「平成の恋人たちが、令和の恋人たちとリンクする構成がとても良い」大きな玉ねぎの下で 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
平成の恋人たちが、令和の恋人たちとリンクする構成がとても良い
細部の描かれた脚本で複雑な人間の交錯が上手く構成されている
点がとても良かったです。
二つの物語、
①30年前の平成の高校生のパート。
②現在の令和のパート。
現在のパートでは、主人公は大学生の丈流(たける)。
アルバイトするバー「double」は昼はカフェで、
そこで働く女性美憂と、
互いに顔も知らずに業務連絡ノートで繋がっている。
備品の購入連絡がいつのまにか悩みや心情を書き綴る
交換ノートになって行く。
一方、
②のパートはラジオパーソナリティ大樹(江口洋介)の
思い出話の中の2人、
高校時代チャラい大樹(窪塚愛流)は、ちょっと惹かれた
顔も知らない女子高生と文通をしている。
面倒くさがりと悪筆を理由に真面目な友達の喜一に代筆をさせていた。
文通は盛り上がりある日、爆風スランプの初めての武道館ライブに、
文通の子を誘って「大きな玉ねぎの下」(武道館)で会う約束をする。
しかしその女の子は入院中で、行きたくてもドクターストップがかかっていた。
そして現在の丈流。
昼間のカフェのノートの子にどんどん惹かれて行く。
その一方で、急性アルコール中毒を起こした友達を、咄嗟に応急手当てを
してくれた看護学生の美憂(桜田ひより)と、
喧嘩友達のような関係になって行く。
気は合うのだがきつい性格でズバズバ話す美憂に気後れする丈流。
でも好きなアーティストが同じで盛り上がる事はは盛り上がる。
種明かしをしてしまえば、平成の高校生カップルが丈流の両親。
この恋はとても清潔で素敵でした。
また相手の今日子役の伊藤蒼がまたまた泣かせてくれるのです。
代筆する喜一(中川大輔)の生真面目な誠実さが、丈流れの父役・
原田泰三と重なるし、お母さん役の西田尚美と伊藤蒼は
ちょっと違うかな?
でも平成の恋、もうとても共感しました。
令和の2人で新鮮だったのは、昼間の文通相手を丈流は
もう1人のアルバイト女性と勘違いしているんですね。
その勘違いに2人は直前で気がつく点。
美憂はすっかり意気消沈してヘソを曲げてしまう。
しかし丈流は憧れの恋からリアルな恋へ変換が上手くいって、
返って「対岸の彼女」から「普段着の恋」へターンしているみたいです。
この辺が令和の恋はリアルで良かったです。
そして武道館の待ち合わせ、平成の恋人と、令和の恋人たちが、
同時進行で待ち合わせに遅れそう‼️
めっちゃハラハラしました。
終わってみればチャラい親友の大樹(江口洋介=窪塚愛流)が
恋のキューピッドでしたね。
もちろん「大きな玉ねぎの下で」をカバーしたasmiさんの声は
切なくて刺さりました。
共感ありがとうございます!
ようやくVODで鑑賞できるようになったんですね。もうこの作品、昭和世代の心には刺さる刺さる、懐かしさと脚本の素晴らしさで気持ちよく「泣ける」んですよね。ミステリーやホラーも好きですが、現実にあってもおかしくない世界観を描いた作品は、やっぱり良いですよね。