サンセット・サンライズのレビュー・感想・評価
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いい映画の雰囲気作りには成功
フルリモートの東京の会社員が、東北に移住してドタバタする話と思っていたが、少しだけイメージとは違っていた。それは地方の空き家問題を取り上げていたから。こんなの自治体が援助するか、どこかの大企業が強い志を持って取り組まないと成り立たない。それでもまだ田舎の現実に苦しむ可能性があるけど。方言や気質、メンタリティといった都会とのギャップを見せたり、震災との向き合い方を考えさせられたりする流れもあったりする。でもそこらへんも全部あまり深掘りしない。そりゃそうだ。クドカンだもの。それでも十分問題提起になってたとは思う。
シリアスな側面を匂わせつつ、映画全体を通してアピールしてくるのは面白さだ。クドカンらしい。たしかに「祈る会」のメンバーの行動とかは、異常さと紙一重でそれなりに面白い。全体を通して菅田将暉演じる西尾の明るいキャラで強引に楽しい雰囲気を作ろうとする意図を感じる。たしかに観終わった後になんとなくいい映画だったな思わせる雰囲気づくりは成功していた。それはそれで悪くはない。
でも!と思う。西尾と百香の恋愛の描き方が雑すぎないか?と。最後のあの話し合いであんな雰囲気になったのに、しばらく月日を置いただけで恋愛に発展するか?そのあたりが曖昧なまま強引に終わらせた感じがする。あの駆け足感はひどかった。それもクドカンだからなと納得する。クドカンは恋愛を描けないもの。
ただ、竹原ピストル演じるけんさんが営む居酒屋で出てくるメニューが美味そうだったことは評価に値する。他にも魚を使った食べ物が出てくるシーンは例外なく素晴らしかった。フードコーディネーターがいい仕事をしたのだろう。酒飲みなら観終わった後に飲みたくなる映画だ。それは確かだ。
津波のこと、モモちゃんの境遇を思うと、ずっと涙目で見てました。
コロナ禍も、今は昔・・・かなり遠い記憶になってきてることを実感しました。
都会から移住してきた西尾(菅田将暉)と百華(井上真央)の、出会いのシーン。
《ディスタンス》
除菌スプレー、手洗い、マスク、検温、
コロナの陰性証明書、
フェイスガード(ありましたもんね)
「可笑し哀しきコロナ禍よ」
毎日の死亡者の数にビクビクしてましたね。
隔離期間なんて、笑えない悲喜交々。
密集(密=ミツを避けるとか・・・接触禁止でした)
懐かしいなんていうとお叱りを受けるけれど、
映画のシーンをみると、如何に異常なことだったか?!
と、改めて実感・・・(10年後、20年後、記録的価値ありますね)
《内容》
実に盛りだくさんです。
①コロナ禍
②3・11の記憶
③過疎化と空き家問題
《見所》
❶井上真央の美しさ・・・幸せを祈る会が必然に思える、
・・・・その美しさは只者ではなく、三陸の平目の刺身級‼️
❷菅田将暉のでしゃばらない感。
❸三宅健・・・まさか、似てるけれど本人とは?偉い!!
