「誰が見ても満足度の高い映画」シンペイ 歌こそすべて yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
誰が見ても満足度の高い映画
今年8本目(合計1,550本目/今月(2025年1月度)8本目)。
こちらの映画です。
分類上ドキュメンタリー映画ではありませんが、生まれて没するまで、関連する人物とともにその後もえがかれますので、一般的な映画とドキュメンタリー映画の折衷的な部分はあります。よって、娯楽性を求めるならおすすめはできないといったところです。
このタイトルにも登場する方それ自身は知らない方もいらっしゃるかなと思いますが(エレクトーンなりピアノをやっていると必ず習う曲(初級の段階でも弾きうるため)なので、知っている人は知っている)、生涯について知らなかった部分もあったし良かったかなというところです。
また、この当時といえば大正デモクラシーであったり戦前戦中といった、どうしても誰を扱ってもある程度政治色が出てくる映画になりがちな部分はありますが、それらをできるだけ排した部分についても良かったです(参考となる部分は下記に記載)。あくまでも音楽家としての生い立ちや活躍を描いたもので政治思想ほか無関係なものは極力排した一方、生涯を通じて知り合いとなった当時の文豪等有名人との接触についても触れられていて、この時代をさくっと復習するのも良いのかなといったところです。
採点上特に気になる点までないので、フルスコアにしています。
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(減点なし/参考/当時の「映画法」がもたらしたもの)
作品内で「映画を製作~」といった話が出ますが、戦前に「映画法」という法律が制定されたほか、明治後期から大正時代にもそれに相当するような法律はありました。要は、国の気に入らないものは排除するという検閲的な要素が多かった法律です(特に「映画法」に関しては日本を美化する戦争映画を放映しなさいだのといった軍事的な要素が強くなった)。
ただ、「映画法」自体はそうした、日本国憲法のもとで禁止された検閲が平然と行われていたことは事実である一方、当時問題視されていた子役の夜間・深夜労働を禁止するといった条文もあり、「戦後に」(戦中や戦前ではない)成立した労働基準法にも該当するような規定(一定年齢に達さない子の一部を除いた労働の制限)があったように、「現在からみれば」良い面もあったのは事実です。
(減点なし/参考/大正デモクラシー時代と天皇機関説)
この当時といえば帝国憲法の時代ですが、帝国憲法が定まった後も、憲法論で上をいっていたドイツ、フランスの考え方は絶えず日本に流入しており、その中で帝国憲法の条文をかえることなく今の民主主義(国民主権)に相当する考え方がこの当時広まり、法学の世界では当たり前になりました。
つまり、国を法人とみなして国民はその「法人」に協力するもの、またはそのメンバーであり、天皇はその法人としての活動を完全にするための「機械的装置である」という考え方であり、その「機械的装置」というたとえから「天皇機関説」という考え方が生まれました。これは現在の国民主権にほぼほぼ実質相当するもので、憲法学者の間ではこれが当時主流になっており、帝国憲法の文言通りにとった天皇主権説は衰退することとなります(日本が敗戦し、現在の日本国憲法が定まった今となっては過去のお話ですが、そうした時代は日本にも実はありました。映画内で現代(2024~2025)とほぼ変わらない考え方をしている方が多いのは、こうした理由)。