「幸子という名前の女で幸せな人はいない!絶対にだ!」ふたりで終わらせる IT ENDS WITH US 病人28号さんの映画レビュー(感想・評価)
幸子という名前の女で幸せな人はいない!絶対にだ!
俺が知っている最初の幸子は名前を幸といい、俺が地方劇団の劇団員をやっていた時に、劇団の雑務を無償でやってくれた県立高校に通う女の子。
あの頃の俺のどこにそんな金があったのかは謎だが、手伝ってくれたお礼に、劇団四季の「 エルリックコスモスの24時間」 に招待をした。その子は視力が2.0あるので、主役の役者が別の人に変わったのが分かって驚いちゃった。
後に、その子の生い立ちを聞くと、お父さんは劇団四季の役者だったが自動車事故で亡くなってしまったそうだ。
それから、諸事情で俺が長野に出稼ぎに行っていた時に、唯一の肉親の母親が病気で亡くなったと、手紙が届いた。
とても、良い子なのに何故、こんなに不幸が訪れるのだろうか。やっぱ、神様っていないな?高校を卒業して看護学生になったので、さぞかし立派な看護師になった筈です。元気にしてるかなぁ?
もう一人の幸子はメンヘラで、手首を切りすぎて、もう切る所が無くなったから、肩口まで切っていた。何回かドライブしたりしてたけど、何か怖くて付き合いをやめました。
三人目の幸子は、俺がタイミーで郊外の居酒屋で働いた時の店長で55才くらいの幸子。
とにかく、面倒見の良い人で俺と同じくタイミーでやってきた女の子がどんだけ皿を割っても、グラスを割っても怒らなくて、深夜まで働くのに帰りの足が無いから、タクシーで帰ると言った愚かな女の子を、その店長が車で送ってやるのだ。
俺は個人的に、その店長から電話番号を聞かれて、タイミーを通さないで、バイトできるもんとばかり思っていたら、
「 ご飯奢ってやるから、会わない?一緒にデートしようよ?」
という、誠に気色の悪い電話だったが、タダ飯食えるから会う事にした。何故か、一人ではなく連れ合いがいて、計三人で食事をする事になり、食事が終わった途端に、
「 貴方にいい話しがあるの?聞いて貰える?」
と、言い出し、それから宗教の勧誘が始まったのだ。俺は神なんて信じていないので、断固拒否した。
話の矛先を変えて、タイミーで働いた、あの店長に送ってもらった女の子の話しをしたら、
「 あの子は苦労したけどねぇ、今は入信しているの!」
このカルト宗教キ✖️ガイBBAは、タイミーでバイトを集めて、そのワーカーを入信させている、とんでもない腐れ外道だったのだ。
以上、ぼくの知り合った、幸せじゃない幸子のお話しだYO!
さて、こんなに長すぎる前置きは誰も読まないよ!と突っ込まれても無視するが、
この映画の主人公リリー。日本語に訳すと幸子( 突っ込み禁止) は、
幸せを数えると片手にさえ余り、不幸せを数えると両手でも足りないので、不幸のズンドコ。
映画冒頭で、幸子は亡くなった名士の父の葬儀で、母に弔電で、
「 お父さんの良いところを5個あげて、スピーチして」
と、頼まれる。
そして、弔電を読む時に、メモを見ると、一つも亡くなった父の良い所が無く、無言で壇上から降りてしまう。
実は父親は、外面は良かったが、家では母親に暴力を振るうDV野郎だったのだ。
そして、幸子は恋をする。脳神経外科のイケメンで非の打ち所がないと思っていたのだが、何かにつけて幸子を物理的にではなく縛り、幸子に思いつく限りの罵詈雑言を浴びせるのだ。
そんな幸子にも、純愛の経験があった。同じ高校に通う男子だったが、家なき子の男子は廃家に違法に住み込んでいた。
その男の子を哀れに思った幸子は、廃家の窓の下に衣服や食糧を差し入れていた。それから、何十年も経ったが、見事その男子は立ち直り、カリスマ料理店のオーナーとなっていた。
それを遠赤外線を駆使して獲物を狩る蛇のような、DV脳神経外科の彼氏に発見されて、問い詰められる幸子。激昂したDV脳神経外科に階段から突き落とされる幸子。
カリスマ料理店オーナーになった同級生に助けを求める幸子。幸子はやっと、DVしない男、プラトンでいうところの自分の片割れ半身を見つける事ができる。
DV脳神経外科の子どもを授かった幸子は、三行半叩きつけて、自分を本当に愛してくれる人を見つける事が出来た。
劇中、ずっと張り付いたような作り笑いをしていた幸子はラストシーンで、やっと心の底から笑えて本当の自分を取り戻したのであった。どっとはらい。
※ 今回は、ばんばひろふみの「 SACHIKO」 を聞いた事が無い人にはさっぱり意味が分からない事をお詫びいたします。