「日本版ファーザー」敵 ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
日本版ファーザー
2021年に公開されたアンソニー・ホプキンス主演の『ファーザー』が頭に浮かびましたね。
アンソニーには娘がいましたけれど、
本作の主人公渡辺儀助は妻を亡くし、ひとりで暮らす元大学教授。
儀助は孤独ではあるものの、外部との接点はあるんですよね。
編集者、教え子、バーで出会った大学生。
儀助は自分の預金額から、何歳で死ぬというX DAYを設定し、そこに向けての終活をしている。
冒頭は儀助の日常(特に自宅での生活)が淡々と繰り返し描かれ、
食事シーンが多いなと。しかも美味しそうな料理を自炊する儀助はすげぇななんて思いながら
観ていました。この料理と食事シーンはすごく多いし、丁寧に描かれていますね。
本作は夏→秋→冬→春の4篇で描かれていくのですが、
夏は実に普通というか、老いた元大学教授の生活を淡々と描いていて
秋になると、小さいながらもコンフリクトが起きていく、
冬になると、儀助の妄想?が入り込んできて、どこまでが現実でどこからが妄想なのかがわからなくなってきます。
このあたりで、「敵」なんていないんだというのがわかりますし、
私は冒頭に書いた『ファーザー』を思い出してしまいましたね。
あぁ、儀助は妄想に取り憑かれていて、認知症を患ったのだろうと想像した次第です。
そこからは、妄想→ベッドで目覚める→日常→妄想→ベッドで目覚める・・・がLOOPしていき、
観客もかなり混乱していきますが、ラストは儀助の思い通りになって良かったのかなと。
でも、中島歩演じる甥が、儀助の自宅で儀助を見るシーンで終わるのは、なんともホラーな感じがしました。
老いについてあらためて考えさせられましたし、自分も終活をしっかりしておかなきゃ、まわりに迷惑をかけてしまう
なんてことを考えちゃいましたが、
本作、もっと「敵」を具体化した別のカオスに持っていっても面白かったのにと思いました。
いや、むしろそっちを期待していたんだが・・・という。そんな感想です。
やっぱり『ファーザー』の既視感があるというか、オリジナリティという意味では、私は今ひとつ驚きには至りませんでした。
とはいえ、80手前の長塚京三の演技は素晴らしかったですし、
脇を固める瀧内公美、河合優実、黒沢あすか、中島歩、松尾諭、松尾貴史も素晴らしかったです。
とくに瀧内公美のセリフが面白かったです。
久々に先が読めない新作邦画を見た気がします。
とにかく長塚京三さんが素晴らしい作品でした。
ありがとうございます😊瀧内さんのセリフ ズバッと来ましたねぇポイント違ってたらごめんなさい🙇
でも 最後は 今風のセリフ 正確にはアカハラでしょうか 任意で着いてって 今更感ありました。
でも 瀧内さんの妖艶さ【他の方のレビューから拝借】モノクロと相まって ヤラレちゃいそうでした。