リアル・ペイン 心の旅のレビュー・感想・評価
全164件中、61~80件目を表示
ジェシーアイゼンバーグの脚本・監督の才能が光る
かなり好みの作品💦登場人物のベンジーと同じで目が離せない映画👀どちらかと言うとデヴィッドに感情移入しながら見ていくのだが、どうしてもベンジーの事を羨ましく思ってしまう。特に写真撮影のシーンがそうだ。自分は初対面の人たちとあんなふうに気さくに話すのが苦手でどうしても距離を置いてしまう。ベンジーのように社交的で思った事を恐れずにはっきりと口に出せるのがうらやましい。と、思うと同時に心配にもなる。だが、心配してるのは自分だけで受け入れる他者。この旅は、彼らにとってはかなり辛い度であり、自分自身と向き合う旅でもあり、この映画を見ることによって、彼らと一緒に旅をした気持ちになれると言ったら大袈裟だが、少なくとも自分の中にいる彼らに似た感情と向き合うことが出来た。見終わったあとに自分の中で特別なにか考え方が変わったとかはないが、心になにかが残った。言葉では表せない不思議な気持ちになるが、とても好みの素晴らしい映画でした。そして、ジェシーアイゼンバーグの監督&脚本家としての才能ヤバすぎだろ!今後も楽しみです🎶
巧妙な脚本による心温まる珠玉の作品
いるんですよ、こうゆう奴、私の大親友の1人がまさにそう。無難な常識に囚われた私からすれば「よせよ、そんな今更恥ずかしい、ややこしくなるだけでしょ、きっと嫌がられるよ」と阻止せざるを得ない状況でも、振り切って向かってしまう奴。いつまでたっても戻ってこない、面倒くさいと思いつつ様子を見に行くと、なんと相手の人々と旧来の友のように奴は打ち解け歓迎されてるではありませんか。どうゆう事?と思う以上に、呆れる以上に、その見事な対処能力に羨望すら抱いてしまう私。旅行だって詳細は全部私が決めると言うより、何にもしてくれないから、私がやらざるを得ない。そのくせその場の閃きで、人の迷惑顧みず本当に実行してしまう行動力には舌を巻く。
心底、我儘で勝手で奔放で、いつだって苛々させられる、おまけに頑固。でも、その本音の行動力と融和性に私はいつだって感服しきりなのです。しかも離れていると、奴がちゃんとやってるのか心配ばかりする私。まさに本作のジェシー・アイゼンバーグ扮するデヴィッドの心境が手に取るように分かるのです。しかし監督・脚本・主演を務める彼自身が実はベンジーではなかったか? これまでの彼の出演作を思い起こせば、そんな結論しか導き出せない。いわば彼自身の自伝的作品なのでしょうね。それをご本人が監督する段になって役をキーラン・カルキンと入れ替える決断が本作にとって大正解だったと言えます。
そのキーラン・カルキンのちょっと発達障害的なこの役の取り組みは、ほとんど天才的とも言える演技でほとほと感心させられる。アカデミー賞の助演男優ノミネートは当然どころか本命かも。引っ掻き回す助演の好演があってこそ、主演のジェシー・アイゼンバーグの「リアル・ペイン」が浮き彫りにされる作劇なんですね。主演男優枠ではノミネートされてませんが、せめて脚本賞を獲得して欲しい、それ程に巧妙に出来ているのです。
従弟同士の2人のユダヤ系米国人が亡くなったポーランドからの移民だった祖母の生家を偲んで、ワルシャワ・オプションツアーに合流する。ツアーメンバー揃っての人間模様を描く一種のグランドホテル形式かと思ったものの、中年の夫婦、リタイアした女、ウガンダの青年そしてガイドを務める英国人のそれぞれの内実まで入り込まない作劇なのですね。あくまでも2人の関係性が作品の縦軸で、横軸にユダヤの苦難の歴史を織り込んで来る。この案配が流石のバランスで、数多のホロコースト映画のように感情的に煽ることもせず、2人のコメディ路線をあくまで維持するスタンス。だから、史跡ツアーの帰り道バスの中で終始泣いてるベンジーの描写が極めて強い印象を残す。ガイドが事前に繰り返しツアーメンバーに念を押す「くれぐれもヘビーな体験となりますので、その覚悟を」みたいな警告描写があるものですから、映画の観客とて身構えてしまう。
