「他人には言えない事や想い」山逢いのホテルで TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
他人には言えない事や想い
つい先日に「2024年観納め」発言をして舌の根の乾かぬ内に鳴きのもう一本。昨日配信されたPodcastで三宅隆太さん(映画監督、脚本家、スクリプトドクター)が本年度のベストに挙げられていた本作。元々は自分の鑑賞候補にも入れていなかった作品ですが、興味を惹かれて滑り込み参戦です。シネスイッチ銀座10時40分の回、空いてはいるものの公開5週目にしてはそこそこの客入り。もしかしたら半分以上は同じ番組のリスナーなんじゃないか?と思いながらの鑑賞です。
と言うことで観終わっての感想は、劇場鑑賞して損はない堅実な作品でした。演出次第では単なるメロドラマになり兼ねない内容ですが、ホテル周辺の美しい風景と、抑制の効いた演技は作品として実に品が良く、また大人の恋愛に対する戸惑い、そして家族と言う呪縛と人生に対する悲哀が感じられてしっかりヒューマンドラマに仕上がっています。ただ、共感度という観点では観る側の世代を選ぶと思いますし、また「正しさ」について言及すれば否定的な意見が出るのも理解できます。ですが、それなりの年齢になれば誰だって身に覚えがある「他人には言えない事や想い」に正直な本作、私にはわかりみが深く感じられ、まんまとクロディーヌ(ジャンヌ・バリバール)の人生を賭けた選択に背中を押したくなる心境になるほど。当然、ネタバレは厳禁のため何も言えませんが、ラストシーンも非常に感慨深く最高です。それにしても、メイクによるものなのか、或いは私の気のせいなのか、前半と後半でクロディーヌが全く違って見えるところもジャンヌ・バリバール素晴らしかったです。
どうしても追い切れずに観逃す作品も少なくないですが、この時期はいろんな方の年間ベストに触れられるため、鑑賞欲がいつも以上に触発されます。本作も間に合ってよかった。三宅さん、感謝です。