❹竹原ピストル・・・滲み出る人間味。
❺白川和子・・・この道50年、いい顔ですね。
❻小日向文世・・・嫌味になるギリギリでターン‼️
❼中村雅俊・・・引き締めましたね。ラストのセリフの説得力。
《オマケ》
☆美味しそうなよだれの垂れる《三陸の魚》a nd《山菜》
つまり《料理》
☆☆南三陸の美しい景色・・・サンライズとサンセット
☆☆☆立ち直れるか?モモちゃん‼️
やっぱり子供のテープの声、忘れられない・・・
笑って、泣いて、食べて、
生きるって、こういうことですね。
生活が描かれているって、凄いなぁ、そう思いました。
(さすが脚本・宮藤官九郎)
⭐︎3.7 / 5.0
ほのぼのとクスッと
いい脚本だと思います。何度も笑わせてもらいました。
東日本大震災の被災地で空き家問題に悩む過疎地の漁村を舞台にコロナとソーシャルディスタンス、リモートワークなど、様々な社会課題やトピックスを盛り込みながら、軽やかなコメディに仕上げてるのがさすがだと思います。
東京のサラリーマン役の菅田将暉は美味しい新鮮な海の幸を食べまくり。美味しい顔が上手い。中村雅俊もイケおじを消して、いい感じの漁師のオヤジ、よく見ると昔いい男だったのかなぁくらいの感じでよかったです。
三宅健は、猟師町の元ヤンがよく似合ってました。池脇千鶴も中年女がすっかり板についてて、ベテラン感がよかった。
井上真央もちょうどいい年代のヒロイン役で、町役場にいそうだなぁとリアリティがあると思います。
東北弁が心地よい、ほのぼのとした観て間違いない映画です。
この映画はずっとサンセットしててほしい
※この映画を好意的に捉えている方は、この先の文章は不快に思われる可能性が高いため、閲覧しないことをおすすめします。
冒頭からヅラネタで笑いを取ろうとする作りに開始早々衝撃を受けた。
「令和になってまだこんな幼稚なシーン作って面白がっている人がいるんだ、OKOK」という気持ちになった。
あらすじには「コロナ禍や地方の過疎化、震災などの社会問題を盛り込みながら」なんて書いてあるが、ほとんどが表面的に触れて終わり。
深掘りされる様子は無し。
あくまで笑いと泣かせのネタにしているだけ。
登場人物の行動にリアルさを感じない。
舞台的な芝居。
テンションだけはやたらでかく、急に大声を出したりするのがウザい。
「zoomで上司の画面だけ固まったまま」と「喚き散らしながら、手元では魚を綺麗に三枚おろしにする井上真央」は笑ってしまったが、個人的に面白く感じたのはそれくらい。
世間の常識からはズレてる振る舞いを役者にわざわざさせて、それを嘲笑するような視線が好きになれなかった。
あと、ずっと気になったのは、とにかく主語がデカい。
「東京もんは〇〇」とか「東北の人間は〇〇」とか「被災者は〇〇」とか。
〇〇に入る言葉は偏見に満ちたステレオタイプ。
ヤフコメを見ているとこういう文言をよく目にするが、学術的根拠があるわけでもないのに、個人の経験に基づく主観をまるで不変の真理のように扱っててうんざり。
井上真央演じる百香がマスクを外す瞬間を見て、菅田将暉演じる晋作が百香に一目惚れする展開もなんだかなあ。
後半、純愛ドラマ風な空気になっていくが、晋作は見た目重視で人を好きになるようなので、たぶん他に美人がいたら簡単に浮気しそうに見えるのは自分だけ?
百香が晋作に惚れる理由も謎で、「大企業に勤めているから」としか思えなかった。
たしかに世の中には「男は収入、女は見た目」で恋人探しをしている人は多いとは思うが、そうではない人も世の中にはそれなりにいるはずなのに、この映画だと登場人物が多いわりにそういう人が一切出てこないのが逆に斬新。
村の男たちで結成の「祈る会」も、やっていることは独身女性の日常生活をみんなで監視して報告し合うというカルトな活動内容で、ギャグなんだろうけど個人的にはキモすぎて笑えないどころかドン引き。
でも作り手の皆さんはこういうのが面白いと思って作っているんでしょうね…頭が痛い。
晋作が船の上で中村雅俊演じる章男から聞かされる衝撃の真実も、冷静に考えると理屈おかしくね?と思った。
百香がもともと章男と一緒に暮らしていたというのなら、悲劇が起きた後もそのまま同居し続けるというのは理解できる。
