「実話に基づくからこそ考えさせられる」6888郵便大隊 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
実話に基づくからこそ考えさせられる
「実話と生存者の証言に基づく物語」というテロップが最初に出るということは、あの人権感覚皆無の糞レイシストの中将のような上官は、この映画のために作られた人物造形ということではなく、実際に存在していたということでよいのだろうか。
だとすると、誰か教えて欲しい。
なんでそういう人物が出世できるのか、その仕組みと理由を。
(今も「そういう人物」に該当する人物が、あの国やその国の首脳たちを筆頭に何人も思い浮かぶが…)
理念的なことではなく、実務的な面で、心の底から疑問に思うのだ。
つまり、糞レイシストたち自身が、どんな価値観を持っていようが知ったこっちゃない。「ご自分の心の中でご勝手にどうぞ」だ。
ただし、郵便大隊の彼女たちの能力の高さや、あげた成果を客観的に評価できない曇った眼差しは、リーダーとしての資質に決定的に欠けてやしないか。欠けるどころか、それでは正しい戦況判断も出来ない訳で、軍を敗戦に追い込みかねないし、純粋に、処分されるべきはどっちだという話だろう。
糞レイシストの権化の中将に「私たち黒人は、生まれた時からあらゆる前線で戦っている」と毅然と言い放つアダムスの力強さにしびれるし、入隊したてで、制度的な差別に晒される黒人女性たちが「南部へようこそ」と皮肉るタフさもシャレている。しかし同時に、彼女たちにそれを強いている特権性と同様なものが、今現在も自分自身と自分を取り巻く社会の中に残ってはいないかと考えさせられる映画だった。
それにしても、それだけ差別されながら国に忠誠を誓える気持ちって、どこから生まれるのかがもう一つ残った疑問。
上記のように、苦しくなる場面が多い映画だが、リナとエイブラム二人のシーンには胸を掴まれるし、その輝きにキュンとした。演じている俳優たちが、とても魅力的。