したい、仲間を得たいという欲求。家族や友人関係、企業などの組織などが含まれる。
→配偶者の死も乗り越え、行きつけのバーで会う友人との会話もある。そこから、友人は死に
妻への後悔が噴出。

承認欲求:仲間に自分の実力を認められたいという欲求
→教授として尊敬され、講演をし、連載をもち対価をもらう。バーであった女の子には権威を認められた上で尊敬される。そもそも家を守っている。という状態から、講演依頼はなくなり、連載は打ちきり、渾身のフレンチを振る舞う人もいなくなる

自己実現の欲求:最終的に自己実現に至るという欲求
→自分のルール中で尊厳をたもったまま死んでいく予定であった主人公が、あらゆる崩壊により認知する世界が歪んでいく。

これらの欲求とその裏返しの恐怖がこの作品の根底に流れる。時には虚構に欲望が見えることもあれば、恐怖(敵)が現れる。はたまた時には、現実に欲求を過剰に刺激するものがあれば現実に絶望する。

この虚実の入り乱れを、吉田大八監督によって見事に描く。
そんな崩壊した主人公が納屋という子宮で空襲を聞きながら飛び出し敵と向き合うラストも秀逸であった。

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さいてょ

4.0内なる敵

2025年1月22日
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鑑賞方法:映画館

2024年度の東京国際映画祭でグランプリを受賞した本作。正直、同映画祭のことは国際映画祭とは名ばかりのショボイ邦画宣伝会程度にしか思っていなかったが、あまりのこの「敵」という映画の素晴らしさに、映画祭の評価も上昇してしまった。これは本当に取るべくしてグランプリを取った映画だ。

冒頭、フィックスのカットを繋ぎ合わせて、主人公渡辺とその邸宅が詳らかに語られていく。どこにでもあるように見えて、そこしかカメラ位置は無かったのだと思わせるようなカットを、そこで切るしか無かったのだろうと思わせる編集に、いかにも邦画らしい心地良さを感じる。映画の文法を熟知している者が目論んだ、圧倒的なオープニングである。
それから物語は進むことも留まることも無く、渡辺の生活の記録の間に、迷惑メールや井戸や犬のフンなど幾つかのエピソード
を交え、それらが絡み合うことも互いに拒絶することも無く、確かな日々を映し出していく。
そこに2人の女性が介入してくることで、映画が動き出す。
2人の女性はそれぞれ違うベクトルで渡辺の人生に変化をもたらす。それが渡辺に「敵」を意識させるキッカケになる。

「敵」とは結局何なのかは、見る人によって感じ方が全く違って来るだろう。映画の終盤で敵は、思った以上に具体的な姿と、確かな敵意を持って襲って来るが、渡辺が劇中で自覚していたように、それが現実のものでは無いことも間違いない。
そのように具体的に顕現させてしまうに至ったのは、劇中で丁寧に描かれる渡辺の内にある様々な感情。そしてそれ自身が渡辺の生活に対する「敵」ということな気がしている。

思ったが、映画を1回見たくらいじゃ「こんな映画だった!」というような映画の全体は全くもって語れない!

(随時加筆予定)

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スライム

4.5迫り来る敵

2025年1月22日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

吉田大八監督最新作。
この言葉だけで生きる意味が見い出せる。そのくらい好きな監督。とは言っても「騙し絵の牙」しか見たことがなく、好きを語るにはあまりに浅はかな新参者なんだけど、あの作品で受けた衝撃は相当なもので、見事すぎる原作改変が4年前の映画にも関わらず未だに頭から離れない。

本作「敵」は情報解禁されてから鑑賞に至るまで、キャストやモノクロ映像であることを除いて、内容に関することはほとんど取り入れず、更には予告も見ずで劇場へと足を運んだ。というのも、「騙し絵の牙」では予告からの想像と大きくかけ離れた作品であったことから面を食らってしまい、初見では思うように楽しめなかったという経験があったから。予告は出来ることなら見るものじゃない。あの作品からの教訓です。

上映館が少ないため、遠方まで赴き遥々鑑賞してきたのだけど、今回も吉田大八節全開のホントにホントに素晴らしい映画だった。しばらく席を立てないほどの衝撃とスタンディングオベーションを送りたくなる感動。いやいや、とんでもないな...。
東京国際映画祭で19年振りに日本映画がグランプリに輝いたのも納得の出来。なぜ上映館が少ないのか。なぜこの映画が100館に遠く届かず、「ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い」が300館を超えていたのか(言わないであげて)。Filmarksでは話題の映画として常に上位になっているとはいえ、劇場の入りが少ないのはなんとも悲しい。この傑作を映画館で見らずしてなにを見る!

