サンセット・サンライズのレビュー・感想・評価
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悪くはなかったが
面白かったけど、ちょっと惜しい気がします。
横浜流星さんの「正体」は、リアリティが無くツッコミどころが沢山あるものの、テーマがはっきりしていたので、感動を求める人に勧められる映画と言えました。(私は感動はしなかったんですが、横浜流星さんの演技に感心しました)
それに対して本作は、どういう映画かを説明するのが案外難しいです。クドカンの脚本で、コメディには違いないです。内容を要約すると、
釣り好きのサラリーマンがリモートをきっかけに東京から三陸にお試し移住し、そこで、
①東北の人々の素朴な温かさに触れて、疲れた心が癒された、ではないし、
②憧れの釣り三昧の田舎暮らしを始めたが、田舎には田舎の抱える問題があることを知り…でもないし、
③運命的な出会いがあった、でも彼女には悲しい過去が…やっぱりこれになるんでしょうか。
それにしては、ちょっと品が無いんですよね。もっとハートフルコメディにした方が良かったと思います。いかにもクドカンらしい笑いが散りばめられているんですが、「モモちゃんの幸せを祈る会」や池脇千鶴さんのおばちゃんキャラが暑苦しくてうっとうしいです。逆にもっとギャグ寄りの作品だったら許せるんですが。
お薦めポイントも勿論あります。三陸の海の解放感、美味しそうな魚料理の数々、菅田将暉さんの釣り竿さばきはサマになっていて、井上真央さんは綺麗でした。
ただ、本作を観て、三陸に旅行に行きたいとは思っても、住んでみたいとは思わないですね。お父さんと茂子さん以外の人物があまり魅力的には描けて無かったです。
脚本と演出がかみ合っていなかったかも。
2/4追記
本作は東北応援のつもりで鑑賞しました。上記レビューに、本作を観ても三陸に住んでみたいとは思わないと書きましたが、私が三陸に魅力を感じないという意味ではありません。というのもクドカンは宮城県栗原郡(現栗原市)出身、母の実家の近くです。上記レビューを書いた後で、岸監督が父と同じ山形県出身、そして原作者の楡周平さんは私と同じ岩手県一関市の出身とわかり、ご縁があるなと思ったので、ちょっと追記します。
これ観た方は言葉の意味が分かったでしょうか。
私は6歳まで一関に居たので、「そろそろ帰(け)っか?」は分かったんですが、「おだづなよ(調子に乗るなよ)は分かりませんでした。言われた事が無いし。
津軽弁で有名な「け!」「く!」は面白いですが、沿岸部では使うのかな、場所によって違うのでしょうが、親戚は「食べらい」と言います。疑問文みたいに語尾が上がります。一般的に宮城県の言葉使いはのんびりして柔らかく、中村雅俊さんのが本物です。
祈る会のメンバーの話し方がきついのが違和感でした。だから、もっと人間を優しく描いて欲しかったなあと思ったのでした。
前を向く事の大切さと忘れてはいけない過去を描いた邦画
非常に面白かったです。
自分が邦画に求めていた人情味、人との優しい繋がり、邦画ならではのユーモアが詰まっている映画でとても引き込まれました。
田舎ならではの人との距離感や人の親切心、反して都市部への偏見などが非常にうまく描かれていて それに戸惑いながらも順応していく主人公とキャラクターのやり取りが見ていて気持ちが良かったです。
また地方創生や震災という難しいテーマを描かれていました。
残された者は過去の整理を進めていかなければいけないがそこに宿っていた過去の思い出も捨てるのか、という葛藤が本当によく描かれていて心が震わされました。
前を向いて歩いていかないといけないが
決して忘れてはいけない過去もあるよな
これを思い知らされた映画でした。
本当に凄くいい映画だと思うので是非たくさんの人に見ていただきたい作品です。
良かった
エヴァンゲリオン超爆走!
初タッグ!クドカンx菅田将暉君。
いつもならこれだけでも充分観たい!って
なるはずなのに、中々気が進まなかった本作。
予告とフライヤー
(いつもながら読んではない。で、探したけど無いーー!どこーー!)
の雰囲気から、ほのぼの系かと思っていたので、今の気分じゃなくてスルー候補でしたが。。
HPを見たら「正欲」の岸善幸監督で、撮影が今村圭佑さん!
