「青春映画を超えた、コロナ禍の総括と癒やし」」この夏の星を見る ノンタさんの映画レビュー(感想・評価)
青春映画を超えた、コロナ禍の総括と癒やし」
7月の公開だから2ヶ月経っている。公開時も公開館数はそれほど多くなかったのではないだろうか。あまり目立たず、また青春映画ということもありスルーしていたのだが、菊川Strangerでちょうど都合のいい時間の上映があったので観てみた。
結果、映画館で観れてよかった。青春映画の傑作ということにとどまらず、世代関係なくコロナ禍を振りかえり、総括させてくれる映画でもあると思う。 世代を超えて共感できる“もしも”の物語だ。
僕はコロナ中に心身の調子を崩し、いまだに引きずっているところがある。特に辛いとも思わないまま、いつの間にかおかしくなってしまった。本作は当時のトラウマ的な記憶に作用して、デトックスしてくれる映画のように感じている。はずかしながら中盤以降、何度も落涙させられた。
今後この映画が僕にどんな作用を及ぼすのかわからないが、無意識に、この映画の持つ前向きな希望のようなものが忍び込んで、何かを変えてくれそうな気がしている。
これはフィクションである。この映画で描かれたようなことは、現実にはあり得ないと思う。でも、この映画を見ていると「あったらいいな」とも思うし、当時はぼんやりと受け身な態度で、ひたすら耐えるだけしかできなかったけれど、次に同じようなことがあったら、この映画の高校生たちのように、理不尽な現状をはっきり認識して、何かを信じて前向きに取り組むことができるような気がしてくる。そうした物語の力を感じる映画でもあった。
それは原作の力でもあるのだろうし、本作が長編商業映画のデビュー作でもあるという若い監督と脚本家の力でもあるのだろう。映像的にも、さまざまな工夫や演出が施されていて目を見張った。カメラワークも映像も独特で、新しい才能の登場であるとも感じた。
何しろ天文部の話で、望遠鏡で星を見るという地味な作業がメインである。それなのに望遠鏡で星を見る作業は、スナイパーもののアクション映画のようでもあってスリリングだった。
この映画の空には満天の星が輝いている。それは単にキレイに見せたいということではなく、星を観ることを楽しむ登場人物だちの主観的現実として、こうした視点を獲得できるのだということを暗示したのだと思う。
また、困難への、そして周囲の人や見知らぬ人への向き合い方一つで、別の未来もあり得るのだと教えてくれる映画であった。
現代では人間関係が幸福感や健康に大きな影響を与えるという、さまざまな研究出てきているが,僕の知る限り、ポジティブな影響があるのは身近な人間関係によるとされている。
しかし、対面限定という幸福な人間関係構築の前提を覆して、ネットを通じた対話でも、また遠く夜空に浮かぶ人工衛星にいる人とでも、幸福な関係は築けるのだということも伝えてくれていると思った、
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。