遠い山なみの光のレビュー・感想・評価
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Theカズオ・イシグロ
変わりゆく女性は美しい
三浦友和翁に最優秀主演男優賞を!
観てきました。原作知らないものを観る派。チラシと予告編の情報だけで期待値高めてましたが、期待以上でした。
久しぶりにスクリーンの二階堂ふみさんを観たけど存在感抜群。広瀬すずさんも二階堂さんに共鳴するような演技でとっても良かった。
そして、圧巻は三浦友和翁!これは助演男優賞来るかって思いました(国宝の横浜流星さんはダブル主演で主演枠でお願いします!主演男優賞はあの、2人で争ってこそよ!)。春ドラマの続々最後から二番目の恋でも相変わらずいい味出していたけど、どこまでいってもいいおじさん、物分かりのいい理想のシニアみたいな判で押したような役ではなくて、過去と向き合って、簡単には過去の自分を否定できない、プライドも覗かせてついには爆発する難しい役を見事に演じていたと思います。
吉田羊さんも全編英語での演技、素晴らしかったし、文芸作品由来らしい重厚な、だけど飽きない佳き映画。カズオ・イシグロさんの小説も読みたくなりました。
それでも、下半期No. 1は、海辺へ行く道 ですけどね。点はこっちが高いのに💦
<追記>
二階堂さんと広瀬さんが美しすぎるのは少し問題だったかもしれません。あのお二人を頑張って十人並みの容姿に脳内変換して観たら、夫やうどん屋の男たちのぞんざいな扱いへの違和感は薄くなったかも…
役者陣は素晴らしい…
長崎で原爆を体験し、戦後にイギリスに渡って暮らしていた日本人女性の悦子。作家志望の娘ニキに長崎時代の体験を尋ねられて少しずつ語りだすのだが……。
1980年代のイギリスの田舎町に住む悦子が1950年代の長崎を思い出しながら語るという形式をとるのだが、その記憶は一見はっきりしているようで、実はぼんやりとした景色(a pale view)の如く細部は何となく誤魔化されている。
その時代の価値観や差別意識などを何となく匂わせながら、でもオブラートに包みながら描く手法は、好きな人は好きなのだろうが、個人的には鼻につく感じで、正直、自分の趣味ではなかった。
欧米人の日本人への見下しや、女性・被爆者・傷痍軍人等への差別など、古い価値観から抜け出せない人々を糾弾したいのならハッキリと糾弾すればいいのに、雰囲気だけ美しい景色で誤魔化していないだろうか?
それでも救いなのが、登場する役者陣が皆とても達者なこと。2時間みるに耐えられるのは彼らの功績が大きいだろう。
路面電車や長崎駅ホーム車両や橋の欄干などがいろいろ変で画面が雑過ぎです。
本筋とは別次元?で違和感がありました。
まず長崎電軌(路面電車)の車両。この時代にこのような明治期のものはありません。
また、国鉄長崎駅のホーム向こう側に停車している車両。どこ?欧州なの?全く当時の日本の客車とは別物でこれはあり得ません。
更に、走り去る路面電車になぜ白色の前照灯が点灯しているのか、、
前照灯は文字通りヘッドライトですから後部になった場合は消灯して代わりに赤色の尾灯を点灯します。これは自動車も同様です。
そして川に架かる歩道橋?にも違和感アリアリでした。
この欄干の模様は1980年代みたいですね。とても戦後すぐにあったものとは思われません。
時代考証が全くなっていません。
団地の台所から居間の間にお弁当などを渡す小窓があるなど部分部分でこだわりがあるのに全体を諦観するとてんでなってません。
そのせいか映画に没頭できず、テレビの安ドラマのような大雑把な製作だなあ、という印象しか残りませんでした。
被爆者差別という時代背景
原作は未読ですが、長崎の原爆資料館で「被爆者だから結婚が破談になった」話を読んだ覚えがあります。
悦子にも幸せになる権利はあって、だから「あの時はそうするしかなかった」のだろう。
必死に生き抜いてきたけど、「自分の人生はこれでよかったのだろうか」と背負ってきた十字架の重みに押しつぶされそうになっているようでした。
ニキがこれから、悦子の抱える深い闇に向き合い、執筆を続けていくことで、希望が見出せるのかなと思います。
静かに流れるイギリス時間…激流な人物史の対比!!
