敵のレビュー・感想・評価
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老後の男性一人暮らしの理想系かと思いきや
長塚京三は自殺未遂のシーンで本当は亡くなっていたんでしょうか。その後は「アザーズ」のように死者の世界から見た生者と、亡霊が入り乱れた世界が展開されていく。
敵とは死なのか老いなのか?
色々と解釈出来そうですね。
敵とは
起床して、朝食を作って、豆から挽いたコーヒーを入れて、歯磨きするシーンが淡々と続く。何か「PERFECT DAYS」を観ているような感覚になる。
男の一人暮らしは、臭くて汚くなりそうですが、清潔さを保つには、使ったらすぐ片づけることが重要だなと思いながら観てました。
フランス文学の元教授で、人生経験も豊富な初老の男性。でも、女性への欲望は年老いても全くなくなるものではなく、詐欺に遇ったり夢精したりで、実際には情けないことも多くあるもの。判断力も衰えてくるのでしょうか。
規則正しい生活を送っていたが、老化が進んでだんだん生活が乱れていく。
タイトルの「敵」とは老化やその先に迫って来る死を指しているのでしょうか。
裏・孤独のグルメ。
素晴らしい!長塚京三で主演男優賞は決まり!
若い俳優が活躍する映画界で、久し振りにベテランの味を見せてもらった。一つ一つの動きや演技がとても自然で、演じているのに、演じているように見えない。前半は役所広司のパーフェクトデイズのようだったが、役所より上手い。そこにいるのは、年老いた一人の元大学教授だった。
敵が来るというメールが届いた辺りから、現実と夢の世界の境目がつかなくなり、さらに戦時中の胎児の時の記憶が混ざり込んだようだった。この夢は死の間際に見た夢なのか? 敵とは何か。老いなのか、死なのか、理性でコントロールできない性欲なのか。この作品を見た人と語り合いたいが、その敵は私自身が恐れているものかもしれないと思うと、自分をさらけ出すようで恥ずかしい。夢精した後のパンツを、母親に見つからないように洗って、洗濯機に入れたときと同じぐらい恥ずかしい。
エメロン石鹸はあまり泡立たないイメージ
東京国際映画祭のグランプリと監督・主演の3冠で吉田大八監督は山上たつひこ原作の「羊の木」がすごく面白かったので今回も筒井康隆原作だし期待しまくって観たのだがちょっと肩透かしをくらった。77歳で元大学教授の独居老人が自分で食事を作り食べ歯を磨きというまるで「PERFECT DAYS」な日常ルーティーンが繰り返し描かれ今回は流石にタイトルがタイトルだけにどこで物語が動き始めるのか、ああここで動くのかいや動かない、今度こそ…で動かない。筒井康隆先生が65歳のときに書いた終活物語で私も今その年齢なのでとても身につまされるのである。好きなものを食べたり外で飲んだりは節約せずにわずかなに収入と預貯金と生活費からXデーを計算すべしというのだ。20代でヴィスコンティの「家族の肖像」を繰り返し観た(なんとこの映画のコンテを作れというふざけた課題を出す講師がいた)のだが若者にはこれっぽっちも共感できるわけがなく、夜中に必ず目覚めてしまうこの歳になってやっとバート・ランカスターが演じた老教授の気持ちが分かるようになったことよ。それで肝心の「敵」はというと…夢落ちと妄想をエンドレスに繰り返すメタフィクションなのだ。
そもそも敵とは?
タイトルだけでは、「てき」なのか「かたき」なのかも分からず。あらすじを読んで、「てき」なんだなと解釈したうえで、ちょっと面白そうと思った。時代劇でもないのに、モノクロであることにも興味を持った。
…が、始まってしばらく、ただの老人の日常をモノクロで見せられている。しかも、全部、夢っぽい。こういう言い方は、偏見かもしれないが、男って、いくつになっても現役だな…とも。ずっと、暗い画面を見ていると、やばい、このままじゃ寝てしまうと心配もした。
思っていたよりも、「敵がやって来る」のメッセージが来るまで、時間がかかった。階段で、敵らしき者たちが、うわーっと押し寄せてきた時、恐怖を感じた。これ、カラーだったら、そんなに恐怖を感じなかったかも。モノクロであることの意味は、こういうことなのか?と思った。
見終わっても、いまいち、意味がわからず…。みんなのレビューを読んで、「死」とか「老い」とかって言葉を見て、なんとなく理解した感じかな。
しっかり予習していきました…
どうせ難解で、初見で理解できないだろうとおもって、原作をしっかり読み込んで予習をしました。
そのうえで、敵とは、死のことだと理解したうえで映画を観賞しました。
ただ、原作を読んでも、儀助はどの段階で亡くなったのだろうとはっきりしませんでした。
もしかして、冒頭からすでに亡くなっているのではと思いましたが、確信が持てませんでした。
しかし、映画を観賞して、儀助は冒頭から亡くなっていたと確信しました。
カラーでも全然問題ないと思えるのに、あえてモノクロにしたことと、最後の最後のシーン、一瞬蛇足と思いましたが、儀助の死を象徴する監督の親切と受けとりました。
いやいや、ただあなたが鈍いだけです。やっぱり蛇足だよと、いわれる方も大勢いそうですが…。
それにしても河合優実はよかったね。あんのこといらい気になっていました。
ファンの人たちにはしかられそうですが、かわいすぎず、美人すぎず、ちょうどいいのだよね。蛇足です。
それにしても死を敵とみなしてしまっても、勝てるはずはないから、不毛な戦いとなるよね。
結局、死を恐れおののく老人映画という結論になってしまうのだろうか?