もう何から賞賛すればいいのか...。
まずポスターを見てもわかる通り、本作は全篇モノクロ映像。近年の日本映画でモノクロームと言えば「せかいのおきく」が記憶に新しいが、あの作品とは違い、舞台設定はMacBookも悪質な迷惑メールも存在する、我々が今生きる現代。それじゃあなんでこの技法が使われているのか。
物語はなんとも美味しそうな朝ごはんから始まる。77歳男性の一人暮らしとは思えない、生活の質の高さ。白黒なのにお腹が空いてくる。これ、色があっては意味が無いのではとも思えてくる。たった2色で構成されているからこそ感受性が豊かになるし、自然と心も満たされていく。質素な絵に抱く、鮮やかな感情。まさに、主人公・渡辺儀助の生き方そのもの。

この例え、あまりにしすぎているから言葉にするのは気が引けるけど、本作こそ「PERFECT DAYS」と最も近しく、むしろあの作品の先を行く「PERFECT DAYS2」のように思える。ただ、あの映画は時間をたっぷりと使って生きる幸せを噛み締める主人公の話だったが、本作では残された時間を考えながら近付いてくる死に立ち向かっていく主人公の話で、近しくも遠いテーマ性だった。比較するとかなり面白い。
あれもこれも、同様に現代人の生活を問うような話だけど、2人の考え方はまるで違うように感じる。喜びを感じる瞬間は似ているけど、そうする理由は異なる。1年と少し前は平山の生き方に感銘を受けたが、渡辺の考え方にも共感を覚える。

『健康診断は人間を健康にしないよ』
『残高に見合わない長生きは悲惨だから』
『君もあと何年生きれるか計算してみるといい。不思議と、生活にハリが出るから。』
これらの言葉が凄まじく強く、胸を打った。自分の考え方を彼が声高らかに代弁してくれたようだった。馬鹿げているかと思われるかもしれないが、私も彼と同様に病院をできるだけ生活から遠ざけている。それは決して診察が注射が場所が嫌なのではなく、定められた命を無理矢理延ばすという行為が到底理解できないから。人間いずれかボロが出る。綻んでいく。一時的なものはまだしも、長期的な治療はそれを否定する行為だと感じてしまう。
ただこれも、愛する人となるとそうはいかないもので。大好きな人はずっと長く生きて欲しいし、健康でいて欲しい。それもまたエゴなのだろう。1人が悲しいという嘆きなんだろう。妻に先立たれて立派な日本家屋に1人で生活する渡辺を見ていると、羨ましくもなんだか未来の自分を見ているようで寂しくもなった。

渡辺儀助という1人の男が生活するだけの108分間。日常の中にカメラがある、そんな映画であるため、彼の登場しないシーンは無いと言っていいほどなのだけど、永遠と魅せ続けられてしまう。
長塚京三。77歳にしてこのカッコ良さ。「お終活 再春!人生ラプソディ」での色気も半端じゃなかったが、今回はもっとすごい。主人公の生き方を真似するかは別として、長塚京三のピシッとした姿勢や佇まい、そして心の余裕を感じさせる話し方は是非とも私生活に取り入れていきたい。こんな老人になりたい。いや、老人というにはカッコよすぎる。
この映画の鑑賞を迷っている人はYouTubeで日本外国特派員協会特派員協会 記者会見の動画を見て頂きたい。彼の魅力を知ってしまうはず。本気で惚れてしまうんだよなぁ...。

この「敵」というタイトルが鑑賞後じわじわと効いてくる。なんて秀逸なんだ。一体全体、私はどうしたらいいのか。《敵》にどう立ち向かっていけばいいのか。この〈敵〉の正体はなんなのか、それは作中で明言されているわけではなく、見る人の捉え方次第といったところ。
味方が敵へと変わる瞬間。その敵が自身を襲いかかる時。誰も何も待ってくれない。ただ、それはひたすら自分に迫ってくる。生きとし生けるものが逃れることの出来ない恐怖。これまで客観的に映し出された主人公が、急に一人称視点として主観的に映し出された時、これは彼の物語ではなくみんなの物語なんだと恐ろしくなる。構成の妙。季節の移り変わりもゾッとする。

長々と語ってしまったが、正直まだ足りないくらい。それほどこの映画は底知れず、一生かけて読み解きたくなる、かつてない面白さがある。見る読書とでも言おうか。1本の映画にしては満足度の高すぎる、噛みごたえのありすぎる作品だった。
ここで点数をあげすぎちゃうとここからの楽しみが薄れてしまう気がするのでこの辺で。また必ず会いに行きます。面白すぎて無心で映画館を出たもんだから、パンフレット買うの忘れてたじゃないか。

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サプライズ