劇場公開日 2024年12月14日

「人間らしい生き方のアイヌプリ」アイヌプリ fuhgetsuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人間らしい生き方のアイヌプリ

2025年1月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

アイヌプリをミッドランドシネマ名古屋空港で観てきた。
福永壮志監督の前作、アイヌモシリ(アイヌモシㇼ)がドラマ仕立てのフィクションによるイオマンテだったのに対し、新作では現代アイヌのドキュメンタリーと、着実に現代に生きるアイヌの姿を描いてくれてます。
触れてはいけない現実問題として、過去のアイヌがどうとか、先住民族か否かとか、利権がどうとか、歴史認識や思想的にこれほど複雑に差別されつづけ、なかなか映画として描くことが難しかったのではないかと思うが、やはり福永監督ならではの視点が功をなす撮り方の映画だった。
奇をてらって、アイヌという言葉が一人歩きするような、差別したりカリスマ化して特別視するようなことも一切せず。
気負いなく、何気ない日常の中で、淡々と描かれる親子や仲間の暮らしの中に、アイヌプリがしっかりと根付いてる。
アイヌプリというタイトルを監督がどのように意図したかわからないが、映画パンフでもアイヌ式と訳されてる。
プリは流儀とか風習とか生き方みたいな意味で、アイヌは民族を指す前に人間という意味がある。
この映画からもっとも感じられるテーマであり、一本筋の通ったメッセージが、まさにアイヌらしい生き方、人間らしい生き方っていうことに尽きる。
和人の中にも、わたしもそうであるように、自らのルーツやアイデンティティを求め、地元の失われゆく伝統文化をどうにか維持しようとか、復活させようとか、日々の日常の中で模索してたり。
それが義務だったりやらされるのではなく、そうすることが楽しいからやるだけで、それと同じことだと思った。

昔っから映画好きで邦画より洋画、音楽も洋楽みたいなところがあって、でも好きな日本映画や音楽もある。
たいていドキュメンタリーか、設定が現代だろうと未来だろうと日本の伝統に根ざしたものが多い。
だから、なんで沖縄映画みたいに、ドキュメンタリー以外で役者が日本人でなくアイヌを起用した普通のメジャーなアイヌ映画が無いのか不思議でたまらなかった。
こんなこというと恥ずかしいけど、もし誰も作らないないなら、いつか自分が映画を作るならアイヌ映画だと思ってたくらいに。
まぁ、自分の頭の中だけで何を思おうが勝手だからいいとして、福永監督が現れたことは本当に嬉しかったし、二作品とも、とても共感できるんです。

この映画館には初めて来たけど、次はデヴィッドボウイもデリカテッセンも1月10日から公開なんで、また行かないと!

fuhgetsu