ちょっと、背筋が凍るし、残念に思う。
でも、映画は傑作だと思います。
「敵」は老いとその先にあるもの
見ていてすぐ、認知症か統合失調症の人の、時間経過とともに症状が進んでいくさまなんだろうと思った。
高名な仏文学者で元大学教授、インテリで穏やかで、長身、体格も姿勢も良い絵に描いたようなダンディーな老人が、夏から、変な夢を見るようになり、季節を追うごとに頻度も奇妙さも増していく。
本人も、事実ではなく「夢」だというのは自覚があるが、どこからが現実でどこからが夢なのか、分からなくなってくる。
そして、春が来る頃には、「敵」に追いつかれてしまった。
眼の前で展開する出来事は、老・元教授の、妄想と現実が入り交じった脳内現実なのだろう、今まで生きてきた中の、願望や、後悔、後ろめたさや諸々の感情が半端にリアリティを持って奇妙な形になって現れているよう。
「敵」が北からやってくるというのは、老元教授の中での仮想敵が某北の将軍様の国らしいのがちょっと笑える。
時間の経過とともに、妄想の割合が多くなっているのが分かる。
老元教授の生活が几帳面で丁寧で、掃除も洗濯も手慣れており、特に食生活は自分一人のために朝食にわざわざ魚を焼き、コーヒーは豆から挽いて、ただの昼ごはんのそうめんに、すり鉢で胡麻をすり、冷麺には卵をひとつだけ茹でる。一人の晩酌のためにレバー買ってきて牛乳に浸けて臭み抜いて、ネギ切って串に刺して網出して一人焼き鳥には脱帽。
都会に古くて広い一戸建てを所有、仕事はあるし教え子やら編集者やら、ヒトは来るし、馴染みのバーはあるし悠々自適な、それこそ「Perfect Days」じゃないかと思った。どこまでが彼の脳内現実か分かりませんが。
春になったら、みんなに会える、ってつぶやくが、春のお葬式には一人の教え子の姿もありませんでした。。
もしかして、全部が妄想⁉️。。
老境に差し掛かった人なら、我が事として切実に理解する映画。
若い人には何が何だか❓ だと思います。
長塚京三が、まるで当て書きのようにぴったり、良いキャスティングでした。
そして、お腹が空いている時に見てはいけない映画と思いました。
飯テロですから。
見事!長塚京三
長塚京三という素晴らしい役者が
日本にいたことを、改めて知らせて
もらった映画です。
物語は、77歳の元大学教授
(仏文)の一人暮らしの優雅な日々の
前編と、不穏なメールをきっかけに
襲いかかる夢幻、妄想のシーンが
続く後編で構成されている。
原作者の筒井康隆氏が「映像化は無理だと
思ったが、すべてに渡り映像化してもらった」
と絶賛。
僕は小説は読んでないので詳細はわからないけど
ユーモア、老いへの恐怖、愛欲への僅かな執着を
とにかく長塚さんが自然に見事に演じる。
身長181、ソルボンヌ大学留学、現在79歳の
この俳優にぴったり、堂々の主演作だ。
もちろん監督の吉田大八の力はいうまでもない。
「敵」とは何か。
本作を観た人と話をしたくなる映画です。
老いを研ぎ澄ます。
夢
どう感じてよいか…難しい作品
モノトーンの映像で現実と妄想の線引きがなく、不思議な感覚になる作品でした。やがて迎える死への『寂しさ』と『淋しさ』の狭間の孤独と欲望が『敵』という形で表現されてのは興味深い視点でした。自分が77歳になったら理解できるのでしょうかね。
何はともあれ、叱られたい爺さんなんだなあと思った
2025.1.21 イオンシネマ京都桂川
2025年の日本映画(108分、G)
原作は筒井道隆の同盟小説
Xデーを設定した元大学教授の晩年を描いたスリラー映画
監督&脚本は吉田大八
物語の舞台は、都内某所
フランス文学の権威でもある元大学教授の渡辺儀助(長塚京三)は、妻・信子(黒沢あすか)に先立たれて以来、ずっと一人暮らしをしてきた
彼は、預貯金と年金、日々のランニングコストを計算し、「Xデー」なるものを自分で設定していた
ある日、儀助が物置を整理していると、荷物が崩れて色んなものが散乱してしまった
教え子の小道具屋・椛島(松尾諭)に荷物を整理してもらっていると、彼は庭に枯れた井戸があることに気づく
頼んでもいないのに、椛島は何としても復活させたいと意気込んで、知り合いの井戸掘り名人に声をかけると息巻いてしまう
