デスゲーム ジェシカの逆襲

デスゲーム ジェシカの逆襲

1986年製作/83分/オーストラリア
原題または英題:Fair Game

スタッフ・キャスト

監督
マリオ・アントレアッシオ
製作
ハーレイ・マナーズ
ロン・サウンダース
脚本
ロブ・ジョージ
撮影
アンドリュー・レスニー
音楽
アシュレイ・アーウィン
  • カサンドラ・デラニー

  • ピーター・フォード

  • ゲイリー・フー

  • デビッド・サンドフォード

  • ドン・バーカー

  • カーメル・ヤング

  • エイドリアン・シャーリー

  • ウェイン・アンソニー

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映画レビュー

3.5タランティーノが元ネタに! マッドマックス風味のリベンジ系オズプロイテーション映画。

2024年10月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

中身はいろいろゆるんゆるんだが(笑)、結構楽しめました! 本当にB級もB級だけど、気分的には結構掘り出し物といっていいのでは。 まずは舞台がオーストラリアってのが、目先が変わって良い! なにせ、当たり前のように庭先に出て来る動物がカンガルーで、ケージで飼ってる鳥が巨大なオウム軍団だからね。エキゾチック!! 背景は、埃っぽい砂漠めいた広大な荒地と、灌木林。 そこで、馬と、車と、銃と、罠とで、善対悪の攻防が繰り広げられる。 ぽつんと孤立した掘っ立て小屋をめぐる籠城戦……。 要するに、本質的には「ウエスタン」なんだな、これ。 ちょうど、スペインをロケ地としてマカロニ・ウエスタンが撮られていたようなものだ。 オーストラリアだから、さしずめ「オージー・ウエスタン」ってとこか。 あとは、とにかく綺麗なねーちゃんを出して、 脱がして、苛めて、ひどい目に遇わせて、 客にストレスをためて、ためて、ためて、 最後はボーンとはじける復讐劇。 くっそろくでもない愚連隊に、女がやられ放題にやられて、 最後はやり返す。ただそれだけ。 でもそれだけで、「大衆の娯楽」としては十分なのだ。 いさぎよいほどの、エクスプロイテーション(搾取映画)! Wiki によれば、こういうオーストラリア産のエクスプロイテーションを、「オズプロイテーション」というらしい(オージー+エクスプロイテーション)。 ちなみに、オズプロイテーションの例として、Wikiでは『マッドマックス』があがっている。 おおお、あれも、エクスプロイテーション映画なのか(笑)。 たしかに猛烈に観客の劣情をそそってくる映画ではあるが。 ― ― ― ― 『デスゲーム ジェシカの逆襲』だって、負けていない。 のっけから、闇夜の荒野を我が物顔で走り回る巨大な「人面車(マッスルカー)」! もう『マッドマックス』臭全開である。 てか、あきらかに意識しとる(笑)。 乗ってる3人組のイカれっぷりとクソっぷりも、『マッドマックス』の愚連隊と変わらない。 リーダー格の男が、ちょっと若いころのメル・ギブソンっぽいイケメンなのは面白い。 一瞬、出て来たときは味方サイドなのか……と思わせておいて、底なしのマッチョ屑野郎っていう。 残りの二人は、どうしようもないお調子者のサル野郎と、魯鈍で女に目の無いブタ野郎。 ヘンに話をふくらませることなく、女一人VS.男三人という最小ユニットで、ひたすら話を押し切っていくドメスティックな展開が潔い。 男三人組がジェシカにちょっかいを出す。 ジェシカが思い立ったかのように、復讐する。 怒った男たちが反撃する。 ジェシカは家に逃げ帰る。 家に襲撃をかける男たち。 被害を受けたジェシカは逆襲する。 怒った男たちが反撃する。 ジェシカは家に逃げ帰る…… この無限ループが反復されるんだけど、 なんで男たち(本業は密猟者)がいきなりジェシカに執着して、手を出してくるのか今一つよくわからないし(『激突!』とか『ヒッチャー』みたいに理不尽で不条理な絡まれ方ということか?)、あれだけ乱暴な目にあわされたジェシカが、なんで意気揚々と子供の悪戯みたいな復讐のためにいちいち敵陣に乗り込んでいくかも、よくわからない。絶対余計怒らせるだけだろ、そんなことやったら。 お互い、相手に対する反撃も防御もゆるんゆるんだし、男たちもなぜか「乱暴な目には遭わせる」けど、レイプまではしない。その場その場のシーンは適当に面白いのだが、突き詰めて考えると、両者とも行動原理が意味不明で、「なんでそんなふうにやるの?」「なんでそこで油断してるの?」のオンパレード、観ててだんだん頭のなかがかゆくなってくる(笑)。 いちばん謎なのは、ジェシカが掘っ立て小屋のような防御性ゼロといっていい自宅に戻っては、敵から身を守ろうとすることで、そんなドアと窓でどうやって侵入を防ぐんだよ?