「だって、心底そう思ったのだからしょうがない」この夏の星を見る TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
だって、心底そう思ったのだからしょうがない
今週公開作品に観たいものがなかったため、観逃していた作品から大変に評判が高いと聞く本作をチョイス。今週公開の某アニメ作品目的のお客さまで大変に賑わう中、TOHOシネマズ日比谷にて8時40分からの回を鑑賞です。
物語のメインは2020年、COVID-19感染拡大による緊急事態宣言で決定的となった行動制限、自治体や職場或いは学校ごとに設けられた制約、そして不確かな風評によって多くの人に生き辛い思いをもたらした「あの時期」に学生時代を送ることとなった少年少女を中心に語られる青春群像劇です。舞台は茨城にある砂浦第三高校の天文部を中心に始まり、誰もが不可能と考えていたスターキャッチコンテストを「何ならできるか?」を考えつくしたアイディアと、「達成する」と決めた強い決意を基に企画。その熱意は間もなく、いろいろあって悶々としていた東京、長崎に住む数名に届いて伝播し、ついにその夏、4地点がオンラインで繋がれてコンテストが開催されます。
その後の現在において、「コロナ世代」という括り方もされることのある若者たち。私自身は独身のため、「その手の話」は他から見聞きするものだけだったとは言え、第一印象はやはり「気の毒」と感じることばかり。何とか登校は出来ても多くの制約下のなか、出来たはずの体験と身につけられたはずの経験を諦めさせられ、我慢ばかり求められた彼や彼女たち。ところが、本作を通して「それでも何かを成し遂げたい」ともがく若者たちを見れば、恐らくは(知らないだけで)現実にも同様のムーブメントが様々に起きていたのだろうと、自分が見くびって考えていたことに気づいて反省します。
本作、まず学生役を演じる方々に見る神々しさにただただ感動させられ、また、もどかしいことばかりでも何とかして導こうと尽力する指導者たちを尊敬、、、なんて、学生物映画における「古典中の古典」のベタな評価と判ってはいても、「だって、心底そう思ったのだからしょうがない」と開き直ってでも言わずにはいられません。
序盤こそ、「そのまま電話出たらハウリング起こすよ」とか、当時の首相や知事をモノマネしたような音声情報が妙に気になったり、些末なことに気を取られて先を心配しながら観ていましたが、中盤以降は劇的な展開とキャストたちの素晴らしい演技に感情が高ぶり、最早、落涙を越えて嗚咽を押さえるのに必死。特に若者たちのうちに何人かは初見の俳優さんもいらっしゃいましたが、どの役にもはっきりと認識できるキャラクター付けがされていて「端役」は一人もおらず、俳優の皆さんもしっかり応えていて素晴らしい。敢えて一人に絞って選ぶとしたら、茨城・砂浦第三高校3年生で天文部部長・山崎晴菜役の河村花さん。後輩にも常に丁寧な言葉遣いで会話し、頼れる後輩でWエースの溪本亜紗(桜田ひより)と飯塚凛久(水沢林太郎)を信じて支える度量、そして物語後半の「電車内のシーン」にあるアクション、からの一言、は思い出すだけでまた泣いてしまいそうになります。
それにしても、辻村深月さん原作作品はやはり観逃すべきではないのかも、と思い直させられました。本作が長編商業映画初作品である山元環監督、良い作品をありがとうございました。次作も期待してチェックインさせていただきます。
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