今村さんが撮った作品は最近だと
「アット・ザ・ベンチ」や傑作「青春18x2〜」かなり面白かった「最後まで行く」と、好きな作品が多いので、鑑賞の決め手になりました。
(四月に〜やリリーはむにゃむにゃむにゃ。。)
岸監督はコメディははじめてじゃないでしょうか?
クドカンとの化学反応が楽しみ♪って事で
レイトショー。
おじさまと2人きり、よろしくお願い致しますm(__)m
な!なんと!
こないだ観た「嗤う蟲」と類似点多し!
なのに360度、あっ!180度違う、対極にあるような作品でしたねw
脳内で色々と比べながら観てしまい忙しかったです(°▽°)
前にも書いたのですが、
私は田舎暮らしには向いていないし、海も苦手で船も釣りも怖いし(お魚の生命力に負ける
( T_T)
生魚も食べられないので
(捌けはします٩( 'ω' )و
申し訳ない。田舎に移住は考えられないのですが、この宮城県の三陸はとても素敵に感じました。
やはり秒で広がる個人情報wには驚きうんざりするし、面倒くさい人間関係はちゃんと描かれているのですが、何だかみんな憎めない。
そして主人公の西尾(菅田将暉君)がポジティブで明るくて、何よりこの場所が好きでエンジョイしているので、見ていて嫌味がなかったです。
人たらしなキャラも活きていましたね。
コロナ禍の、あの何とも言えない、今となっては異常だったと思える、信じられない時間を過ごした私たち。
実際に、活動自粛で帰省できなかった友達もたくさんいました。
(初孫ちゃんをすぐにばあちゃんに会わせてあげられなかった、やっと会えた時はお孫は3歳に(°▽°)
都会から帰って来るなんて近所の人が怖がるからやめてって言われたって( ; ; )
すごく覚えてるエピソード。。
仕方ないのはわかってる。
まぁ、そんなでしたよね。。
その感じも描かれていて、あの時を思い出してしまいました。
あーーそうそうこんなだったなーーって。。
手作りマスクとかね。。
そして東日本大震災についても触れられていて、まさかの軸になっていたのが意外でした。
あの悲劇を、TVの中だけでしか体験していない私のような部外者には、本当に正直言って、被災した方にどんな言葉をかけて良いのかわかりません。
そのモヤモヤを、西尾⇄ケン(竹原さん)
持田(ちーちゃん)の会話を通して代弁してくれた。
少し気持ちが救われました。
他にも地方の過疎化、空き家問題と、深刻なテーマも入り混じり、単なる
「#田舎移住」になっていないのも予想外でしたが、重いテーマてんこ盛りなので、どれも若干薄味だったかな。。
(原作未読でわかりませんm(__)m
そしてクドカンの脚本は細かい人間描写が見所で、笑えて楽しくて、、
でも魅力的なキャラがクスッと笑えるエッセンスを付けられて死んでしまう。
本作も然り。相変わらずその仕事がお見事!
そうだったクドカンだった油断した!
シゲおばあちゃ〜〜ん泣泣
西尾と仲良くなったシゲおばあちゃん(白川和子さん。ロマンポルノの女王と称されたお方なんですね!)
が大好きなパチンコ、エヴァ超爆走中!に死んでしまう。。
ねーーー、いつもこうやってやってくれるのよねぇ〜泣き笑い。。
シゲおばあちゃんの死から空き家問題に焦点があたり、ももちゃん(真央ちゃん)の過去やあきお(中村雅俊さん)との関係が明かされていく。
実際にありそうだし、毎日時は進んでも、
心は立ち止まったままの人がいること。
進んでは戻っての繰り返しなんでしょうね。。。
ももちゃんの
「子供を産むことになったら3人目なんだよ!」が刺さった( ; ; )
車内のあのシーンや換気扇の上の灰皿にもヤラレました( ; ; )
マスクをとったももちゃんに一目惚れ!
