劇場公開日 2025年7月4日

「原作をほぼ忠実に再現。それはそれで良し悪しがあって。」この夏の星を見る あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 原作をほぼ忠実に再現。それはそれで良し悪しがあって。

2025年7月21日
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鑑賞方法:映画館

「この夏」とは2020年の夏。緊急事態宣言が出て学校がみな休校となり甲子園大会も中止となったあの年である。オンラインで繋がって天体観測をする中高生たちの姿を描く。
辻村深月の原作本は文庫本で2巻、600ページほどの大作である。映画は、ほぼ忠実に原作を再現している。オンラインで繋がる、という主題にのっとって、舞台となるのは茨城県土浦市の高校、東京都渋谷区の中学、長崎県五島の高校と天文台と多岐にわたる。これらの学校の生徒たち、教師が物語の登場人物だがかなりの数になる。そしてそれぞれの人物に背景がありお互いに影響を持ち合うのだからなかなかに複雑である。原作を読んでいなければ映画だけで理解するのは難しいかもしれない。
最近、よく思うのだが、小説にせよ、漫画にせよ人気のある作家の作品であればあるほど、映画化にあたって忠実にすべてを映像に置き換えようとすることが多くなってきたような気がする。もちろん作者がそう指定する場合もあるだろうし、原作に対するリスペクトが強ければ強いほどなるべく切り刻みたくないという心情となるのも理解できる。でも私はもっと脚本は自由であってよいのではと思う。
この映画はスターキャッチコンテストが完了した夏の終わりをもって終止符を打つべきだった。原作と同じく映画も秋から冬へ、ISS観測会のある12月へと進んで行くのだけど。凛久の姉花楓のようにそこまで登場しない人物もいるし、凛久の身の上の変化のように秋になって起こることもある。だから原作に忠実であろうとすればどうしてもそこまで話を続けなくてはいけないのかもしれない。でも映画ではスターキャッチのルール説明のシーンや競技そのものの状況など原作にない部分を描き込んでストーリーに膨らみと説得性をもたせることに成功している。だからここまでで完了させたほうがより感動的だったし見やすくなったと思う。そこは原作に対しても感じていたことなんだけど。
中学生、高校生を演じた若い役者たちはいずれも好感がもてる演技だった。ただ溪本亜紗を演じた桜田ひよりさんと、佐々野円華を演じた中野有紗さんは劇中人物よりやや年上ということもあり、少し落ち着きすぎているかなとも感じた。やっぱり10代の子たちはもっとヒリヒリしていて不安定だし、それはコロナ禍のこの代の子たちは尚更だと思う。その点、原作ではちょい役だけど映画では役を膨らませた福田小春役の早瀬憩さんと、中井天音役の星乃あんなさんは年相応で良かったですね。そして土浦の土星、木星コンビの二人の高校生、めちゃくちゃ可愛かったです。

あんちゃん
Freddie3vさんのコメント
2025年7月31日

共感、コメントありがとうございます。原作未読ですが、見事に刺さってしまいました。残念なのは、配給側があまり宣伝に力を入れてない感じがするのと大規模公開作品の狭間で埋もれていて、実はいちばん届けたい層に届いていない映画になっているのではないかというところです

Freddie3v
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