「コロナ禍だからこそ経験し得た青春がある」この夏の星を見る tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
コロナ禍だからこそ経験し得た青春がある
コロナ禍の中で、全国3か所の4チームが、「手作りの望遠鏡で星を捉える競技会」に参加することになる経緯が丁寧に描かれる。
競技会の主催者である茨城県土浦市の高校生チームや、入部しようと思っていたサッカー部がなくなってしまった男子を中心とする東京都渋谷区の中学生チームのエピソードも面白いのだが、ここでは、コロナ禍だからこそ、この競技会に参加することになった長崎県五島市の高校生チームが、存在感を放っている。
中でも、元々は親友同士だった2人の女子が、コロナのせいで一度は疎遠となりながらも、やはり、コロナのおかげで関係を修復することになる様子には、心に響くものがあった。
競技会が終わった頃には、この五島市のチームを巡るエピソードが印象的なせいか、主役のはずだった土浦市のチームの影が薄くなっていて、何だか物足りなさを感じてしまった。
ところが、物語は、ここで終わりではなく、土浦市のチームの男子が香川に引っ越すことになると、ようやくとこのチームの面々が主役らしくなってくる。
ただ、どうして望遠鏡でISSを捉えることが、転校する男子に対する「はなむけ」になるのがが、今一つ納得することができず、それが、全国的な競技会(イベント)として実施されるに至っても、どこか釈然としないものが残った。
やがて、転校する男子が、天文部に入った時に、「望遠鏡で星を追いかけることの限界を極めたい」といった目標を掲げていたことが分かって、ISSを追跡した理由が理解できたのだが、この目標は、別にサプライズでも何でもないので、もっと早い時期に明らかにするべきだったと思えてならない。
いずれにしても、この映画は、コロナ禍の青春を肯定的に描ているという点において、画期的であるに違いない。
とかく、ネガティブな側面のみが強調されがちなコロナ禍だが、コロナ禍だからこそ、リモートによる全国レベルの競技会を開催できたというポジティブな側面も確かにあった訳で、観終わった後には、「決して悪いことばかりではなかったんだ」と、少し温かい気持ちになることができた。
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