(逆じゃなくて良かったねw)
西尾の方はまだわかるとしても、ももちゃんが惹かれた理由がいまいちわかりにくい。
亡くなった旦那さんの写真。
ボヤけていたけどイケメンそうだった。
結局イケメン好きなのか??('◉⌓◉’)
重たいテーマでありながら、クドカンエッセンスでクスッと笑えてジーンときちゃう、優しい作品でした。
観て良かったです。
おまけ
○久しぶりの中村雅俊さんが素晴らしかった!!
あきおさんをずっと見ていたかった。
役所さんや長塚さんといい、このクラスのベテランの存在感が最近エグ過ぎる!!
○金髪タケさん。三宅君に似てるな〜誰だろ?え?三宅君?!ん、ちがうか。の繰り返しだったw
三宅君だった。
あとシゲさん、ビートきよしさんもわからなかった( ・∇・)
○セリフ言いながら、演技しながら、鯵を捌いてなめろうを完成させる真央ちゃんがすごかった!
○お顔にほくろのある男子好きとしましては
(桃李君とか錦戸君とか赤楚君とか健とか天音ちゃんとかいるね♡)
好井まさおさんのほくろにクギ付けだった。
触りたくて触りたくてウズウズしてた。
○クマ登場で不安になったが、おしっこはキレイな放物線を描いておりました。
で、アレはクマのゲーーー?!
えーーーー!!
○作中画は菅田君が実際に書いた絵らしいですね(エンドクレジットで確認)
あの2人は西尾とももちゃんだったのか。
2人の子供が加った絵にしたのはももちゃんの亡くした家族を蘇らせてあげたのか?
はたまた彼らの未来予想図か?
"祈る会"のメンバーはじめ、みんな幸せになって欲しい〜♪
不快感がよぎるのは監督のせいなのか脚本家のせいなのか
東北の良さと井上真央が良かった‼️
喪失と日常
予告は観る機会がなく、ポスターを拝見して、楽しそうに釣りに興じる菅田将暉さんが大写しになったビジュアルから、釣りバカのドタバタな毎日…みたいなものを想像していました。
全然ちがいました。
スタートからすでに、何かぽっかりと穴が空いたような、穏やかながらもどこか寂しい漁師町の日常が描かれ、これは覚悟して観ないといけないなと…
コロナ禍のテレワークを利用して、三陸の海辺の町に移住。東京モンが…と警戒されながらも、徐々に馴染んでいく様子、その中で人々が抱えるものを察していく様子。
震災やコロナで色々なものを喪失しながらも、懸命に日々を送る人々。隣家のおばあちゃんとの温かい関わり。過疎化による空き家問題、失った過去への気持ちと未来との折り合いの付け方の難しさ。
そんな色々ある日々を彩る美しい景色と、美味しそうな三陸グルメ。(家庭料理も居酒屋メニューも本当に美味しそうでお腹が空いた!お酒のみたくなる〜)
ちょっと演出や構成が自分に合わないノリのところがあったので(祈る会とかケンカとかクマとか…)その部分で星ひとつ減らしてしまいましたが、最後まで没入して鑑賞いたしました。
様々な問題を小気味よいテンポで描く傑作
2回目でした。
震災の記憶が甦る
南三陸の架空の町「宇田濱」を舞台にした涙と笑いのエンターテイメント。コロナ禍、震災の記憶、空き家問題、釣り、魚料理と色々盛り込んでいたもののあっと言うまに鑑賞時間が過ぎ、サラリと映画館を出たが、ちょっと時間が経つとじわりと「いい映画」だったな、と思えた。
映画の中では「モモちゃんの幸せを祈る会」が支え続けていた理由と竹原ピストルが河原での芋煮会で独白した長セリフ(これだけでも彼は助演男優賞もの)で観客に震災の東北を伝えるのだが、私自身は鮮明にあの頃の記憶を呼び覚ましてくれた。
仙台や名取の沿岸部、石巻、南三陸町、気仙沼、大船渡、陸前高田など震災直後訪れ、その惨状を直接目にした記憶。仕事では現地に何百人もの仲間がそこで働き復興の助けをした事実、。30年が経った阪神淡路も熊本も能登も同じですが、日本の国土を強くしつつ、ひとたび災害が起きれば生命を守る本当の防災をこれからは実現してほしいと節に思う次第であります。