しかし、どうやら悲劇が起こる前の二人は別々の場所で暮らしていたようなので、悲劇後に百香が新居に住み続けたくないという気持ちは分からなくもないが、じゃあ章男と一緒に暮らそうとはならないと思うのだが…
観客に「実はそうだったのか!!」という衝撃を与えたいためにわざわざこういう話にしたんだとは思うが、そのせいで常軌を逸した行動を取る不気味な人たちになってしまったと思う。
震災を、ドラマを盛り上げるための都合のよい舞台装置にしてる感じがとても嫌。
この映画は田舎暮らしをユートピアに描きすぎな気がした。
現実の「地方の過疎化」は深刻な社会問題だと思うが、そういう深刻さはこの映画からは伝わらなかった。
むしろ、この映画に感動した人は田舎暮らしに憧れそうで、そういう人が増えること自体は喜ばしいことではあるが、実際に田舎で生活してみたら「思ったのと違った」と簡単に挫折しそうな姿が容易に想像できる。
本気で「地方の過疎化」に向き合うつもりなら、観客が「たしかにこれなら過疎化が進むのも納得」と思える過酷な面も描くべき。
その上で観客に「それでも地方暮らしって素敵」と思わせる内容だったら素晴らしかったと思う。
まあ本気で向き合うつもりなんてないとは思うが…
中盤までは面白くはないが普通に鑑賞はできていて、「早く終わらないかな」ぐらいの気持ちだった。
まさかこの後にあんな地獄が待っていようとは、この時の自分は知る由もなかった…
終盤、この映画の登場人物のほとんどが集まって河川敷で鍋を囲む場面。
この場面、感動した人が多そう。
その気持ちはわからなくもない。
菅田将暉の演技に迫力があり、引き込まれて感情を揺さぶられそうにはなった。
でも、ここで晋作が熱弁していることって、要約すると「自分さえ良ければ他人なんてどうでもいい」ってことですよね?
その後の場面で章男が同じような台詞を言うことからも、これがこの映画で一番伝えたかったことなんだと思う。
はぁ?
なんという自己中心的考え。
でもたしかに世の中、そう考えの人が増えた気がする。
そりゃトランプが再選するわけだ。
この場面最悪なのは、大袈裟な感動的音楽が流れ始め、役者全員が気づいたら号泣していて、その顔を順番にカットを切り替えながら画面に次々と表示。
この、観客の感情を強制的にコントロールしようとする演出が本気でウザい。
良い映画って作り手の言いたいことはあえて台詞にしないで、観客に感じさせるものだと思うのだが、この映画は逆行していて攻めた作りに感服。
菅田将暉の「なんでこんな切ないんですかあ」みたいな舐めた口調も神経逆なで。
しかし極め付けはこの後。
菅田将暉の話を聞いていた竹原ピストルが突然、画面に顔アップで演説し始めるわけだが、これが超説教くさい。
この映画、悪ふざけばっかしてるくせに、急に上から目線の説教してくる場面がけっこう多い。
竹原ピストルの話が思っていた以上に長くて、「この校長先生のお話、いつ終わるんだよ」とイライラ。
ここで、目の前でクリリンが殺された時の悟空並みに怒り爆発。
大暴れしたい気持ちに駆られたが、前の席を蹴り飛ばしたら出禁確定なので、右の太ももを握り拳で叩き続けるという謎の行動に走ってしまった。
つまらないのは仕方ないにしても、高い金払ってなんでこんな不愉快な思いをしないといけないんだよ。
「空き家問題」とか「コロナ描写」とか「大企業」とか「池脇千鶴」とか、他にも書きたかったことはあったが疲れたので終わり。
この映画を観て、『ふてほど』(観てない)の脚本家の方の「ポリコレなんてクソ喰らえ」という気持ちは十分伝わりました。
公開日から5日目に観に行った時点で客席ガラガラだったことから、たぶんこの映画は早めにサンセットすると思うので、それだけが心の救い。
自然な演技
今年最初の映画
年の初めに、血みどろの戦いや脳が疲れるややこやしい映画は見たくなかった。
クドカンなら、テーマが重くても、希望がもてる内容だろうとこの映画に決めた。
地方あるあるにくすくす笑いつつ、大災害後の町の様子や生き残った人々を描いていて色々考えさせられた。
