「不快なお・も・て・な・し」スピーク・ノー・イーブル 異常な家族 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
不快なお・も・て・な・し
ミヒャエル・ハネケの『ファニーゲーム』を彷彿させる衝撃と言われたデンマーク発胸糞悪系スリラー『胸騒ぎ』のハリウッド・リメイク。
併せてまだ見てなかったオリジナル版も見ようとしたが、いつぞやWOWOWで録画した分が上手く録画されておらず…。
仕方ない。オリジナル未見のままリメイク版見るか…。
イタリア旅行中のアメリカ人一家、父ベン、母ルイーズ、娘アグネス。
イギリス人一家、父パトリック、母キアラ、息子アントと知り合い、意気投合。週末、ロンドンの田舎にある彼らの家に招待される。
おもてなしを受け和やかだった場が、次第に言動に不審さを感じ始め…。
『ファニーゲーム』を彷彿とは、なるほど。
いい人たち、と思ったら…。
予兆はそこかしこに。
初対面時から図々しい。
菜食主義のルイーズに肉料理を振る舞う。
シャワー中に勝手に入ってくる。
パトリックのアントへの厳しさ。躾なんてもんじゃない。
ベンらの前で大声や乱暴に叱責。アグネスと踊れ。上手く踊れず、何度も何度もやり直させる。
“躾”は他人の家族の子供にも。アグネスにも厳しく注意。ルイーズは苛立ちが募ってくる。
さらにはアグネスが寝てるベットに、パトリックとキアラが添い寝。
もう勘弁ならない!
ベンはパトリックらの肩を持ち、ルイーズにあれこれ言う。それがまたルイーズを苛立たせる。
パトリックらが寝てる間に、こっそり帰ろうとするが、アグネスの忘れ物で戻る。
パトリックらと鉢合わせ。嫌なムードがさらにも増して。
パトリックらの言動もさらに強引になってくる。
彼らのこの妙な感じは何なのか…?
ある人物が訴える。
生まれつき舌が無く、上手く喋れないアント。
が、必死に何かを訴えようとしている。
実を言うと、ここで何となく察しが付いた。
パトリックらの目を盗んで、アグネスにある物を見せる。
衝撃の真実、パトリックらの本性…。
何となく予想付いたとは言え、ゾッとする恐ろしさ。
アグネスは両親に伝え、逃げ出そうとするが、パトリックらもこちらの動向に気付き…。
パトリックらの本性。
アントは実の子ではない。本当の両親を殺し、誰かに伝えられないようアントの舌を切り落とし…犬畜生!
今度は女の子が欲しい。その矛先をアグネスに…。
どうやらキアラも元々は犠牲者のようだが、今となっては完全に共犯。
異常夫婦。ルイーズとベンは娘を守り、窮地を脱出する事が出来るか…?
『ナルニア国物語』や『つぐない』の時は好青年だったジェームズ・マカヴォイのサイコ怪演も堂に入ったもの。やはり『スプリット』のインパクトだね。
『ターミネーター ニュー・フェイト』の女戦士マッケンジー・デイヴィスがか弱いだけのヒロインな訳ない。頼りない夫に変わって異常夫婦に対する。
キャストで金星はアント役の子役。虐げられる様は痛々しく見てて可哀想だが、最後の最後に思わぬ行動。
これまでの仕打ちへの恨み!辛み!怒り! が、その絶叫には哀しみを感じさせる。アントはどれほど苦しめられていた事か…。
そのラストはオリジナルとは違うらしい。
こちらはハリウッドらしく、異常夫婦を撃退し、一応ハッピーエンドと取れる終わり方。
ジェイソン・ブラムとオリジナルの監督がプロデュース。ホラーやスリラーに手腕を振るうジェームズ・ワトキンスの演出も上々。
ただそのクライマックスがハリウッド・スリラー/ホラーにありがちな少々中弛み感のあるぐだぐだ攻防劇になってしまってるのは否めない。
もっとこう、胸糞悪さ、不快感を通して欲しかった気も…。
オリジナル版は近年稀に見るバッドエンドらしい。
多分こうなるだろう…と、あれこれ予想立ちまくるが、ネタバレに触れる前に、オリジナル版も早く見なくては!
あ、勿論、このリメイク版も悪くなかったですよ。