クドカンの脚本でしたがギャクは抑えめで、かえってよかったと思います。菅田将暉は何でもこなせる流石。井上真央ナイスミドルになっても美しい。いい映画です。
つもる話
原作は未読です。
都会と田舎のギャップを感じさせるコメディとシリアスかな〜と思っていましたが、シリアスというか田舎での問題や東日本大震災を色濃く描いている作品でした。
コロナ禍でのリモートだったりの状況を鑑みて田舎に移住した主人公が最初は妙にハイテンションだったし、隔離だっつってんのにすぐに釣りに出かけたりと身勝手さが良くないかもなーと思っていましたが、現地の人たちの交流が盛んになっていったり、大家さんとの恋愛だったりと日常描写がのんびり観れて良かったです。
そこから田舎の空き家問題が本格化していき、主人公が会社のビジネスで振り回されたり、仲良くしていたおばあちゃんが亡くなったりしたりと気持ちが揺らぐ中でどうやってこの土地で生きていくのか、生きていきたいのかは良いドラマが展開されていきました。
突然のビフォーアフター模様もありましたがとても綺麗なリフォームに匠を感じました。
若干ドラマ部分がくどくなることもありましたが、まぁそればっかりは致し方なしといったところでしょうか。
ハイパー飯テロ映画だったのが今作の素晴らしいところです。
ケンの居酒屋で提供される海鮮料理がどれも美味しそうでハーモニカ焼きとかかぶりつかせてくれ〜となるくらい美味さが伝わってきました。
自宅で作る海鮮料理、郷土料理も満遍なくお届けされるので飯を食べずに映画館に来てたのでこれはやられました。
今作の欠点というかコメディ部分が自分にはあまり合わなかったです。
タコで滑りまくるシーンだったり、居酒屋での押し問答だったり、特に感じたのが熊の登場シーンで、あれだけは急にファンタジーになってしまい、きのこを持ってくるシーンなんか別に無くても…となってしまったのが残念でした。
ケンさんが大きい声を出すところもビックリするので頻度は控えめにして欲しかったです(ピストルさんはとても良かったです)。
コロナが明けて2年近く経とうとしている中で今作を観ると色々変化があったなと思わせられました。
実家がゴリゴリの田舎なのもありますが、あの土地あの風景を守り抜くことって大事だなと痛感させられました。
鑑賞日 1/23
鑑賞時間 9:40〜12:05
座席 D-3
熊がシメジを咥えて鍋に入れる芋煮会
2025年映画館鑑賞9作品目
1月25日(土)イオンシネマ石巻
通常料金1800円→dポイント−200円
監督は『二重生活』『あゝ、荒野 前編 後篇』『前科者』『正欲』の岸善幸
脚本は『真夜中の弥次さん喜多さん』『パンク侍、斬られて候』『土竜の唄 FINAL』『1秒先の彼』『ゆとりですがなにか インターナショナル』の宮藤官九郎
粗筋
空き家対策を任された町役場職員関野百香
震災の津波で亡くなった夫の父親と二人暮らし
夫だけでなく幼い息子と娘と夫の母を津波に奪われた
実家の隣に夫が建てた家は空き家になっていた
コロナ禍で東京から三陸の百香の借家に引っ越してきた西尾晋作
テレワークをしつつ大好きな釣り三昧
余所者の西尾に地元は当初拒否反応を示していたが徐々に少しずつ受け入れ始めた
西尾が務める会社も空き家対策プロジェクトに乗り出した
ロケ地は気仙沼や大船渡
ガンダムほどじゃないがわりと客の入りが良かった
その大半は地元のおじいちゃんおばあちゃん
ちょくちょく笑いが聞こえるコメディー
笑いあり涙あり娯楽映画
宮藤官九郎脚本のわりに破綻していない
池脇千鶴の劣化がやばすぎるがヒロイン井上真央を引き立てるための役作りだろう
「け」とか「く」とか宮城や岩手の三陸地域の方言ではないと思うが
伊奈かっぺいが東京のテレビ局でネタ?で発表した津軽弁だ
岩陰でおしっこしてるときにプロポーズしなくても良いと思う
みどり先生がトイレにいるときにプロポーズしてしまった千兵衛博士みたいじゃないか
みどり先生はおしっこじゃなくてウンチかもしれないけど
配役