あまちゃん、季節のない街とこの映画。宮城出身であるクドカンは、様々な角度から災害後をリアルに描き、この先どうすればいいのかを考えさせてくれる。同時に災害を最小限にするためにはどうすればいいのかも考える機会にもなっている。
つくづく「人」の繋がりが大事なんだよなーと結論に至った。
先日、南海トラフが30年以内に起こる確率は、70〜80%から、80%に引き上げられたとニュースで見た。自然には到底太刀打ちできないが、精一杯準備しておきたい。また、関西に居る息子夫婦には、具体的な対策をするように伝えて行こうと心に決めた。
ほっこり温かい作品
良い意味で意外
すごく良かった。
単なるコメディだと思ってたので、中盤から空き家問題、リモートワーク、震災の話が出てきて、良い意味で意外だった。
単に問題提起するだけではなくて、現実に実行可能な解決策が示されているのが良い。
よく取材してあると感じた。都会側の意見、地方側の意見、役所側の意見、企業側の意見、などのさまざまなステークホルダーの代表的な意見が自然に脚本になっていた。
短い時間にコンパクトにさまざまな問題がまとめられているので、少し問題が単純化(極端化)されているきらいはあるけども、そこはコメディにしていることで不自然にならないようになっていて、さすがだなと思った。
お酒が呑みたくなりました
美味しそうなお酒、ツマミ
映画を観ていてお酒が呑みたくなったのは初めてでした。
イカを買ってキリコミを作りたくなりました。でも、こちらでは美味しいイカが売っていないので諦めましたけど。
震災津波のことを知っている身としては声を出して泣きたくなるシーンが何度かありました。縁側から見える砂利の庭や田舎特有の棚。
もう思い出の中でしか見れない風景に、そして子供達の歌に泣きました。
南三陸って言うから志津川か歌津かなって思ったけど大島なんだなぁと少しガッカリもしました。
でも久々に聞いた け! んだべ!
もう親戚は居ないけど南三陸に帰りたくなりました
日没、日の出、そしてしめじ。
コロナ禍真っ只中の南三陸にお試し移住で東京から釣り好き青年がやって来る。よそ者に対する微妙な空気感と団結力。豊かな景色と三陸の美味しい海の幸。ソーシャルディスタンス、そして震災が残した拭えない痛み。コメディ要素と残った人々の抱える苦しみを描いた実にクドカンらしい脚本だった。
震災を体験していない者が、震災を語ることは間違っているのか。痛みに触れることは失礼なのか。どうしてこんなに切ないのか。閉鎖的な海沿いの町の空き家問題を絡めながら、東北に対する想いを感じられる内容でした。
ただ恋愛要素がめっちゃ中途半端というか、なんでそんな分かりにくい結末なのかと、最後の最後にモヤモヤしてしまった。傷心4人衆が極端で面白かったけど、なにより池脇千鶴と三宅健が抜群に良かった。
私たちの町が好き
開幕、井上真央演じる百香がスマホでリノベーション済みの空き家を撮影。
そこに、子供二人の姿が…。
井上真央主演で『事故物件』の続編か…?
な~んてね。
ちなみにこのシーン、後から百香の背景などが分かるとしんみりさせられる。
百香は宮城県南三陸の(架空の)町、宇田濱の町役場職員。
町の空き家問題を担当。
南三陸の海が臨める一戸建てをリノベーションし、SNSにアップ。家賃は6万円。
ダメ元で試しに上げてみたのだが…、次から次へと希望者が。
その中で一人、居ても立ってもいられず、勝手にやって来ちゃった男。
東京の釣り好きなサラリーマン。浜崎伝…じゃなくて、西尾晋作。
2020年。東京ではコロナの感染が拡大化。
東京から思い切ってこの町に移住。仕事はリモートで。
もうそう決めて来たのだけれど、百香は渋い顔。
そもそも試しにアピールしてみただけで、本当に希望者がやって来るとは…。
しかも、東京の人。もしコロナを持っていて、まだ感染者が出てないこの町に感染者が出たら…。
ディスタンス!ディスタンス!
とにかく出歩かないで下さい。ここで自主隔離!2週間!
マジッスか~! イイんスか~!
という事で、2週間の自主隔離兼お試し移住の始まり~。
絶対に町の人との接触はダメ。
つまり、町の“人”はダメだけど、“魚”はいいんだよね…?