広瀬すずさんの圧倒的美しさ✨✨
記憶の境界線の曖昧さ
やはり原作を読んでないと厳しいかな
信頼できない語り手の自己欺瞞
原作を読んで勉強していきましたが…
前評判で、難しそうな印象があったので、原作を読んでしっかりと勉強して鑑賞しましたが、かえって良くなかったかもしれません。映画と原作は全く別な作品として鑑賞すべきものかもしれない。
最近、ドストエフスキーとトルストイの作品を再読しているが、古典と呼ばれるこれらの作品は、実に微に入り細に入り、人物の背景、心情が描かれるから、読み手の想像の余白は全くない。
ところがカズオイシグロのこの作品は、人物の背景、心情はできるだけ割愛しようとするから、読み手は余白だらけということになる。トルストイなら、原爆の被害の状況から、被害者の心情まで事細かく描くであろうが、カズオイシグロはそれを最低限に抑えている。だから、読者がしっかりと読み取るしかないのだ。
小説としての一本の大きな木がある。この木にどんな花が咲き、どんな実がなるかは、読者におまかせなのだ。
だから、この映画のような、衝撃的な結末にもなんら不思議はないことになる。
総監督のカズオイシグロにも、なんの異論もなかっただろう。そこには自分の描いた一本の大きな木は、ちゃんと存在しているのだから。
ところで、稲佐山ロープウェイは1959年開業だから、映画小説の時代設定の1952年には存在しない。となると、あのロープウエイのシーンは…。景子(7歳)=万里子、悦子=佐智子ということが成り立つということになるのだ。
石川慶監督考えましたね。何度小説を読み返しました?1回読んだきりの私は、思いもよりませんでした。
でも、悦子はニキにこんな嘘をつく必要があったのでしょうか?謎です。
だから評価は☆4.5とします。
でも、これ以上考えだすと、きりがないので、コメントでのご意見はご遠慮ねがいます。
原作に沿った、オマージュ作品かな
虚構が入り混じる昔話。解釈は人それぞれ
カズオ、イシグロの原作は未読。
まず広瀬すず、二階堂ふみ、吉田羊。俳優陣の演技が素晴らしかった。
広瀬すずのスクリーンでの画面映えはエグい。
何が真実で何が物語なのかよくわからなかった。
ただそれでいい。戦時中戦後を生き抜いた人間は、きっと嘘をつきたくなるような事、記憶を改竄したいような事があるのだろう。
真正面から戦争を扱っているわけではないが、戦争の悲惨さが伝わってきた。
広瀬すず、二階堂ふみの2大女優の共演。
だからこそ戦後の人々の心の痛みが理解できた。
カンヌ映画祭「ある視点」部門出品に相応しい作品。
自分の答えや感想を大切にしたくなる
昨今の映画特有のCGやVFXによる、映像のチープさや無機質さ。舞台やセットの作り物感。美しすぎる服や顔は非常に残念。しかし、この映画のマイナスな点は、それくらいであり、他の点においては非常に完成度の高い作品と言える。
私がこの映画を見に行こうと思うきっかけとなったのが、映画館で放映されていた予告編の音楽だった。そして劇中の音楽も素晴らしい。アコースティックな楽器本来のサウンドをベースに、特殊奏法を多用した前衛的なサウンドも使われていた。この2つのサウンドを演出と心理描写で使い分けていたところも評価できる。はっきり言ってしまうと、この映画は答えを求めようとして見ると、非常にわかりづらい。そこで劇中で重要なシーンや、ヒントとなる箇所では、わかりやすい音楽で盛り上げ、音楽で訴えかけてくる。一見すると、滑稽で、笑いが込み上げてくる。しかしもし、その訴えかけてくる音楽がなかったら、私は重要なシーンを「ふーん」と見逃していたに違いない。音楽によって説得力を持たせる手法に気がついた時、音楽を効果的に使っていたのだなと感服させられた。これは作り手の聴衆に対する優しさと言えるのではないだろうか。そして劇中最後に流れるF.メンデルスゾーンの「無言歌集 第二巻 Op.30 1.変ホ長調〈瞑想〉」は、今までの緊迫したストーリーや音楽を最大限に緩和し、強烈な印象を残す。食後のデザートのような。
この映画のもう一つの核となっているのが、光や画角による心理描写である。役者に光を当てる角度や、役者を撮影するカメラの角度によって、目の中に反射する光の量を変化させている。また、日本の伝統芸能の能の面のように、顔にあてる光の量や角度を変化させることによって、表情そのものは変わっていないにも関わらず、印象を大きく変化させる手法が多用されている。それらは言葉以上に何かを強く訴えかけてくる。また、様々な画角を使い分け、聴衆に予感をさせる。重要なのはその予感が当たるかどうかではなく、それによって聴衆に強い恐怖心や期待感を抱かせることだ。この光と影、画角への凄まじいこだわりは、極めて芸術的である。
前述したように、この映画は答えを求めようとして見ると、見終わった後に腑におちない感じがして納得できない。それは、劇中で重要なことについて明言されず、多くのヒントや匂わせが張り巡らされ、見ている人一人一人によって気がつくものが違えば、それを重要なことか、そうでないことかに分ける線引きも違う。その気づきと取捨選択によって、見ている人一人一人によってストーリーや解釈が大きく変わってしまう。この映画には模範解答はなく、答えはこの映画見た聴衆の数だけあるのではないだろうか。「もう一度見ればこの映画の答えに近づけるのではないか?」と思い、もう一度見に行き、さらにもう一度見に行ったとしても、最初の「もう一度見ればこの映画の答えに近づけるのではないか?」に戻ってしまうだろう。ゴールのない迷路のような、錯視によって登り続けてしまう「ペンローズの階段」のような。そのもう一度見たくなる欲求を渇望させる魅力や力がこの映画には秘められている。
この映画についての様々な人の感想や、考察は数多く見ることができるだろう。しかし私は見たくない(だからこの文章には考察はおろか、ストーリーについては一切触れなかった)。自分の答えや感想を最も大切にしたと思えた映画は今までにない。そしてこの映画を見た多くの人がそう思っているのではないだろうか?正直、このような作風の映画は日本ではウケが悪く、はやらない。予想するに、多くの聴衆は「怖い」「よくわからない」といった負の感情を抱く。しかし、そこがこの映画の魅力であり、最も評価されるべき点であることは間違いない。
最後に、この映画で私が最も心を打たれたセリフを一つ。
「ただ生きているだけ」
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