釣りをするため三陸の町に移住する東京の大企業「シンバル」の社員の西尾晋作に菅田将暉
晋平の家主かつ震災未亡人で空き家問題対策担当の役場職員の関野百香に井上真央
地元の居酒屋「海幸」の店主で「モモちゃんの幸せを祈る会」メンバーの倉部健介(ケン)に竹原ピストル
ケンの友人でのちに町長になる「モモちゃんの幸せを祈る会」メンバーの山城進一郎に山本浩司
ケンの友人で「モモちゃんの幸せを祈る会」のメンバーになっている町役場職員の平畑耕作に好井まさお
ケンの友人で「モモちゃんの幸せを祈る会」のメンバーになっている風体の悪いパチンカスの高森武に三宅健
晋平の職場の同僚の澤村千佳に藤間爽子
晋平の職場の同僚で東北6県が言えない帰国子女の玉本桜子に茅島みずき
晋平の職場の同僚の平野武則少路勇介
晋平の上司で課長の小松に宮崎吐夢
「シンバル」の社長の大津誠一郎に小日向文世
大津の秘書の姫川玲香にあべまみ
晋平の三陸の隣人でパチンコ店「招福亭ジャイアンツ」の常連客の村山茂子に白川和子
茂子の長男の村山信夫に松尾貴史
茂子の息子に本間剛
茂子の息子に村上大樹
噂好きでいつも干物を咥えている田舎ジジイの黒川重蔵にビートきよし
百香の上司で課長の狩野和彦に半海一晃
百香の職場の同僚の持田仁美に池脇千鶴
百香の亡くなった夫の父親で漁師の関野章男に中村雅俊
震災の津波で亡くなった百香の幼い息子の関野良太に千北怜衣
震災の津波で亡くなった百香の幼い娘の関野瑞希に千北奈々
震災の津波で亡くなった百香の夫に大迫一平
晋平の母に長野里美
晋平の父にみのすけ
晋平の弟の西尾晋二に河合諒
船上のカツラを被った釣り客に松浦祐也
船上の釣り客でカツラ男と付き合っているギャルに円井わん
映画チケット予約と同時に美味しい肴の店を予約しておこう!
塩辛に白ワイン!
軽やかに異文化に飛び込むことから生まれる希望の物語
たまたま時間が合い、近所の映画館で観ることになった『サンセット・サンライズ』。予告編も見た記憶がなく予備知識も全くなしでした。
原作者の楡周平さんの作品も本作以外も含めて全くの未読です。脚本が宮藤官九郎さんだと知ったのもクレジットを見てからでした。実は宮藤さんの脚本のドラマや映画もなんとなく敬遠していて、これまで見たことがありません。
本当にたまたま見た映画です。映画の前半、おそらく宮藤さんの作風なのでしょう、コミカルでドタバタした演出にちょっと僕には合わないかな…と思いつつ見ているうちにどんどん引き込まれて、とても爽やかな気持ちになりつつ、考えさせられた作品でした。楡周平さんの小説、これから読んでみたくなりました。
物語の舞台は、震災の爪痕が残る東北三陸の海辺の田舎町。
コロナ禍でリモートワークを始めた都会のサラリーマン・西尾晋作(菅田将暉)が、気軽な気持ちで東京を離れ、現地に移住してくるところから始まります。軽やかで気取らない彼の行動が、少しずつ周囲との関係に変化をもたらし、彼自身も成長していきます。地方と都会の違い、震災の記憶、人々の価値観の違いと対話をテーマにしたこの映画は、ユーモアを交えつつも社会の本質に触れる奥深い作品だと感じます。
映画を引き立てていたのは、役者陣の力強い演技です。
菅田将暉さんが演じた主人公・西尾晋作は、軽やかに行動する姿が印象的。難しい局面でも前向きなエネルギーを放っていました。その軽やかさが物語をポジティブな方向に進める原動力となっており、観ていてとても心地よかったです。
人生を変えるには、住む場所を変えるか、付き合う人を変えるーーそんな教訓を聞いたことがありますが、それを軽やかに体現する人物です。
また、井上真央さんが演じたヒロインは、まさに「マドンナ」でした。辛い過去を抱えながらも自立した魅力的な女性を見事に体現していました。
ヒロインの父役の中村雅俊さんは、どこか本人そのままのような親しみやすさがあり、三陸の人の暖かさを象徴していました。