我が国同様に欧米でもホロコーストは無かったなどと歴史修正主義者の声が響く昨今、語り継ぐ試みは今を生きる者にとって義務とも言えるものではないでしょうか? 2人の共通の祖母がもし収容所送りになっていたら、2人は確実にこの世に存在してないのですから。
ツアーから敢えて離脱したのは、彼らの亡くなった祖母の当時の家を訪ねるため。そもそも1930年代の家がそのまま残り、今も誰かが住んでいるってのが日本人の理解を超えたところで。25と記された住所の扉が今しも開いて祖母の関係者が顔出して、思わぬ展開が始まる、かと思いきや、何にも起こらないのが本作には実に相応しい。
ニューヨークから飛び立ち、ニューヨークに帰って来る、空港のロビーのベンチで1人佇むベンジーの様相で本編は始まり、またラストカットも同様で終る。極めて意図的なカットですが、旅を経てベンジーに成長と言いますか変化はしかしまるで感じさせなのがミソでしょうね。ご本人は人間観察と称してますが、凡人は思うでしょう、なにか裏でもあるのではと。いえ。本当に裏なんてなく、ただ見ていて飽きないのですよ本当に、奴等には。
珠玉の作品ってのは本作のような映画を言う。20世紀フォックスを買収し傘下に置いたディズニー。このゴリゴリの利益追求会社の下、20世紀スタジオと名を変え、そのまた傘下のアート系サーチライト・ピクチャーズは以降縮小されてしまうのね、と心配してました。が、本当に杞憂に終わり、良作を次々のリリースの素晴らしさ。オスカーノミネートには本作とボブ・ディランを描いた「名もなき者」もこの会社。ディズニーに感謝するしかありませんね。
真面目な映画
従兄弟同士の関係性が切なく胸打つ
生きていることの奇跡
私の残りの人生でポーランドに行くことはないだろうが、映画を観てデヴィッドとベンジーと共にこのツアーに参加している気分になれた。
私も多分ベンジーには最初、なんだコイツ!と思うだろうが、ワルシャワ蜂起記念碑の前ではおどけてベンジーと一緒に写真に収まってたりする気がするし、列車内でファーストクラス車両に乗った事の是非やツアーガイドの説明の仕方に噛みつくところなんかもベンジーが真剣にナチスに酷い目にあったユダヤ人の祖先に寄り添おうとしてることを理解すると思う。
ホロコーストで殺害されたユダヤ人の数は600万人。その半数の300万人がこのポーランドで亡くなられた。その時代を奇跡的に生き抜いた祖母がいたからデヴィッドもベンジーもこの世にいる。
先祖の存在を知ること、親への感謝を示すことを思い起こさせてもらった。
今年は始まったばかりだが、今のところ洋画No.1の映画です。
証
ホロコーストの生還者である祖母が亡くなり半年後、ニューヨーク在住のユダヤ人従兄弟の2人が、ポーランドツアーの旅行に参加する話。
空港に向かうちょっと心配性のデイヴが連絡してもベンジーからは返事がない…返事がない…返事がない…ベンジーはフライト時間に間に合うのか?とデイヴはやきもきしていたけれど、えっ?とっくに着いてた!?とマイペースでちゃらそうなベンジーが登場し巻き起こっていく。
マイペースで能天気かと思いきや、えっ!そこでキレる!?なベンジーだけれど、言っていることはわからなくはない。
そしてそんなベンジーに振り回されまくりのデイヴだけれど、いやー気苦労が絶えませんな(*_*)
ホロコースト、ユダヤ人、ポーランドということで、もちろん重い話しになるわけだけれど、ベンジーのキャラのおかげでおふざけ、というか悪ふざけの様な流れもあるし、2人の関係や祖母への思いとか、アイデンティティとか、そして2人の暗部とか、正直2人ともめんどくさいタイプではあるけれど、人間らしくてとても良かった。
良い映画でした。この映画が比較的高評価で良かった。この何とも言い難...
A REAL PAIN
本当の痛み→困った奴、だなんて!
