「とある小さな不運な2人の、大きな愛と幸せな人生の物語」366日 sugarさんの映画レビュー(感想・評価)
とある小さな不運な2人の、大きな愛と幸せな人生の物語
人を想う喜び痛み、そして想っているがゆえの空回りや失敗など、1人1人のキャラクターがしっかり1人の人間として生きていて、ものすごく切なかったけど、終わった時には優しい光に包まれたような気持ちになる温かい作品だった。
1番象徴的だったのは、美海から湊に宛てられて、12年越しに届いたMDのシーン。本当に胸が痛くなった。内容を聴いて、『366日』ってこういうことだったんだって思ったし、美海の「恋をして、誰かを好きになるって、とっても素敵なことなんだよ」という言葉の全貌ががここで明かされたように感じた。また、話している時の美海の表情や声色に爽やかさを感じさせるのが、一層切なかった。美海の湊へのMDがやっぱり好き。付き合ってた頃の美海の、湊大好きオーラ全開のかわいすぎる笑顔とか声のトーンとかずっと頭に残ってて、それにメッセージ入れてる時の美海の表情や声色の爽やかさが加わると、何回観ても目頭が熱くなる。メッセージの内容は言わずもがな。内容良くないと感動なんてしようがないからね。そしてそれにつけられた「あなたを愛していました。365日じゃ足りないくらい。」というタイトルがズルい。元々渡したくて渡せなかったMDに新しいメッセージとタイトルを上書きしてて、且つその痕跡が残ってて、元々つけられてたタイトルが、「あなたを愛しています。365日じゃ足りないくらい。」だったのがわかるのが本当にズルい。
大好きだった、愛していた湊と同じビーチで再会していた時、一瞬足が動きかけるけど、湊と通じ合って、その想いを堪えて飲み込んで、何も言わずにすれ違ったのが本当に切なくて美しい。そしてそれを表現する美海のあの時の表情が良すぎる。確実に想っていたことがすごく伝わってくる。
湊との思い出と結婚式前日に会っていたあの時を懐古しながら目を閉じて涙を流すシーンが良すぎる。あれだけ湊が大好きだったからこそ、最期あの曲とともにその思い出を懐古してたはずだし。それが美海にとっての大切な人生の宝物なんだと思うと。
東京に行くって聞いた瞬間の美海の「え、会えなくなるじゃん。。」っていう表情とか、それを押し殺して湊の夢を後押しする言葉を掛けるところとか大好き。想いが滲み出てて。
日曜日の萌歌さんの弾き語りインスタライブを観た上で劇場で『366日』を改めて観ると、「プール」が美海と湊の付き合ってた頃の曲に感じる。穏やかな空気感で、お互いがその瞬間を何より幸せに感じていて、刹那的な美しさを感じるところが。
湊と琉晴は美海のことが好きだからこそ失敗してしまう部分もあったけど、そういったところも人間味をすごく感じる部分で辛かったけど象徴的だったし、それを全て優しく包み込む美海の姿も印象的だった。
玉城美海というキャラクターは、心の底から人を想えるひたむきさと、自分も周りも照らせる優しさや明るさを持っている無邪気でかわいくて魅力に溢れた人で演じた上白石萌歌さんと近いところがあるように感じた。また美海の目は、恋をして幸せな時は真っ直ぐでキラキラした目で、挫折と失恋を経験した時期は哀しくて儚い目で、母になってからは全て包み込むような優しい目で、生きる時代によって眼差しがしっかり違ったのも印象的だった。美海が36歳にして死期が近い病気なのが切なさを増していたけど、だからこそよりこの世界を生きる人たちの美しさが描かれていたし、萌歌さんが仰っていた通り、萌歌さんは正しく、美海の人生を生ききっていたと思う。
主題歌の「恋をして」は湊の目線の曲だと思って聴いていたけど、この作品を噛み締めて噛み締めてそしてこの曲を改めて聴くと、美海の人生讚歌のようにも感じてきて、上白石萌歌さんがこの曲を自分は美海の目線の曲だと思っていたという意味がわかった気がして、同じ目線で聴けているのかもと思えた。
本当に心に刺さるし、物語、キャストの演技、ロケーション、音楽、全部最高な名作だから、本当にすべての人に届いてほしい。