その発想も釣り好きもあの釣りバカサラリーマンと同等。お気楽な性格も。
自主隔離だってあくまで“自主”。この海を前にして釣りに行かないなんて。“不要不急”? いやいや、“必要超急”。
いざ、海へ。釣り糸を垂らせば、釣れる、釣れる。
市場に行けば、安い、安い。
おまけに百香の“父親”が漁師で、釣れた魚を持ってきてくれる。タダで。(百香は自主隔離中だから…と持ってきてくれるんだけど、困ったちゃんな晋作はこっそり釣りへ)
環境は最高、家賃も安い、毎日毎日海の美味しいものばかり。
リモートで同僚に自慢。
南三陸、ハンパねぇー!
お気楽サラリーマンの“シン・釣りバカ日誌”みたいな話だったら、あまりにもお気楽過ぎる。
そうじゃない事は作品のあちこちにちらほら。
宇田濱は海沿いののどかな町だが、寂れた雰囲気が…。
過敏なコロナ対策。
南三陸と言えば3・11で…。
おそらく百香が抱えている何かはこれに関係。
今晋作が住んでいる家。そこで見つけた煙草の吸殻に突然涙…。(晋作は煙草を吸わない)
これは何となく察し。
地方の過疎化問題、コロナ、3・11…。
そこに移住を絡ませ、ユーモアやチクッと風刺やシビアな問題を、笑わせ、考えさせ、ほっこりと。
クドカン巧みの脚本。
『あゝ、荒野』『前科者』とは違う岸善幸監督の温かな演出。こういう作品も撮れるのか…!
晋作は南三陸自体が魅力だが、私は勿論それも含め『あゝ、荒野』監督&主演コンビとクドカン脚本が魅力であった。
中小企業の平サラリーマンかと思いきや、晋作の勤める会社は超一流企業。晋作もエリート社員。
同僚とのリモートトーク中、突然社長が入室。晋作の移住生活が気に入り、あるプロジェクトを思い付く。
ズバリ、南三陸移住プロジェクト。
宇田濱町の空き家をリノベーション。SNSで希望者を募る。
晋作が“釣られた”方法を仕事に。
晋作は責任者。百香は宇田濱を代表して協力。
過疎化進む町にとっても、田舎暮らしに憧れる都会人にとっても、会社にとってもウィンウィンウィン。
良き事だらけと思ったら…。
リノベーションは思いの外費用が掛かる。それは会社が負担してくれる事になったが…。
空き家を3段階で査定。Aはすぐにでも住める。Bは少々リノベーションの必要あるが、住むには問題ナシ。Cはとても住める状態ではなく、リノベーション必至。
この査定について、家の権利者の間で異議や不満爆発。
特に晋作や百香を悩ます事になったのは、元居住者や遺族の思い。
晋作の隣の家に一人暮らしの老女。晋作とも交流深めていたが、急死。家は空き家に。
まず、この家を売りに出してみる。それには遺族の了承を得なければならない。コロナでなかなか来れなかった息子の一人が焼香しに。
当初は売りに出しても良かったが…、家の中を見ている内にこの家で過ごした思い出が甦る。
またこの家に住むつもりは無いが、母の命日には帰郷。その時、一日や二日でも…。母の家、ずっと住んでいた家、思い出が残る家。やはり、売りに出したくない。
気持ちは分かる。でもそれじゃあ、空き家問題は変わらず…。町もこのまま…。
いい解決策浮かばぬ百香に、晋作が驚きの提案。
家は売りに出してリノベーション。思い出のものは残したまま。普段は移住者が住む。命日だけ住まわせて貰う…。
そんな人のいい移住者が居るか…?
居る。ここに。晋作自身がそうなのだ。
募れば、必ず居る。
空き家の有効活用、人の思い、都会のアイデア。これらの理想形。
こういうのが上手く行ったら…。
しかし、なかなか上手くいかない。
そこに住む人と都会人のズレ。
地方の人は都会人に不信感。結局金目的。都会人は地方の人を騙そうとしている。見下している。
都会人は田舎暮らしに憧れる…なんて言いつつ、実際住むとすぐに音を上げる。コンビニが無いだけでNG。
ふらりと休暇に来たって、釣り餌のミミズにも触れない。上っ面だけの震災同情。
というか、都会人は東北6県をちゃんと言えるのか…?