その後、夏も盛った頃、儀助のところに教え子の靖子(瀧内公美)がやってきた
約束を取り付けていたとのことだったが、儀助は曜日を勘違いしていたようで、簡単な食事とワインでフランス文学談義で時間を過ごすことになった
酔っ払った靖子はソファで寝てしまい、儀助は良からぬことを考えるものの、彼女はあっさりと終電に乗って帰ってしまった
また、別の日には、行きつけのバー「夜間飛行」にて教え子のデザイナー・湯島(松尾貴史)と飲んでいると、バーの姪っ子の大学生・歩美(河合優実)を紹介される
彼女もフランス文学を専攻していて、別の機会に文学談義をする機会を持つことになる
だが、その際に彼女が学費を滞納していることがわかり、再び儀助の中で良からぬ考えが生まれてしまうのであった
映画は、そんな日常を過ごしている儀助の元に、迷惑メールが頻繁に届く様子が描かれていく
「当選しました」とか、「お金を受け取ってください」とか、「どこかで暴動が起きて危険です」みたいなものまで多彩だった
当初は無視していたものの、しまいには「敵について」という意味不明なものまで送られてくるようになった
儀助は意にも介さなかったが、ある日を境に「敵」について思いを巡らせることになり、いつしか自分の中の一部のようなものになってしまっていたのである
原作未読なので比較はできないが、映画を観た感じだと、ほとんどが老人の妄想なのかな、と思った
大体のシーンは夢だったという感じに描かれていて、椛島や湯島のパートは現実っぽく思えるのだが、それらも全部妄想か何かであるように思う
Xデーを決めたものの、そこに向かうに従って怖くなってしまうし、破壊的な願望に身を投じてしまう
儀助の時代の仮想的な「敵」は「北(中露)」のことだが、最終的に自分を破壊してくれるものは「暴力」だと考えているのかな、と思った
いずれにせよ、フランス文学について全く知らないと会話劇を流すことになると思うものの、そこまで支障を感じたりはしなかった
予告編で強調される「敵メール」も、儀助の日常を壊すもののメタファーの一つに過ぎず、それゆえに前半の「超日常パート」というものがあるように思えた
このシーンを退屈と思うかは人それぞれだと思うが、興味深く観察をすると、妄想との対比としてのルーティンが見えてくる
彼の日常のほとんどがルーティンワークで、外的な刺激以外はそれを乱すものがない
だが、一度それらを乱されると苛立つ性格をしていて、特に筆を止められる時の態度に顕著なものが出ていた
そう言ったことも相手の前では出さないのだが、こと妄想になると自由になるけど、最後まで行かないところに彼の弱さというものがあるのだろう
経験則から紡がれる妄想は最後まで行き着くけど、そうではないものは続きを描けない
そう言ったところに儀助の限界と性癖が隠れているのかな、と感じた
「老い」とは何か
Lewy小体型認知症か
映画はよくできていてとても面白い。モノクロームも美しい。主人公のつくる食事がまるで色鮮やかに美味しそうに見える。
一方、脳外科医の視点でみると、主人公はLewy小体型認知症と考えられる。幻視とレム睡眠行動異常がある。ちなみに松尾貴史はおそらく脳ドックで脳動脈瘤が見つかって血管内治療したがうまくいかず意識障害と失語症を後遺したと考えられる。
つまり、この映画は虚言癖のある女に詐欺に遭ったLewy小体型認知症の元仏文学大学教授が、数多くの幻視など様々な症状を発症しながら亡くなるまでの様子を描いているといえる。そう考えると、それはそれでとてもよくできている。
人生の敵とは老いと後悔
儀助は「残高に見合わない長生きは悲惨だから」などと人生の終いをさも受け入れたようなことを言いつつ実は「老い」に争って生活をしている元フランス演劇(文学)の教授である。
食事は質素だけれどもみすぼらしいものではないし、服装を整え、体臭にも気を配る。
公演料の値は下げないし、雑誌の連載も抱えていている。
そしてまだ性欲も枯れていない。
そんな儀助の日常が揺らぎ始める。敵(老い)の存在である。
バーで知り合った娘に金を騙し取られ、馴染であったそのバーも閉店してしまう。