としか思えない。そして案の定、容易に侵入されては、いろいろ好き放題に蹂躙される。 しかも、明らかに敵がまた攻めて来るに違いないと思われるタイミングで、全裸で居眠りとかさあ(笑)。観客サーヴィスのために理屈をほっぽり出しているとしかいいようがない。 他にも、突然消えて突然終盤に復活する犬の奇妙な扱いとか(絶対なにかの伏線だと思ったんだけど全然そんなことなかったw)、絡んできそうで全く絡まない差別主義者の保安官とか、思わし気にかかってくるけどこれまた本筋を関係してこない「大切な人からの電話」とか、あまりに適当に作りすぎていて、どこからどこまでが素で、どこからどこまでがわざとなのかもよくわからない……(笑)。 とはいえ、じゃれ合うように、相手の勢力を削りあいながら「抗争」を深めていく(まさにウエスタン!)流れは、それだけでも、だらっと観ている分には面白い。 考えてみると、砂漠でぽつんと独り暮らし、金髪美女が半裸で砂漠生活(『ケーブル・ホーグのバラード』)とか、金髪美女が、街の愚連隊に襲われて蹂躙されて、後半は復讐劇に転じる(『わらの犬』)とか、この映画、ペキンパー成分が強いんだよな。 マカロニが好きで、ペキンパーが好きで、マッドマックスが好きな俺が、このテイストを嫌いになれるはずがない!! あと、オーストラリアとかニュージーランドのオセアニア映画って、どこか根っこの部分で狂ってて、残虐で、イヤああな後味の映画が多いんだよね。 前にも『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』の感想で書いたけど、『ピクニックatハンギング・ロック』『マッドマックス』『アングスト不安』『ピアノ・レッスン』『バッド・テイスト』『ブレインデッド』『ベルリン・シンドローム』『ソウ』『キャンディ』『拷問男』『ベター・ウォッチ・アウト』『悪い子バビー』などなど、なんとなくわかるでしょう?? 旧流刑国の業みたいなもんが滲み出してるっていうのか。 その中でもとくにひどい後味だったのが、『復讐教室』っていう貧乏くさいB級テレビ映画で、なんかお面かぶった悪漢たちに美人女教師と学童が誘拐されて、山奥の洞窟に閉じ込められるんだけど、命からがら脱出して、夜の学校で逆にブービートラップしかけて反撃に出てって話で……ラストの理科室(だっけ? それとも教室の後ろの棚? うろおぼえ)のシーンはマジで衝撃的だった。 ていうか、『復讐教室』が85年で、こちらは86年。 けっこうこの2本、ガチで影響関係あるのかもしれないな。 『デスゲーム ジェシカの逆襲』も、かなりのオージー・バッドテイストの伝統をしっかり引き継いだ、いやああな話だからね。赤剥けのカンガルー肉とかも含めて。 あと、やっぱりヒロインの裸!!!! なんで、オーストラリアの荒野のただなかに、こんなプレイメイトみたいな超絶別嬪のねーちゃんが生息してるんだ???(笑)。 つねに半裸だし。寝る時は裸だし。ドア開け放しだし。いっつもシャワー浴びてるし。 どんだけ警戒心薄いんだよ……。す、すばらしいじゃないか。 まあ、演技はひどいもんなんだけどね……。 ちなみに、クエンティン・タランティーノは、この映画の「車体前部はりつけの刑」を、『デス・プルーフ in グラインドハウス』で再現して、明快なオマージュを捧げている。 いや、そもそも思い返してみるに、『デス・プルーフ』のプロットは、『バニシング・ポイント』よりも、『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』よりも、明らかに『デス・ゲーム ジェシカの逆襲』のほうに近いじゃないか! 要するに、この映画はハリウッドから遠く離れたオーストラリアの地で、ラス・メイヤーのセクスプロイテーションと、『マッドマックス』のクレイジーなカーチェイスを掛け合わせつつ、マカロニやペキンパーのテイストも継承しながら、80年代半ばの「後味最悪」系の白豪映画の系譜を『復讐教室』と分かち合い、その淀んだオズプロイテーションの瘴気によってカルトの底層に息をひそめて時代を生き抜いたうえで、かのタランティーノに霊感を与え、こうやって2024年にまた、新宿の『奇想天外映画祭』でリヴァイヴァル上映されているという……こうやってみると、なかなかのもんじゃないでしょうか?。 あと、大のオッサン三人が、興奮に鼻孔ふくらませながら、美女の住んでるあばら家をモンスターカーで破壊しつくしていくシーンに、ジブリの『借りぐらしのアリエッティ』で主人公がハアハアいいながらドールハウスを地下にぶち込んでたのを想起したのは、やっぱり俺だけだろうか(笑)。

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じゃい