そこに、コロナや震災だ。東京の人はコロナに感染している。被災者は助けて貰うのが当たり前と思っている。
風評や格差の偏見…。コロナや震災から何年か過ぎ、今はもう無いと思われているが、当時は酷かった。いや、ひょっとしたら今だって…。
私も東北人だから分かる。
私の周りで誰かが亡くなったとか、大きな被害を受けたとかは無いが、それでもあの日の事は生涯忘れないだろう。
ましてや大切な人や思い出を奪われた人なら…。
百香の過去。晋作が住んでいる家は元々百香が住んでいた。夫や子供たちと。
開幕スマホに映った子供二人は百香の脳裏に刻まれた思い出なのだろう。
あの津波に奪われた。一瞬にして。
残されたのは、今の人生に模索している百香と“父”。一緒に暮らしている父は実父じゃない。亡き夫の父。百香は嫁。
心に悲しい傷を負いながらも、ここで暮らしていかなければならない。
余所者は気楽にここに移住しようとするが、ここで暮らしていくとは、本当にどういう事か分かっているのか…?
晋作、百香、地元の面々、晋作の同僚らが集まった芋煮会。
何か起こりそうな事は必至。
ギスギス、ギスギス、ギスギス…。
誰も本音を言おうとしない。
そんな時、晋作が声高らかに。本音を。
プロジェクトとか、会社とか、空き家問題とか、コロナとか、震災とか、そんなのどーだっていい。
ただただ、この町が好き!
それから、百香さんの事も…。
突然何言い出す…!?
いや寧ろ、正論だ。
そこに住みたいという気持ちは、純粋にその町が好きだという事。
その理由は何だっていい。住みやすい、自分に合っている、環境がいい、人がいい、食べ物が旨い…。
好きな人が出来た。それだって立派な理由だ。
小難しい事や問題は本当にどーだっていいのだ。
この町が好き。ただ純粋にそんな気持ちじゃダメなのだろうか…?
私たちは言えるだろうか。自分が住んでいる町に。この町が好き、と。
“おだず”だけど、根はしっかりし、南三陸への“好き”は地元人以上。菅田将暉の好演。
魅力と悲しみを滲ませて。井上真央みたいな大家さんが居たら誰だって移住したくなる。
竹原ピストルや三宅健ら“モモちゃんの幸せを祈る会”の面々。最初は地方の面倒臭そうな男ども丸出しでお近づきにはなりたくなかったけど、知れば味が出てくる。
ピストル演じるケンの“もてハラ”。
美味しそうな南三陸料理がいっぱい。
食べた時の菅田将暉のリアクションは素だね。役得!
皆アンサンブル好演魅せるが、池脇千鶴のオバサン化がショック…。
南三陸のPR映画ではあるが、PR出来るものがあるから素敵。
どんな市町村だって必ずある。それを見つけられれば言えるだろう。
私たちは住んでいるこの町が好き。
そこでどんな辛い事や悲しい事あったって。
それと同じくらい、嬉しかった事や楽しかった事や幸せだった事も。
町に家に心に思い出が残り続ける。
それがまた前を向けさせてくれる。
陽は昇って沈む。沈んでまた昇る。
素敵な移住先ご案内と、温かな再起。
晋作と百香のラブストーリーとしても。
人や町が好きになる作品。
感動
正直で優しい映画
期待度○鑑賞後の満足度○ クドカンが脚本を書いてる繋がりではないが、裏『あまちゃん』かなと。必要以上に震災に踏み込まないディスタンスも良い。散漫な印象は否めないが、オチの付け方はなかなか宜し。
①題名からオールド・ファンとしては『屋根の上のヴァイオリン弾き(の「サンライズ・サンセット」)』を思い起こすが、知ってか知らずか、此方は順番が逆である。
どちらも“人々の日々の営み”を比喩していると思うけれども、本作には余りそのニュアンスはない。
②東北地方の風土に寄り添ったのかどうかは分からないけれども、淡々としてゆったりとした演出テンポ。間延び気味なところもあるけど。
③はじめ池脇千鶴とは分からなかったくらい地方の中年のオバサン感満載でビックリ。
