劇場公開日 2024年10月4日

「恐怖と涙の傑作、再び。初心者の方もぜひ劇場へ」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版 しゅわとろんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0恐怖と涙の傑作、再び。初心者の方もぜひ劇場へ

2024年10月10日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

怖い

初心者の方向けに軽く紹介をしつつレビューを。

本作は2018〜2020年にかけて放映されたテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第6期と世界線を同じくする作品。日曜朝9時枠で放映されていたが、そうは思えないほどの現代社会への風刺とダークな展開が魅力的なアニメだった。本作はその作風を継承しつつさらに対象年齢を引き上げた、極めてダークかつハードな物語となっている。
そんな作風の為昨年の公開当時は大々的に宣伝される事もなく、制作側ですらも「ひっそりと上映されひっそりと終わるつもりだった」との事。しかし、あまりにも高いクオリティから高評価が相次ぎ大ヒット。鬼太郎ファンのみならずアニメオタク層等のご新規さんすら取り込んだ大ブームとなり、日本アカデミー賞優秀アニメ作品賞など数々の快挙を成し遂げ、そして再上映の現在に至る。

「鬼太郎誕生」というタイトルだが鬼太郎たちの出番はほんの僅か。物語のメインを張るのは銀行に勤める男・水木、そして鬼太郎の父(=かつての目玉おやじ)である。「鬼太郎」6期の数十年前を描いた前日譚にあたり、物語も独立している為予習は不要。この映画単体でも十分楽しめる。全く鬼太郎を知らない、という人でも、極論「鬼太郎という、悪い妖怪と戦う男の子がいる」、「鬼太郎には目玉に手足が生えた見た目のお父さんがいる」程度の知識があれば大丈夫だ。

殆どがG指定のアニメ映画においてレーティング(通常でPG12、真生版はR15)指定されている通り、かなりのゴア表現・恐怖描写、そしてシリアスで陰鬱な展開がほぼ終始続く。しかしただ暗い、というだけではなく、「過去を忘れない」「未来へ託す希望」といったテーマをしっかりと描けている。水木や鬼太郎の父をはじめとしたキャラクターも魅力的で、あまり詳細の語られないキャラクターたちにおいてもそれぞれドラマがある事を想像させる。この物語が「鬼太郎」シリーズとしても一本のアニメ映画としても非常に素晴らしく、私は2度目の鑑賞にもかかわらずエンドロールでマスクが濡れるほどにすすり泣きしてしまった。
作画のクオリティも流石の東映アニメーション。キャラクターの可愛さ・カッコよさ、水の流れや咲き誇る花等の美しさなど…非常にクオリティが高い。戦闘描写もかなり見応えがある。
川井憲次を迎えた音楽も非常に素晴らしい。「リング」など数々のホラー作品の音楽を手掛けてきただけあり、本作との親和性は抜群だ。
鬼太郎ファン・水木しげるファンなら気付くであろうオマージュも数多い。原作への大きなリスペクトが感じられる。

総合的に極めて見応えのある作品なので、まだ観ていない方は是非劇場に足を運んで頂きたい。

そしてここからは既鑑賞者向けに。
真生版、と銘打たれているが、飽くまでも「制作陣の作りたかった本来のテイスト」という意味であり、それほど大きな変更は無い。私が鑑賞中明確に気付いたのは血飛沫の色(より鮮やかな赤色)と量程度だったが、公開記念冊子を読んだところ、もう一度1から描き直したカット等もあるそうだ。何度も観ている方であれば気付く事はより多いだろう。どのみち素晴らしい映画である事は変わりないので、もう一度「ゲ謎」を劇場で体験する、という貴重な瞬間の為にも、再びの鑑賞をオススメしたい。

しゅわとろん