劇場公開日 2025年9月5日

「美しさの中にある暗闇が見事な作品」遠い山なみの光 AZUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 美しさの中にある暗闇が見事な作品

2025年9月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

あまりにも自分の好みすぎる要素が多すぎてびっくりした。

正直、作品の内容的には人を選びそう。
エンタメ性が高く、わかりやすい内容の映画が好きな人にとっては、よくわからずつまらないという感想をもってしまう可能性も高い。

しかし、この手の映画が好きな人には、かなりブッ刺さる作品だった。賛否両論あるのも納得。
私はめちゃくちゃブッ刺さってしまって、鑑賞後思わず「おもしろかったー」と声に出して呟いてしまったぐらいだ。

この作品は余白が多く、全てを語らずこちらに解釈を委ねるシーンが多い。
常に付きまとう不穏な空気と、どこか、何かがおかしいという不気味さがずっとスクリーン上にある。

真実はなんだ? これは本当の話なのか?

ずっと落ち着きなくソワソワした気持ちで見ているのに、魅力的で、美しくて、ずっと見ていたいと思わせられる。
これはとても不思議な感覚だった。そしてそう思わせてくれたのは、広瀬すず、二階堂ふみ、吉田羊という3人の女優の演技があまりにも素晴らしかったからだ。

戦後の長崎パートの広瀬すずと二階堂ふみは、当時の服装や長崎の方言、話し方や言葉選びなど、何もかもが品があり文学的で美しく、何度も見惚れてしまった。
現代のイギリスパートの吉田羊は、全て英語のセリフだったにも関わらず、難しい役を見事に演じ切っていた。

今年は主演男優の良作が多かっただけに、女優3人が光る良作に出会えて嬉しい。

戦後の長崎という時代背景から、被爆者に対しての偏見など、当時の女性たちの心情や環境に思いを馳せると、彼女の決断や行動は決して責められない。
全ての真実が分かった時、あーあのシーンはこういうことを表していたのか、とか、きっとこれはこういうことを伝えたかったのかと答え合わせしていけばいくほど、作品の理解が深まりじわじわと感動が自分に広がる作品だった。

AZU
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