実物がああなっているのか、役作りが分からないくらい。ただ、演出が上手くそれを活かしているとは思えないのが残念。
中村雅俊は、釣り客相手の釣り船の船長という役が全く不自然に見えない役者としての円熟度を感じさせる。
三陸の海の幸もどれも美味しそう。
という風に脇はなかなか面白いのだが、話の中心に芯がないので観終わっても余り感興が湧かない。
コメディ演出が噛み合ってないような…
コロナ禍で東京から三陸にお試し移住して、テレワークしながら釣り三昧するという、今で言う「ワーケーション」の先鞭を付ける設定。
震災をベースに置きつつ、あえて深刻ぶらずに、コメディ調で一貫しているのに好感が持てる。三陸の海の幸、山の幸がふんだんで、観ているだけでお腹が減るし。ソーシャルディスタンスとか、自主隔離とか、今となったら滑稽に見えるね。
しかし、人間をじっくり描くのが得意そうな岸善幸監督としては、コメディ演出がどうも噛み合ってないような感じ。居酒屋のシーンとか、セリフのやり取りは面白いはずなのに、なにかもったりして弾まない。編集も自分でやっているが、全体的にカット尻が長いような気がして、それで物語がうまく転がっていかないように感じたのかも。
菅田将暉の明るさと軽みは、物語にうまくハマっている。井上真央は久々に健在ぶりが見られて嬉しい。脇役には芸達者が揃っているが、中村雅俊と白川和子のハマり方はさすが。池脇千鶴は別人かと思った。
芋煮会での竹原ピストルの言葉が、「東北を忘れないで」という作り手たちからのメッセージと受け止めた。タイトルの意味も含めて、この作品を今届けたいという思いは伝わった。
あんな時代もあったねと
ディスタンスとか自主隔離とかのあれこれに必死だったあのころを、そんな時代もあったねと笑ってみられるようになったんだなあ、としみじみ思いながらみた。
ときを経てちょっと笑えるようになったことと、どれだけときを経てもやっぱり笑いごとにはできないことと。
適切な距離感を探っている居心地の悪さや、当事者でないひとが震災を話題にするときにほんのりとただよう人間性を試されているようなちょっとした緊張感みたいなものとか、そういう空気感づくりがとてもうまい。
「せつない」というワードの、絶妙なかるがるしさもいい。
急なファンタジーや、急なラブ発動などは正直必要だったのかなあと思うし、必要なのであればもう少していねいに描いてほしかったなあとは思う。
俳優としての三宅健さんって銀狼怪奇ファイルくらいでとまってるんですけど、小さな世界でイキっているヤンキーぶりがめちゃくちゃはまっていたし、最近はすっかり怪談を浴びている印象のつよい好井まさおさんも絶妙にきもちわるい役があいかわらずうまくて、とてもよかったです。
もっとコミカルかと思ったけど
青葉市子さんの歌声がスンと沁みます
物語はそんなにフザけすぎてもいなくて、程々シリアスで、凡そ善人ばかりで汎用キャラを配置しています
年末公開の方がトランプの杞憂を束の間でも忘れたい需要にも合致していたかも
美しい岩手の海沿いの光景x旨そうな食材•料理を丁寧に映し出しています
菅田くん存分に溶け込みます
そして百香のスロー•マスク外しに射抜かれます
でも、ラストまでの心理描写はカエル跳び
夜の車中で聴く子供の歌声に涙に暮れる百香が、頑なに拒み続けた晋作(菅田)にいきなり跳び掛かるのも??
三宅健もキれすぎてるし、着ぐるみ熊のプレゼントを総員で受け容れるものかね?
取って付けた感否めないけど....
外からは見てるだけでいい(竹原)
皆な自分勝手でいい(中村)
....というのが主メッセージらしい
おトボけエピソードを見直して、もう20分縮めたらもっと良くなる筈
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