劇場公開日 2025年1月17日

「是非もなし ならば死ぬべき時に死なぬは恥よの」敵 HAL-9000さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0是非もなし ならば死ぬべき時に死なぬは恥よの

2025年1月26日
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鑑賞方法:映画館

若い人、人生折り返しを迎えた40代以前の人には意味が分からない映画でしょうね。
老人にとっての「敵」とは? 貯金残額?、病い?、死?、孤独?それらが北から進軍してくると言うメタファーなんでしょうか。自分から近づいている筈なのに、自分は変わらずにここにいて向こうから近づいてくると言う錯覚。
世の中にはモノクロでしか夢を見ない人がいると聞いてびっくりした事があるのですが、我々は最初から夢を観せられていたのでしょうか?どこから現実でどこから夢なのか。
明らかに明晰夢と分かるシーンもありました。明晰夢を現実世界に活用する研究も、現在盛んになされていますが、そうなってくるともはや夢の世界と現実世界は地続きと言えなくもないですね。
目を背けたくなるような老人の性の生々しさ。「清貧なんてものに幸せはないんですよ?」と告げられる絶望感。しかも否応もなくこれが現実という残酷さ。俗っぽさこそ人間の本質と言わんばかり。ここら辺の描写は原作者大好きですよね。長塚京三がその役どころにすごくハマっていて、とても良かったです。

暫くしてから、この人の「死に時」とはいつだったんだろうな?と考えていた。大学教授を退官した時?奥さんが亡くなった時?誰にだって死に時は存在すると思うけど、殆どの人はそのタイミングを逃しているんじゃないかと思う。もちろんマスミサイルじゃないけど「死ぬまで生きようとする」だって正解だけど、全ての人に当て嵌まる訳じゃないよね。自分は死ぬべき時を見極めて死ねるだろうか?…いや無理だな〜(笑)

HAL-9000