そして小日向文世さんが演じた町を再生しようとする企業の社長。多くの物語では「悪役」として描かれがちなビジネスマンですが、彼がただの利益追求者ではなく、現代的な経営者として社会課題をビジネスで解決する姿勢が印象に残ります。
映画の序盤では、都会から来た人に対する地元住民の偏見や、コロナ禍でさらに強まった過度の警戒感、ローカルコミュニティの中で目立ったことは忌避したい地元民の心情がコミカルに強調されます。
こうした誇張表現には少し戸惑いを覚えましたが、物語が進むにつれ、それが単なる誇張ではなく、普遍的な誤解や考え方の違いを明確にするための演出でもあるのだと思いました。
やがて登場人物たちの関係は、一緒に時間を過ごし、対話を重ねていく中で少しずつ変わっていきます。その過程で分断や対立とは、相手を知らないこと、理解しようとしないことから生じるのだと実感させられます。
そして、克服するためには、一緒に時を過ごし、対話を続け、相手を知ることが必要だと。この映画が伝えたのは、「違いを恐れず、違いを良きものとして捉えられれば、人生も社会もより良くなる」という前向きなメッセージでもあると感じます。
印象に残ったのは、パソコンやiPadの中に、すでにいない人々の幻影が現れる場面でした。ふとした瞬間に、亡くなった人や別れた人が脳裏に蘇ることは誰にでもあることではないでしょうか。
それは震災やコロナ禍というトラウマを共有する現代において、失われた存在との向き合い方を静かに問いかけるようでした。
映画を観終えて、私自身の未来についても考えさせられました。もうすぐ定年を迎えますが、この映画が示した「軽やかに行動すること」「違いを前向きに捉えること」が、これからの人生の指針になりそうです。新しい世界に飛び込む冒険を始めてみたい、そんな気持ちにさせられました。
全体を通し、見やすいエンターテイメント映画ですが、そのメッセージは非常に深く、普遍的です。登場人物たちがお互いの違いを超えてつながり、受け入れがたい過去を受け入れて、新たな人生のステージに向かう様子が感動的です。
そして、異なる価値観を恐れず、まず動いてみる。そこから何かが生まれるーーそんな勇気を与えてくれる映画でした。
登場人物たちのチョイスがいい。
新築、家具付きの家を貸し出すという、最初のシチュエーションだけで、なんだか色々想像が膨らんで緩くなり始めた涙腺が、途中、隣の家の話が広がり出したあたりから、自分と重なって、止めどなく緩んでしまい、本当に困った。空き家になっている祖父母宅。今住んでいる家。我が家を離れそれぞれの場所で暮らしている子どもたち。そうしたことが、観ているうちにオーバーラップしてしまったのだ。
でも、そのような個人的な事情を抜きにしても、いい映画だったよなぁと思う。
コロナ禍の記録としての意味合いも、これまで観てきた映画の中ではなかった切り口だったし、今も答えが出せない「震災との向き合い方」について、クドカンならではの、言いたいこと・言いにくいことを登場人物に思いっきり言わせる展開がさすがだったし、納得できた。
竹原ピストルのセリフが、宮城出身のクドカンの思いに重なっているのかも…。
コメディなので、もちろん笑えるところもたくさんあるし、出ているメンバーのチョイスもいい。
特に池脇千鶴。最初、ちょっとびっくりして、「そこのみにて…」から10年経つとこうなるかとも思ったが、そう言えば、マイスモールランドで、高校生の母親役だったしなぁと思い直した。
役づくりとしては、申し分ないピッタリさだったのに、色々言ってしまうのは、「ほんまもん」の頃の印象を引きずっている自分がいけない。すみません。
そして、菅田将暉と井上真央がキチンと魅力的。これがとても大事だと思うし、映画の中で、登場人物たちが、ちゃんと生活していた。
予告編を観た時は、菅田将暉のセリフの大袈裟さにちょっと引いてしまったが、観れば素直に入ってくるので、私と同じく、予告編で視聴をためらっている方は、是非劇場へ。
全292件中、101~120件目を表示