「青春っていいね」この夏の星を見る kswithさんの映画レビュー(感想・評価)
青春っていいね
50過ぎ男性。劇伴のharuka nakamuraの音楽が好き、「灯星」を劇場で聞きたいという動機で見に行きました。
コロナ禍というかつてない状況の中で天文観測を通して中高生のかけがえのない時間を活写した王道な青春群像劇で、それぞれが抱えてたり直面したりする悩みや葛藤、友情、ほのかな恋愛の情(でも全然このファクターが強くないのが令和っぽいのかな)がみずみずしい映像で再構成されていて、その点がすごく良かったです。
物足りなかったかな、と思うのは、主人公の亜紗の感情が実はよくわからなかったことですね。物凄く明るくて前向きなんだけど、宇宙飛行士を目指しているわけでもなく⋯。彼女の葛藤みたいなものが、途中の凛久が抱えていた秘密との兼ね合いでしか描かれてない(だから、最後の観測のシーンでの「これ以上私達からなんにも奪わないで」というセリフも浮いて聞こえてしまった)、主人公キャラだからしょうがなかったのかな。演じている女優さんも存在感があったので、そこがもったいなかったなあ、という印象です。あと、この最後の観測のシーン、主人公が祈ると風が吹き観測できたような描き方になっていて(少なくとも自分にはそう見えました)、都合が良すぎる展開だったのは残念。多少の曇り空でも凛久が作った望遠鏡の性能が良かったから見えたとかにしてほしかった。
東京の中学生の二人は、すごくよかったです。中学生らしい機敏さと純粋さが描かれいて。サッカーやってた男の子の不貞腐れ方や先輩にころっと影響される様子もすごくわかるし、女の子が最後の最後にマスク取る演出も憎い。五島列島の女の子は、なんであんなモテたのかな(東京から五島列島に帰れない男の子が途中からモブになっていて可哀想)。
最後に、個人的には、コロナ禍が終わった2024年から振り返って、あの日々は間違いじゃなかったし、なんならまだ夢の途中だし(2020年に高校2年生なら大学生4年生くらいか)、でもあの日々の努力が今の自分とこれからの未来への意思を作ってるんだ、みたいなもっと希望と人生への展望が見えるような、そういう終わり方だと個人的には良かったけど、まあ、いち観客の無責任な感想です。
でも、そういうのがなく、余白と余韻をもたせた終わり方だからこそ、見る人に深い感動を与えるんだろうなとも思います。
「灯星」を聞きに行ったつもりが、haruka nakamuraの世界観にマッチした青春の儚さと美しさに胸がいっぱいになりました。自分の高校生活は30年以上前ですが、こういう映画を見るとその時の時間に巻き戻されたような感覚で、本当に、青春映画っていいですよね。若い人だけでなく、50代をエモい気分にさせてくれた、そんな映画でした。
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