彼らと共に巡る心の旅
痛みや弱さと共に生きる
祖母の死をキッカケに、疎遠になっていた正反対の性格の従兄弟がユダヤ人の歴史を巡るポーランドツアーに参加する数日間を描いた本作。
几帳面で真面目でちょっとコミュ障なところもあるけど家庭も仕事もある“普通の40代男性”のデヴィッドと、空気を読まず破天荒で明るく誰とでもすぐ打ち解けてしまう自由人ベンジー。ホテルや空港、ツアー客とのやり取りから、2人の性格が全く違うことで、お互いにストレスフルなことがビシバシ伝わります。デヴィットの気持ちがよく分かるので、うわー大変そうだ〜と思いながら観ていました。笑
強制収容所を含むユダヤ人の歴史探索ツアーなので、明るく楽しい観光というわけにはいかず。そんな道中で明らかになっていくデヴィットとベンジーの気持ちが胸に響きました。
大嫌いで大好きで、理解できなくて一番分かり合っていて、憧れで。そんな相反する気持ちを抱えている2人は、やっぱりとても互いを思い合っているように見えました。
痛みを抱えながらも、人生は続くし、生きていかなきゃいけない。前向きにならなくちゃいけない。それはとても難しくて、心が折れる時もある。
ラストシーンも、対照的でした。あれからどうなったのかな。安らぎと幸せが訪れていることを願います。
まさにリアル・ペイン
タイトルの通り、人間の心の痛みを描いたような作品。 本年度ベスト級。
思っていたのとちょっと違ったけど、実際にポーランドのホロコースト・ツアーに参加したような気分になる作品だった。
本作はコメディー映画のジャンルだけど笑えるシーンは皆無。
従兄弟の2人の相反する性格を皮肉って「コメディー」としたジャンルに思えた。
他界した叔母の家を、久し振りに再会した従兄弟のデビッドとベンジーが訪ねるストーリー。
叔母の家に行く前、数日間のホロコースト・ツアーに参加。
ガイドを含め7人のメンバーで観光する物語がメイン。
そのツアー中、少しずつデビッドとベンジーの人間性が分かっていく感じだった。
ベンジーとデビットの相反する性格が本作のポイントとなっていた印象。
観光ツアーのガイドの案内するトークが訪れる場所によって変わるのが良かった。
ワルシャワ蜂起博物館の反乱軍の銅像の前で子供の様にはしゃぐメンバー達。
反面、ユダヤ人収容所のガス室では皆、声が出なくなるシーンが印象に残る。
ガス室の壁の色が恐ろしい。
BGMは美しいショパンのピアノ。
美しい風景などにマッチしていて、睡魔を誘うことなく心地よかった。
ラストで2人が別れた後。
帰宅して娘や妻とハグするデビッドの姿に反し、空港に残りベンチに1人で座るベンジーの相反する姿が印象に残る。
外国の方って、初対面なのに何故フレンドリーになれるんだろう(笑)
羨ましいです( ´∀`)
キーラン
劇的な変化が起きるわけではありません。人々が抱える苦悩が明らかになったりもしないのです。それでも巧みな脚本と2人の達者な演技で見せるロードムービー
20世紀の初めにユダヤ人移民が礎を築いたハリウッドにとって、ホロコーストは特別な意味を持つようです。「シンドラーのリスト」を筆頭に、この歴史的虐殺を題材とした多くの映画が作られてきました。本作で監督、主演を務めたジェシー・アイゼンバーグもユダヤ系米国人。ポーランドを旅した自身の体験を基に構想したといいます。才人アイゼンバーグは、歴史劇として惨事を再現するのではなく、ままならぬ人生を生きる現代の人間関係を横糸にして、歴史の縦糸と織り合わせました。
誰かの苦しみや悲惨な過去の記憶に触れた時、人は何かできるのでしょうか。「リアル・ペイン(本当の痛み)」を分かち合う大切な過程が描かれていきます。
米第97回アカデミー賞では助演男優賞、脚本賞にノミネートされた、祖母を亡くしたいとこ同士の2人の旅路を描くロードムービー作品です。
●ストーリー
ニューヨークに住むユダヤ人のデビッド(ジェシー・アイゼンバーグ)は、長年疎遠だったけれど兄弟同然に育ったいとこ同士のベンジー・カプラン(キーラン・カルキン)と最愛の祖母の遺言により再会します。遺言どおりに祖母の故郷ポーランドのホロコースト遺跡を巡るツアーに参加することになるのです。祖母はそのために遺産を残してくれていました。
参加した史跡ツアーでの新たなる出会い。旅の先々で揺れ動く感情。デヴィッドとベンジーは、時に騒動を起こしながらも、同じツアーに参加した個性的な人たちとも親睦を深めながら戦争の歴史を体感していくのです。正反対な性格の二人でありながらも、家族のルーツであるポーランドの地を巡る中で、互いに求める“境地”は重なり合って行くのでした。最終日にはツアーを離れ、ユダヤ系の祖母がナチス・ドイツに迫害を受けるまで住んでいた家を訪れることに。
そんな2人がこの旅で得たものとは?“リアル・ペイン”(本当の痛み)に向き合う力をどう見出だしていくのでしょうか。
●解説