連載の打ち切りを告げられ社会的な存在意義も失う。
そして健康への不安(キムチを食べたぐらいで下血して内視鏡検査)。
一気に押し寄せてきた「老い」と環境の変化が彼に過去への後悔を蘇らせる。
先だった妻との生活、教え子との実らぬ情交…。
彼は「敵」と「後悔」に抗おうとするが圧倒的な力でそれらは彼に迫ってくる。
生前、彼は自分の財産を周りの人間(教え子たち)に託そうとする遺言書を用意していた。
しかし、死を身近に悟った時、甥に全財産を託すよう遺言書は書き換えられた。
※しかもかなり贅沢な希望を交えて
結局、最後は身内なのである。そしてそれが現実の世界で確実に存在した人間だから。
人間は老いはゆっくり進むと思っている。
しかし、実際にはあるきっかけで老いは一気に進むのだ。
それはまるで得体の知れない「敵」が襲ってきた時のように。
「老人文学の傑作」とも評されるこの原作をモノクロ映像で描き切ったこの映画は、東京国際映画祭でグランプリ、最優秀監督賞、最優秀男優賞の三冠を獲得したのも頷ける出色の映画だった。
老人を主人公とした新たな傑作‼️
大学教授の職を引退した主人公が送る晩年の日々‼️講演したり、出版社で原稿を書いたり、元教え子達と交流を持ったり、友人となじみのバーへ行ったり、そのバーのオーナーの姪に金を騙し取られたり‼️そんな時、主人公のパソコンに「敵がやってくる」とのメッセージが・・・‼️その日から主人公が見る幻覚や夢‼️不審人物の群れに襲われたり、大昔に亡くなった祖父が庭に現れたり、同じく亡くなった妻との幸福なひと時・・・‼️これはベルイマン監督の「野いちご」なのかと思ってしまう‼️ところが幻覚と現実が混同してくる‼️亡き妻と元教え子の女性が喧嘩を始めたり、元教え子が出版社の社員を自宅の庭で殺害し、巻き込まれる主人公‼️そして主人公が亡くなり、遺言が読み上げられる時、教え子や友人たちの姿はどこにもない‼️ひょっとしたら、私個人の考えとしては、今作の物語自体が主人公が見た幻覚、または夢だったのかも⁉️引退し、妻を亡くし、誰からも相手にされない孤独な老人が見た壮大な夢物語‼️今作での「敵」とは、主人公に忍び寄る幻覚や認知症などの「老化」なのかも⁉️そう考えると、実に恐ろしい映画‼️そしてラスト、主人公の自宅を受け継いだ青年は、主人公の幻影を見る‼️主人公が祖父の幻影を見ていたのと同じように・・・‼️
考え始める時期かもしれない
長塚京三は「恋は、遠い日の花火ではない」っていうCMやってたんだよね。
調べたら1994年だって。
そのときも「長塚京三ならそうだろうけど、普通の人は……」って感じだったんだけど、そこから31年経ってまだやってんのがすげえな。
瀧内公美はすごいね。
年取ってから、瀧内公美が家に遊びに来たら、そらよろめくわ。
河合優実には引っ掛からない。若すぎるよね。
長塚京三は功成り名を遂げて、気に掛けてくれる教え子もいて、それ以上を望んだら贅沢じゃんという感じもすんのね。
でも、輝かしいポジションから突然降りた人の方が、身の振り方が難しいっていうから、余計に厳しい状態だったのかな。
それで、長塚京三はカッコつけたことばっかり言うんだよね。
妄想でいっぱいなのに、瀧内公美や河合優実にはいいかっこしようとして。《失われた時を求めて》の料理を練習してるの見ると「これは、カッコ悪い……けど、やっちゃうなあ」って感じなの。
死ぬのもウダウダ言って「未練ないんだよ」って感じにしてんだけど、全然そんなことないんだよね。
それでももがいて最後になって『みんなに会いたい』って素直になったところで、お迎えが来るの。
ストーリーは途中から夢が連発されて、不条理化されてくね。
『敵』はなんなのさっていうと『老い』で、逃げようとしてるうちは駄目なんだよね。
よし、戦うぞってところで負けて終わりだったけど。
どんどん不条理の幅が大きくなってくところが「さすが筒井康隆」って感じなんだけど、それを映像化した吉田大八がすごいね。今回は脚本もやってんだね。すごい。
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