映画の前半、観客はデビッドとベンジー、それにツアーの参加者とともにポーランドを旅します。博物館や収容所跡などのホロコースト遺跡をガイドの説明を聞きながら見物し、非人道的な所業に改めて粛然とさせられます。それだけなら歴史探訪ですが、そこで終わらないところが興趣といえるでしょう。
神経質なデビッドと、自由奔放で繊細なベンシーは対照的。ネット広告業界で働き、家族を持ったデビッドと、定職もなく母親の家に寄生したままのベンジー。デビッドは真面目できちょうめんですが、心配性で社交性に欠けます。ベンジーは持ち前の陽気さと人の懐にやすやすと入り込こみツアー客たちの心をつかむ一方、感情の起伏が激しし、思ったことをズバズバ吐露し、協調性や思慮深さのかけらすら持たない人物でした。またベンジーは、最愛の祖母も経験した暗い歴史に平静を保てず、激しい感情をあらわにすることも。デヴィッドはベンシーに振り回されていらだちつつ、心のどこかではうらやましさを感じているのでした。
ベンジーの身勝手さには、わたしも嫌悪感を持ちました。でもベンシーが巻き起こすトラブルや不和が必ずしもネガティブに描かれていないところが本作の良さというべきでしょう。多少の欠点やもめ事なら大目に見る懐の広さが、作品を包み込んでいるのです。
対照的な2人の肖像を、ささやかなエピソードと会話を積み重ねて浮き彫りにしていく手際が鮮やかです。仲の良い2人の間の小さなわだかまりと確執が、次第に示されてゆくのもスリリングです。
軽快でユーモラスなせりふの応酬に、それぞれの背景や人間性がにじみ出ています。周囲の人に対する好意が空回りしてしまう母と息子が、分断を乗り越えて歩み寄る姿を描いた前作「僕らの世界が交わるまで」(2022年)と同様、欠点のあるキャラクターにも憎めない魅力を持たせるアイゼンバーグ監督の脚本が秀逸です。不器用な人々の微妙な関係の変化を描くのが本当にうまい作家だと思います。
ただしタイトルから連想させるような、劇的な変化が起きるわけではありません。人々が抱える苦悩が明らかになったりもしないのです。けれど漫然と進んでいく現実のなかでふいに立ち止まり、自分の発した言葉をもう一度考え直すとき、そこから生まれる微細な変化を捉えようとするアイゼンバーク監督の試みは、映画にたしかな光を与えてくれるのです。
ポーランドの歴史を語るなら避けて通れないホロコーストの描き方には、自身もユダヤ系アメリカ人である監督の誠実な姿勢が垣間見えます。特にマイダネク(ルブリン強制収容所)跡地を見学するシーンは鮮烈。終始軽やかに交わされていた会話はぱたりと止み、静寂が訪れるのです。よく晴れた空と無機質な建物のコントラストが利いた映像から、ホロコーストのむごさを肌で感じるツアー客たちの、感情の乱れが伝わってくるのです。
悲惨な事実をただ伝えるのではなく、今を生きる人がどう受け止めて歩んでいくのか。それはきっと、同じ時代を生きる誰かの痛みを想像して分かち合うことにもつながることでしょう。ベンジーの暗い過去に踏み込めず葛藤していたデビッドも、旅を通じて理解と連帯を深めていくことになるのです。
映画の後半、2人はツアーを離れ、祖母の生家を尋ね当てます。2人は民族と個人とふたつの葛藤を経て、安易な和解や調和ではない境地へとたどり着くのです。
ユダヤ人の悲劇を強調するところはいささか押しつけがましくもありますが、巧みな脚本と2人の達者な演技で見せるロードムービーでした。、
●特筆すべき音楽面
旅を彩る全編の音楽は、ポーランドが生んだ偉大なピアノの詩人ショパンの名曲たちです。時に軽やかに、時には荘厳に。美しい景観が内包する影の歴史、人の笑顔の裏側にある“リアル・ペイン(本当の痛み)に至るまで、美しいピアノの旋律が包み込んでくれるのです。この心のロードムービーは、曲とともに見る者の中できっといつまでも、リフレインを続けることでしょう。
●感想
歴史的な痛みを背景にしながら、対照的な性格のいとこが抱える違う種類の痛みを描き出したアイゼンバーグ。辛辣(しんらつ)なユーモアの中に温かさをしのばせる手腕に、監督、脚本家としての伸び代を感じました。
何といってもポーランドのホロコーストの跡地に現代の視点を加味させ、ベンジーとデビッドの丁々発止の掛け合いで見せる脚本が巧みなのです。
そうはいっても、ベンジーは近くにいたら本当にうんざりさせられそうな面倒なキャラクターなのです。けれども自分もこんなふうに生きられたらと、つい嫉妬してしまうような正直な人でもあります。
温厚で勉強家のツアーガイド、ジェームズ(ウィル・シャープ)を、素直だが思ったことをすぐ口にしてしまうベンジーの引き立て役にした構成も効果的だと感じました。深刻さと軽妙さを違和感なく同居させ、じんわりと心にしみるシーンがあるかと思えば、クスッとほほ笑ませるバランスも絶妙です。2人の生きづらさやホロコーストという重たいテーマを、ツアーという形で実感させ心揺さぶる重厚な映画に仕上げたのです。
アカデミー賞間違いなしのベンジー役のカルキンはもちろん、羨望と疎ましさの両方を細やかに表現したアイゼンバーグの演技にも心を動かされました。
けっこう泣いてしまった
全164件中、61~80件目を表示